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第5章 おっさん、優勝を目指す
第108話 真の戦い
しおりを挟む最終戦、総合競技の開始がアナウンスされる。
魔道技術祭決勝は前代未聞の展開を迎えていた。
「ちっ、まさかここまでやるとはな」
「わたしも驚いています。彼らの力は予想外でした」
ワイバーン内のとある一室。3年A組控え室にバトスとベルニアはいた。
「くそっ、それにしてもあのクソガキ。次会った時には容赦しねぇ」
「ガルシアくんといいましたか? 彼のあの力には秘めたる何かを感じましたね。それもかなり強大な」
「ふん。あんな力、俺が本気を出せば敵ではない。慈悲で手を抜いてやっただけだ」
「そうですか? にしては必死さが滲み出ていましたけど」
「う、うるせぇベルニア! それで、もうすぐで最終戦だが他の奴らはどこへ行った?」
「さぁ……? ”例の件”についての最終確認じゃないですかね」
「けっ、今の俺にはそんなことどうでもいいのによ」
舌打ちをしながら近辺にあった椅子を蹴るバトス。
ベルニアはその姿を見て溜息をしながら、
「バトス、我々の目的はこの魔技祭で優勝するというチンケなレベルの話ではないのですよ? あくまでこの祭りは計画のための一端、通過点に過ぎないのですから」
「んなことは分かっている。だが、負けたまま背を向けるのは俺のプライドが許さねぇ。ぜってぇあの男だけは俺がぶっ殺す!」
「はぁ……相変わらずですね。あなたは」
バトスは根っからの負けず嫌いで十傑の中で一番の戦闘狂でもある。
気性の荒い性格からルーカス辺りは非常に頭を悩ませているらしいが実力自体は本物なためあえて何も言っていないという。
すると、
「すまない、待たせたか?」
待機所の扉が開き、入ってきたのはルーカスと他のメンバーたちだった。
「遅いぞルーカス!」
バトスはすぐに反応し、ルーカスを睨む。
対するルーカスは苦笑を浮かべ、困惑していた。
「そう睨まないでくれバトス、魔技祭を端からボイコットするつもりはないんだから」
「いや違う、そうじゃない!」
バトスは少し興奮した様子でルーカスを大声を飛ばす。
そしてバトスは一呼吸置くと、ルーカスにある頼みを申し出た。
■ ■ ■
―――ワイバーン内、1年A組側入場ゲート手前にて
「お前らいいか? とうとう俺たちはここまで来た、次はいよいよ最終戦だ」
「「「「「はい!」」」」」
30人全員が声がゲート内に響く。
気合いは十分。そこには誰一人として生半可な想いで最終戦を臨もうとする者はいなかった。
優勝へ向けて勝ちたいという想いが込められし強い目をした30人少年少女たちの姿のみがそこにはあった。
俺はいつものように一通り全員の顔を見て、気の抜けていない奴がいないか確認した所で話し始める。
「いいかお前ら。正直に言おう、俺がお前たちを一から教育してきたのは全てこの瞬間のためだ。全ては決勝戦で最高のパフォーマンスを発揮させるため。今までの戦いからオレから言わせれば過程にしか過ぎんのだ」
静粛に俺の話を聞く生徒と助手二人。
俺は勢いのままに話を続けた。
「何を言いたいのかといえば、ここで勝たなければお前たちが今まで汗水垂らして頑張ってきたことが全て水の泡となるということだ。それはお前たちも承知の上だな?」
次々と頷くA組生徒たち。
最終戦を目前のして少々熱いことを言ってしまったなと思ったが、実際にそう思っているのは確かだ。
結果しか求められないこの世の中で過程などその足かせぐらいにしかならない。過程の間で評価されるなんてことはあくまで特例であり、最終的には結果が自分たちの価値を示す。
それは今も昔も変わらない。たとえ俺が魔術講師という立場で生徒の頑張っている姿を目の当たりにしたとしても肝心の評価を下す人間は無論そんなことは知る由もないため結果でしか判断をしない。
もっと言ってしまえば身分差の問題もこれに該当するだろう。
いい家庭に生まれた人間は明るい余生が待ち、貧乏な家庭に生まれた人間は暗闇のような人生しか待っていない。これも一種の結果であり、その者の価値だ。
だからこそ世の中は理不尽でありふれている。実にくだらない世界だ。
そして今回の相手もその理不尽とやらを体現したかのような集団だ。聖剣なんていう物騒な武器を持って平然と観衆の前に現れる。わざわざ聖剣なんて持ってこなくても彼らには十分すぎるほどの才能で溢れているのにそれでも尚だ。
これもまた、自分たちの圧倒的な力量をより多くの人に見せつけることによってある種の結果を生み出している。「我々には決して勝てない」っていう結果をね。
「―――だがそんなものは関係ない。オレがその定められし結果とやらを完膚無きにまで粉砕するのだからな!」
思わず声に出てしまうが生憎誰も気づいていなかった。
ただ俺自身も生徒たちと同じように今この瞬間に燃えていた。
絶対に勝ちたいという強い気持ち……そして俺の描く夢生活を手にするためにだ。
「……よし、お前ら準備はいいか?」
俺はフィオナ、リーフ、ガルシアと他の生徒たちとハルカとレーナの表情を伺う。
皆、真剣な顔をして頷き、余裕のある天才三人組はニヤリと笑みを零していた。
(ふん、余裕そうだな。結構結構)
そして俺も「フッ」と鼻で笑い、大きな声で皆を先導する。
「じゃあ……いくぞ!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
掛け声と共に俺たち1年A組は大歓声が迎えるアリーナへと足を運んでいったのだった。
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