元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第5章 おっさん、優勝を目指す

第120話 潜入

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 あれから、私は”あの言葉”の意味を考えていた。
 
「レイナード先生が殺される? 一体どういうこと……」

 ルーカス・アルモンドが去り際に放ったあの一言。
 私はどうにもそれが頭から離れず、ウォーミングアップどころではなくなっていた。

「仮にあの話が本当ならレイナード先生は……」

 でもあの瞳は嘘を言っているようには見えなかった。
 それに、あの人からは何か良くないオーラが出ていたような気もした。

 邪悪……とまではいかないが、負のオーラが身体に伝播してきたのである。

「……このままじゃ、気が収まらない」

 確認しないと……。

 私の心は不安と焦燥感でいっぱいだった。

 そして、そんな中で私はある一つの決意をした。
 
「もう一度、聞きにいこう。本当の真実を……」

 この学園でごくわずかのものしか中に入れないと言われている秘密の校舎。
 この学園の頂点に君臨すると言われている神剣十傑レヴィアが滞在する地。

 アロナード総合魔術学園、第三特別棟へ。

 ♦

「……ここが、第三特別棟」
 
 私は今、アロナード総合魔術学園の南方に位置する小さな校舎の前にいる。
 
 ここはアロナードが保有する建物の一つ、第三特別棟。

 元々は旧校舎があった場所だったらしく、改築はされているものの当時の面影は多少あった。

 そしてここは通称『開かずの校舎』とも呼ばれている。

 意味は言わずもがな、この校舎には関係者以外立ち入り禁止という制限がかけられているからだ。
 しかもかなり厳重に。

 あと、何より外観が少し不気味な雰囲気があることから幽霊校舎なんて呼ばれていたりして歴代の先輩たちより語り継がれてきた都市伝説は100をのぼる。

 だから誰も入ろうとはしないし、本校舎からかなり離れた位置にあることから近づきすらもしなかった。

 もちろん、私もここに来たのは初めてだ。
 
「ふぅ……よし!」

 深呼吸をして自らを発破。
 ゆっくりと入り口の前まで歩み寄る。

 扉は厳重に鍵がかけられ、完全に固定されていた。
 引いても押してもビクともしない。

「流石にこれは力づくじゃないと開けられそうにないわね……」

 私は一旦、扉の前から離れ、両手を前方に翳す。
 そして静かに呪文を詠唱し、粉砕魔術を放つ。

 すると鎖で厳重に固定されていた鍵は跡形もなく爆散し、破片が辺りに散らばる。

「あっ、少しやりすぎちゃったかな……」

 でも、もうこれで完全に後戻りはできなくなった。
 バレたら恐らく私はただじゃ済まないだろう。

 でも、私はあの時思った。

 このままじゃ、取り返しのつかないことになりそうだと。

 だからそうなる前に何としてでも理由を聞いて、そして止めて見せる。

 私の心にはそんな確固たる決意が根付いていた。

「よし、今度こそ」

 鍵は解かれ、私は完全に無防備になった扉のドアノブに手をかける。
 そしてゆっくりと引くと、少し古さの残る音を奏でながら扉は開かれる。

「お、お邪魔します……」

 中に入ると内装は驚くほどに綺麗で、外観はからは想像もできないほどに豪華な装飾品で彩られていた。
 
「す、すごい……」

 まるでどこかの美術館にいるような雰囲気で思わず立ち止まって見入ってしまうほど。
 現に私も目的を忘れて見惚れてしまっていた。

「あっ、いけないいけない。こんなことをしている場合じゃ……」

 はっ、と目的を思い出し、私は足を進める。
 
 と、その時だった。

(なっ、なに!? この重い感じ。身体が……動かない!?)

 突然、私の身体は誰かにホールドされたかのように動かなくなる。
 胴体は震え、手足は麻痺し、脳には頭痛が走る。

「うっ、なにこれ……どうなっているの……?」

 痺れ・震え・痛みが同時に自分を襲い、少しずつ身体を蝕んでいく。
 
 そして今にも気を失いそうになりかけていた時だ。

 私の脳内にある一言が、入って来る。

「まさか、こんなところまで来るなんてね。ま、予想はしていたことだけど」
「……そ、その声……!」

 頭をかかえ、気力を振り絞って顔を上げる。
 
 そして私の視界に入ったのは紫色のスーツに身を包んだ一人の男。

 アロナード学園生徒会長、ルーカス・アルモンドだった。
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