9 / 90
第一章【出会い編】
不思議な石
しおりを挟む
■■■■
サタコと暮らし始めたある日。
「サタコさん、それはなんですか?」
「ん? 恭も興味があるのか?」
さっきからずっと石をゴシゴシと磨いているサタコさん。ときどきハァァと息を吹きかけ、何度も何度もタオルで磨いている。
「き、興味があるって言えば、あるかな……」
朝からずっとあの調子だ。気になってしょうがない。
「これはな、願いを叶えてくれる石なのだ」
「なに!? そんな物いったいどこから!? ちょ、ちょっと俺にも見せてくれ!」
俺はサタコの手から石を奪い、注意深く観察する。しかし、どう見てもただの石ころだ。丸っこい形に多少艶があるが、どこにでもある石ころ。
「こら、返せ恭! それは私のだぞ!」
「お前これをいったいどこで……?」
「さっき庭で拾った」
「…………願いが叶うって、どこ情報だよ?」
「マンガに書いてあったぞ?」
「…………………」
俺は無言で石を玄関から外に投げ捨てた。カンカンカーン……と階段を転げ落ちていく石ころを見て、慌てて拾いに行くサタコさん。
「石太郎ぉぉぉぉぉおおお!!!!」
名前があるんかい!!
サタコは階段を駆け下り、必死で石太郎を探している。どうやら俺は、全くもって無駄な時間を過ごしてしまったようだ。
「恭ぉ! 石太郎に謝るのだ! 可哀想に、なぁ石太郎?」
石太郎を持って帰ってきたサタコ。しかし、その手に持っていた石は明らかにさっきの石では無かった。
「それ石太郎じゃないよね? 随分大きくなったなぁ石太郎さん。顔もゴツゴツして、苦労なさったんですね」
ハッとした顔を浮かべるサタコさん。石をマジマジと見て、どこが違うのかと困惑気味だ。
いやいや、見るからに違うでしょーに。お前の石太郎への愛情はそんなものだったのかよ。
「い、石太郎は修行をして大きくなって帰ってきたのだ、なぁ? 石太郎ぉ?」
適当な事言ってんじゃねぇぇ!!
「ふん、願いが叶っても恭には使わせてやらんからな」
「あい、そうですか」
ぷいっとそっぽを向くサタコ。
サタコは石太郎を床に起き、掌を石太郎に向け、水晶玉を撫でるように手を動かし、ブツブツと呪文を唱える。そして、バッと両手を天高く上げる!
「いでよ、ドラゴーン!!」
シーーーーーーン。
「………………………」
「なぜだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そりゃそうだろうよ……ち、仕方ねぇな。
「それさ七つ集めて、初めて願いが叶うとかじゃねぇの? 知らんけど」
俺の言葉に、目を見開き口を開けて固まるサタコさん。「それだ!」みたいな顔をしている。暫く固まった後、何かを思いついたのか、ドタバタとアパートの階段を降りて行ってしまった。そして、数分後に大量の石を抱えて戻ってきた。今度はなんだと言うのか。
「はぁはぁ……これで七つ集まったぞ!フハハハハッ」
随分と安っすい魔法の石っすねぇぇ!?
「石太郎」「石次郎」「石三郎」「石四郎」「石五郎」「オリハルコン」「石原裕〇郎」
六個目と七個目ぇぇぇえ!!!
七つの石を綺麗に並べ終え、満足気なサタコさん。額の汗を拭い、再び手をかざし呪文を唱える。そして両手を天高く上げ叫ぶ!!
「いでよ、ドラゴォォォォン!!!我にバームクーヘンを与えたまえ!!!」
シーーーーーーン。
でしょうね、でしょうよ。
ピンポーン。
ん?来客??
玄関を開けると、そこには大吉が立っていた。
「よっ恭! 近くに来たから寄ってやったぜ! これ、サタコちゃんにあげようと思って。確か好きだったよな? 『バームクーヘン』」
嘘……本当に願いが叶っちゃったの!?
俺は慌てて部屋に戻り、オリハルコンを拾い上げ、マジマジと見つめる。しかし何度見ても、どう贔屓目に見てもただの石だ……
「あっ……」
俺は手が滑って、オリハルコンを落としてしまった!!オリハルコンが落下した先にはよりによって裕〇郎が……
カツン!と音がして粉々に砕け散る裕〇郎……
お、おぉ……うん……流石オリハルコン……
「裕〇郎ぉぉぉぉォォォォ!!!!」
粉々に砕け散った裕〇郎を前に泣き崩れるサタコさん……
「ご、ごめんサタコ……ほ、ほらバームクーヘンやるから許してくれよ……」
大吉が持ってきたバームクーヘンを手渡すと、ピタリと涙が止まり、願いが叶ったと大喜び!!
