元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第114話 餓狼


「はぁぁぁぁぁぁ!」
 
 爆速。最初に仕掛けてきたのはバトスの方からだった。
 会場内に響き渡る大鐘と同時にバトスが雄叫びを上げながら攻めてくる。

「挨拶代わりだ、受け取っておけ!」

 高速の右ストレートがガルシアを襲う。

「ちっ……!」

 それに対抗すべく瞬間強化魔法【防】を発動させ、なんとか耐える。
 防がれた瞬間、バトスはすぐに間合いを取り反撃に備える。
 
 それにしても闘志のこもった一撃だった。
 とうとう真の力を出しにきたかというほどの覇気が感じ取れる。

 なにせ受け止めた時の凄まじい衝撃でリング周辺に爆風を起こさせるくらいだ。しかもたった一発のパンチで。

 焦りが出ているのか、バトスも本気でガルシアを倒しに来ていることが伺える。

「先ほどの体術競技とは動きが段違いですね……」
「ああ、遂に聖剣使い様が本腰を入れてきたってとこだな」
「ガルシアは勝てるのでしょうか……」
「まぁ見ておけ。あいつはあの程度で屈する程、軟な人間じゃない」

 俺は本心からそう思っている。
 ガルシアの戦闘に対する強い闘争心は恐らく他の誰よりも強い。
 心の強さだけならあの聖剣使い軍団すら凌駕するほどだろうと俺は踏んでいる。
 
 現に先ほどの体術競技ではそれが顕著に出た。
 技術や判断力の面でも確かに成長は見られるが何といっても注目すべきはその強い精神力。
 
 元々気性の荒かった性格に磨きをかけ、自身の力の糧するほどまで成長を遂げた。
 これは魔術師としてはとんでもなく強い武器だ。

「―――下手すれば磨き込まれた技術すら超えることだってあり得る」

 今のガルシアはまさにその典型的な例だった。
 
「よし、とりあえず今はガルシアを応援だ。声援も戦っている人間からすれば力の源になりえるものだ。最後まで皆で戦うという意識を持て!」

「「「「「はい!」」」」」

 俺たちは声援を送りながらもガルシアの戦いを見守る。

 ■ ■ ■

「ほう、この一撃を無傷で抑えるか。やはりお前は潰しがいがあって最高だぜ」
「図に乗るな雑魚が。潰されるのはお前の方だ」
「言ってくれんじゃねぇか。ならまずはその生意気な口をふさがねぇとな!」

 肉弾戦。
 バトスの攻撃はやむ気配すら感じさせず、次から次へと攻撃を仕掛けてくる。

 ガルシアは距離を取り防御に専念。反撃のチャンスをうかがっていた。

「おらおらどうしたどうした! 逃げてばかりだと俺は倒せねぇぞ?」

 煽るバトス。だがガルシアはペースに飲まれることなくバトスとの間合いを取る。

(よし、その調子だガルシア)

 今の所立ち回りは完璧。冷静な判断もきちんとできていた。

 それにガルシアもわかっているはずだ。真っ向から挑んでもバトスには勝てないということを
 体術競技では固有能力ユニークスキルの力でなんとかなったが今回ばかりはその力に頼ることは非常に大きいリスクを伴うことになる。
 
 パワーアップしたバトスの攻撃を受け続け、吸収転換の力で一気に攻めるという作戦もあるにはあるのだが絶対勝利が条件のこの戦いにおいては切り札として使う他ない。
 
 ガルシアも身体は人間そのものだ。聖剣使いほどの膨大な魔力を持ったものの攻撃を受け続ければかなりのダメージを負うこととなる。

 今は防御に徹し、隙ができた所で強烈な一撃を叩き込む。力の差が顕著に出ている相手と戦うときは一番の最善策だ。

「ちっ、ちょこまかと逃げやがって……ならこれならどうだ?」

 自ら持つ聖剣アゾットに魔力を吹き込む。
 瞬間。光に身を包まれたバトスの体内に聖剣の持つ魔力がどんどん入っていき、神々しいまでの光がバトスから放たれる。

「……なんだ?」

 俺の身にもじわじわと感じ取れる魔力の流動。普通の人間ならば許容しきれないほどの魔力がバトスの体内に流れ込んでいることが分かる。

「これも聖剣の加護なのか?」

 常人ならば魔力の蓄積量が限界点に達したことが原因で魔力拒絶が引き起こされ、最悪の場合は体内から爆散するということだってあり得る話だ。
 だがバトスはそれをもろともせず、体内に聖剣の魔力の流し込んでいく。

「ふふふ……はははははは! どうだ、この神々しい姿は! 俺は今、最高に血に飢えているぞ」

 底知れぬ魔力の高まり。これはもう人と呼べるほどの者ではなかった。

 聖剣の加護。恐らくそれが人を人ではない何かに変えてしまっていた、
 
 あいつのいう『餓狼』というのは飢えたオオカミという単純な理由の他に力による飢えもという意味も込められている。
 
 許容しきれないはずの力をあっさりと許すことができるのはあいつの本能がそうしている。飢えているからこそ何でも食う。

 たとえそれが魔力だろうが人間だろうが。

 そしてそれがあの男の固有能力ユニークスキルだったってわけだ。

「……まさかここまでの力を出させるとはな。だが、お前ももう終わりだ。アゾットの力を得た俺の前に築かれるのはただ一つ……死体の山だけだ」
「ちっ、バケモノが」

 応戦できるよう、防御を固め自己強化の魔法も最大限に付与させる。

(そうだガルシア、それでいい)

 あの相手の動きは間違いなく超範囲の高位魔術を放つときの構えだ。
 恐らくとんでもない一撃が彼を襲うこととなるだろう。だがそれを耐えさえすれば戦況は一気にこちら側に傾く。
 
 高位魔法には隙がつきものだ。反動で動けなくなることはほぼ確実。
 その瞬間に攻撃を叩き込み、一気にフィニッシュへと持っていくということをガルシアは考えているに違いない。

(ここが正念場か……)

「……さぁ、いよいよフィナーレだ。さすがのお前でもこれは耐えられまい。地獄の一撃ってやつを身をもって知るんだな!」

 バトスは術式を発動。
 無数の魔法陣が彼を取り巻き、それだけでも脅威を感じる。
 だがガルシアの顔に焦りはなかった。むしろ落ち着いている。

(精神特訓の成果が活きているな)

 自分の考えた修行が無駄ではなかったことに少しホッとする。
 
(さぁ見せてやれガルシア。お前の底力ってやつを……何事にも屈しない強いお前を!)

「ああ、分かっているさセンコー。俺はこの程度じゃ屈しない、絶対にだ!」

 そう呟きながらガルシアは宙に浮かび、光り輝くバトスを見つめながら詠唱する。

「……術式展開。ユニークカスタマイズマジック【全方位バリア】!」
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