元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第119話 ルーカス・アルモンド2

 お待たせいたしました。久々の更新となります。

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「それって……どういう意味ですか?」
「ん? 言葉通りだけど」
「私たちに決勝戦を棄権しろと?」
「俺はそう言ったつもりだったけど、どう解釈したんだい?」

 この男は本気だった。それはもう目を見れば分かる。
 
 さっきまでのおちゃらけた雰囲気とは裏腹に今度は真剣な顔つきでそう言ったのだ。

「……それはなぜですか? 何か私たちが棄権すべき正当な理由でも?」

 フィオナは決して後ずさることなく、ルーカスに質問する。
 するとルーカスはまたも頬を歪ませて、

「理由かい? それはもちろん、君たちにケガをしてほしくないからに決まっているじゃないか」
「ケガをしてほしくないって……理由はそれだけですか?」
「ああ、そうさ。さっきも俺が言った通り、今年の魔技祭の決勝戦は白熱した戦いが待っていることだろう。確かに俺たちA組も楽しみにしている。だけどね、その心とはまた別に心配していることもあるんだ」
「心配していること?」
「うん。まぁこれは過去にあった事例から説明しなきゃいけないんだけどね」
 
 ルーカスはそう言うと、以前起こった魔技祭による出来事について淡々と語り始めた。
 
 そしてその話は数分にも渡り――

「……A組の生徒が決勝戦で対戦相手を殺してしまった?」
「うん、もう5年以上も前の話なんだけどね。歴代の3年A組レヴィアが魔技祭決勝戦で殺ってしまったという不祥事。当時は大騒ぎになったらしいよ」
「ま、魔技祭にそんな歴史があったなんて……」
「ま、知らないのも無理はないよ。この事件は学園を運営するお偉いさんと当時の3年A組のとある生徒による記憶操作の異能によって完全に隠蔽されたからね。知っているのは生徒会長である俺と学園長くらいさ」
「そ、そんな大事なことをなぜ私に言うんです? 貴方は一体何を考えて……」

 戸惑うフィオナにルーカスはニヤリと笑い、

「そりゃあ君は1年A組の代表的な存在だからね。それに、理由を知りたいと言ったのはそっちじゃないか」
「理由って……それは私たちも同じ運命に遭うかもしれないということですか?」
「必ずしもそうとは限らない。でも今の3年A組には少々血の気の多い奴がいてね。君たちの……えーっとガルなんちゃらって子と対戦した奴さ」
「ガルシアのことですか?」
「あっ、そーそ! そのガルシアくんってこと対戦したヘアスタイルが奇抜な人ね」

 ヘアスタイルが奇抜な人、そしてガルシアと戦ったということは恐らくバトスのことだろう。
 確かにバトスは周りの3年A組の面子と比較しても好戦的だったイメージがある。

 力も相当なものだった。

「彼はそのガルシアくんって子をたいそうお気に召してしまったようでね。ああなってしまった彼は俺でも満足に止めることはできない。決勝戦でもしもガルシアくんが勝ちそう……なんて展開になったら……」
「殺してでも勝ちにくる……そういうことですか?」
「大雑把に言えばそうだね。ま、元々俺たちと君たちとでは力の差がある。つまるところケガをしても責任を取ることが出来ないよってことを俺は言いたいんだ」
「……そう、ですか。随分と舐められたものですね」
「でも実力差は歴然だということくらい君にも分かるだろう? こうは言っても俺は良心的な提案をしているつもりなんだけどね」
 
 良心的? ふざけるな。

 フィオナはそう言わんばかりの険しい顔つきに変わる。
 まともな理由もないくせに棄権だなんて納得がいくわけがない。
 
 しかもこの男は遠回しにはっきりと言った。

 ”君たちじゃ俺たちには適わない”って。

 そんなことを言われてフィオナは委員長として引き下がるわけにはいかなかった。

「で、どうする? 観戦者の人たちには悪いけど、今なら決勝戦の中止はできるよ」

 何食わぬ顔でそう言うルーカス。非常に甚だしい。
 
 もちろん、答えは決まっている。

 私の答えは――

「いえ、もちろんお断りさせていただきます。まだ戦ってもいないのにそのように言われるのは心外ですので」
「ケガじゃ、済まなくなるかもよ? もちろん、それは君だけの話じゃない。君が大切にしているであろうクラスの”仲間”にも言えることなんだ」
「……分かっています。ですが、私たち1年A組は優勝するためにこれまで数々の試練を乗り越えてきました。そしてこうして今、私たちの夢は手の届くところにまで来たんです。此処まで来て、ケガを恐れて逃げるような人なんて1年A組には誰一人いません」

 覚悟ならもう出来ている。
 それは私もクラスのみんなも、そしてレイナード先生たちだって……

「それが、君の答えなんだね?」
「はい。私たちの覚悟は、決して揺らぐことはありません」

 フィオナは一瞬たりともルーカスの目から視線をそらさずに言い切る。
 その確固たる想いが伝わったのかルーカスは「ふっ」と笑いながら、

「そうか、分かったよ。そこまで言うのなら仕方がないね」
「これで用は御済みですか? なら私はウォーミングアップに戻りますけど」
「ああ、もう用は済んだ。戻って構わないよ」
「分かりました。では、また決勝戦でお会いしましょう」

 フィオナはそれだけを告げると、後ろを振り返り、去ろうとする。

 すると、

「あっ、そうだ。これだけは君に伝えておかないと」

 ルーカスが去り際のフィオナにそう言い放ち、フィオナは後ろを振り向いたままその場で立ち止まる。
 そしてルーカスは少し声のトーンを低くしつつ、こう言った。

「君たちの担任講師、確かレイナード・アーバンクルスと言ったかな? 彼、もしかしたら……殺られちゃうかもね」
「……えっ! 今なんて……?」

 フィオナはその言葉に反応し、すぐに後ろを振り返る。
 だがもうそこにはルーカスの姿はなかった。

 そしてフィオナは最後にルーカスが放った言葉をもう一度脳内でリピートする。

「レイナード先生が殺されるって、どういうこと……?」

 衝撃の発言の前にフィオナはその場で立ちすくんでしまう。
 
 ただ強く吹き荒れる風が、彼女を不安の渦へと包み込んでいった。
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