ふぁみりーくえすと

風浦らの

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兄妹【仲良く】だよ!

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  【現実世界】

    今朝、快晴は妹の澪と盛大に喧嘩をした。
    事の発端は、呆れるばかりに他愛もない事だった。
    冷蔵庫で保管して置いたコーヒー牛乳を、妹の澪が飲んだ事が始まりだった。
    そのコーヒー牛乳は、快晴が買ってきたもので、朝の目覚ましに飲もうと前夜から冷やしておいた物だった─────

    「なんで勝手に飲むんだよッ!」
    「はあ?    そんなに大事なら名前くらい描いとけばいいじゃん」
    「なんだとこのブス!    じゃあこのパンは食っていいんだな!」

    快晴は澪から朝食のパンを取り上げ、それを口に運んだ。

    「ちょっ、何してんだよこの屑野郎!    返せよ!」
    「そんなに大事なら名前くらい書いとけ!   クソ──ッ、マジでムカつく!   もう顔見せんな。クソが、朝から散々だぜ、いってきまーす」

    この兄妹は仲が悪い。
    互いが互いを見下し合い、毎日の様に醜い争いが繰り広げられていた。

   それでも夜になれば───────


    ■■■■■■■■■■


    【ファミクエ内】

    「あーもう──ッ」
    「ミォン、また兄貴と喧嘩した?」
    「わかる?   まあね。考えただけでもイライラする。ねぇどうしたらいいかな?」
    「そんなダメ兄貴には、お茶に雑巾汁でも入れて飲ませとけ!」
    「なにそれー、ウケるんだけどーー!!」

    とまあ、こんな感じで息ぴったりの仲良しだったりする。

    喧嘩の内容が自分でも些細な事だと分かっているミォンは、敢えて喧嘩の内容は口にしたりはしない。大好きなカイジに小さい女だと思われたくないからだ

    それが幸か不幸か、カイジとミォンの絶妙な関係性を保っていた。

    その後この日もいつもの様に皆で楽しくオープンワールドを旅して、ワイワイチャットを楽しんだ後、いつもの時間に解散となった。

    このパーティーは寝る時間もほぼ同じで、生活リズムがピタリと合った────


    ■■■■■■■■■■■


    そして再び【現実世界】


    快晴が寝る前、珍しく部屋に妹の澪がやって来た。

    快晴は朝の件もあって、今は澪に会いたくなかった。
    せっかく楽しいゲームの時間を過ごし、このまま気持ちよく眠りにつきたかったというのに──────

   「なんだよ。顔見せるなって言っただろ」
    「いや、その事なんだけど……これ」

    澪は快晴に一杯のホットココアを差し出した。
    それはキッチンで自ら入れた自家製だった。

    「えっ?」
    「いや、ほら。コーヒー牛乳のお詫び。私お小遣い無いから、ココア入れて来た」

    それだけ言い残し、澪は逃げるようにそそくさと部屋を出ていった。

    「なんだよ……あいつ……」

    快晴は熱々のホットココアを口にし、口許が僅かに緩むのであった。
    
    もちろん、雑巾汁が入っていようとは知る由もない─────
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