この歴代最強の新米魔王様、【人間界】の調査へと駆り出される~ご都合魔王スキルでなんとか頑張ります!~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第8話:女剣士再び

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 運命や邂逅とはよく言ったものでその偶然は起こりゆるものなのである。
 現に今その出来事が目の前で起こっている。

 あの黒髪の女剣士。ギラッとした目をこちらに向け、彼女は睨みをきかせていた。
 
「思い出したかしら?」
「ああ思い出した。実技試験の時に俺を見てたな?」
「それはお互いさまでしょ」

(バレていたか……視界には一度も入っていなかったし、他の人間といたというのに……)

 それほど彼女は周りをよく見ているということ。あんな激しい戦闘の最中よくできるものだ。

「それで、改めて聞くが何の用だ?」

 俺がそう聞くと彼女は横目で見ながら、

「……あなたを知りたいの」
「……は? どういう……」
「言葉通りよ。あなたが何者か知りたいだけなの」
「いや、それならさっき鍛冶師の息子って……」
「それはあり得ないわ」

 俺の言動は刃物で切り裂かれたかのように否定される。

(それにしてもどういうことなんだ? まさか、勘付いていると言うのか?)

 徐々に危機感が芽生え始める。

「そ、それよりお前こそ何者なんだ? あの強さは人が成せるものじゃないだろ」

 話題転換。もし勘付いているとしたらかなりマズイことになる。
 今は話をそらして、相手の行動を伺う必要だ。

「あくまで自分の素性は答えないと……?」
「素性もなにも俺は真実を言っているだけだ。信じるかはお前の勝手だけどな」
「あらそう。ならいいわ。信じてあげる」

 いちいち上から目線な女だ。一体何を考えているんだ?
 俺の心中には疑問しかなかった。
 その見た目にそぐわない性格が残念さを演出している。
 
「それより……」
「私のこと……でしょ?」

 俺が問い詰める前に彼女は答える。

「いいわ。教えてあげる。別に鍛冶師の息子には隠す必要はないもの」

(隠す必要はない……か)

「には」ということは知られたくない相手もいるということ。だが教えてくれるならありがたいことだ。
 こいつが仮に勇者だとしたら尚更だ。予め目星をつけたりする手間が省ける。

(一瞬たりとも聞き逃すものか)

 俺は耳をたて一語たりとも聞き逃すまいと身構える。
 そして彼女は話し始める。

「私は……ただの護衛よ」
「……ん? 今なんて?」
「だから……ただの護衛。とある勇者候補のね」
「ご、護衛……? 勇者候補じゃないのか?」
「違うわよ。勇者候補がこんなところにいるわけないでしょ」

 予想外だった。実力からして勇者候補が一番濃厚だろうと思いこんでいた。

「勇者には護衛がつくのか?」

 素朴な疑問をぶつける。予めもらった情報には勇者候補に護衛が存在するなんていうデータはなかった。

「えっ? 当たり前じゃない」

 何言っているんだ? と言わんばかりの不思議そうな表情を浮かべる。
 
(そうか、勇者にはそれぞれ護衛役がいるのか。そしてこの女もその一人……)

 それならあの時の実力の破格さも納得がいかなくもない。勇者を守れるほどの護衛だ。やはり強さを持つ者にしか務まらないだろう。
 
「これであなたの聞きたいことは終わりかしら?」
「あ、ああ……」

 眼をそらしながらそっけなく返事を返す。でもいい収穫だ。
 今までなかった情報を手にすることできた。

(あとは細かな勇者の人数と、それがどんな奴か……だな)

 事前情報によると勇者は全員で5人。そこに護衛役も入れるとなると10人の者たちが此処へ入学してくる予定になる。残念ながら細かな情報は王国軍によって厳しく管理されており、密かに軍が派遣した一流のスパイでもそこまで確かな情報は得ることが出来なかった。
 そこまでセキュリティを強くするということは相当な極秘事項と言えるだろう。
 
 ただそれは勇者候補たちが学園に入学するまでの間だけ。既に世間には勇者候補たちがこの学園に入学してくることは国公認で告げられている。もちろんそれ以外の情報はまだ公開されていない。

(……にしてもこいつはあっさりと自分のことを話すんだな)

 護衛というのは一番知られてはいけないものじゃないのか? 
 隠すつもりはないとのことだから開示制限が解かれているということなのかもしれないが……

(とにかく後でメモをしておこう。そしてこの女の事についても……)

 その時だ。学園の象徴である時計台の頂上から大きな鐘の音が高らかに響きを上げる。
 試験の結果開示が始まる合図だ。
 
「そろそろね。じゃあまた学園で会えたらその時はせいぜいよろしくね。”異端者”……さん」

「……?」

 彼女は最後に一言、そして気になる言葉を付け加えその場を去っていった。
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