愛情薄っっっ!!!
その後サタコは、新しい石を拾ってきて何度も呪文を唱えたが、一つも願いが叶わなかった。
「恭。やっぱり裕〇郎は偉大だったんだな」
「そ、そうだな……」
サタコと暮らし始めたある日。
「サタコさん、それはなんですか?」
「ん? 恭も興味があるのか?」
さっきからずっと石をゴシゴシと磨いているサタコさん。ときどきハァァと息を吹きかけ、何度も何度もタオルで磨いている。
「き、興味があるって言えば、あるかな……」
朝からずっとあの調子だ。気になってしょうがない。
「これはな、願いを叶えてくれる石なのだ」
「なに!? そんな物いったいどこから!? ちょ、ちょっと俺にも見せてくれ!」
俺はサタコの手から石を奪い、注意深く観察する。しかし、どう見てもただの石ころだ。丸っこい形に多少艶があるが、どこにでもある石ころ。
「こら、返せ恭! それは私のだぞ!」
「お前これをいったいどこで……?」
「さっき庭で拾った」
「…………願いが叶うって、どこ情報だよ?」
「マンガに書いてあったぞ?」
「…………………」
俺は無言で石を玄関から外に投げ捨てた。カンカンカーン……と階段を転げ落ちていく石ころを見て、慌てて拾いに行くサタコさん。
「石太郎ぉぉぉぉぉおおお!!!!」
名前があるんかい!!
サタコは階段を駆け下り、必死で石太郎を探している。どうやら俺は、全くもって無駄な時間を過ごしてしまったようだ。
「恭ぉ! 石太郎に謝るのだ! 可哀想に、なぁ石太郎?」
石太郎を持って帰ってきたサタコ。しかし、その手に持っていた石は明らかにさっきの石では無かった。
「それ石太郎じゃないよね? 随分大きくなったなぁ石太郎さん。顔もゴツゴツして、苦労なさったんですね」
ハッとした顔を浮かべるサタコさん。石をマジマジと見て、どこが違うのかと困惑気味だ。
いやいや、見るからに違うでしょーに。お前の石太郎への愛情はそんなものだったのかよ。
「い、石太郎は修行をして大きくなって帰ってきたのだ、なぁ? 石太郎ぉ?」
適当な事言ってんじゃねぇぇ!!
「ふん、願いが叶っても恭には使わせてやらんからな」
「あい、そうですか」
ぷいっとそっぽを向くサタコ。
サタコは石太郎を床に起き、掌を石太郎に向け、水晶玉を撫でるように手を動かし、ブツブツと呪文を唱える。そして、バッと両手を天高く上げる!
「いでよ、ドラゴーン!!」
シーーーーーーン。
「………………………」
「なぜだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そりゃそうだろうよ……ち、仕方ねぇな。
「それさ七つ集めて、初めて願いが叶うとかじゃねぇの? 知らんけど」
俺の言葉に、目を見開き口を開けて固まるサタコさん。「それだ!」みたいな顔をしている。暫く固まった後、何かを思いついたのか、ドタバタとアパートの階段を降りて行ってしまった。そして、数分後に大量の石を抱えて戻ってきた。今度はなんだと言うのか。
「はぁはぁ……これで七つ集まったぞ!フハハハハッ」
随分と安っすい魔法の石っすねぇぇ!?
「石太郎」「石次郎」「石三郎」「石四郎」「石五郎」「オリハルコン」「石原裕〇郎」
六個目と七個目ぇぇぇえ!!!
七つの石を綺麗に並べ終え、満足気なサタコさん。額の汗を拭い、再び手をかざし呪文を唱える。そして両手を天高く上げ叫ぶ!!
「いでよ、ドラゴォォォォン!!!我にバームクーヘンを与えたまえ!!!」
シーーーーーーン。
でしょうね、でしょうよ。
ピンポーン。
ん?来客??
玄関を開けると、そこには大吉が立っていた。
「よっ恭! 近くに来たから寄ってやったぜ! これ、サタコちゃんにあげようと思って。確か好きだったよな? 『バームクーヘン』」
嘘……本当に願いが叶っちゃったの!?
俺は慌てて部屋に戻り、オリハルコンを拾い上げ、マジマジと見つめる。しかし何度見ても、どう贔屓目に見てもただの石だ……
「あっ……」
俺は手が滑って、オリハルコンを落としてしまった!!オリハルコンが落下した先にはよりによって裕〇郎が……
カツン!と音がして粉々に砕け散る裕〇郎……
お、おぉ……うん……流石オリハルコン……
「裕〇郎ぉぉぉぉォォォォ!!!!」
粉々に砕け散った裕〇郎を前に泣き崩れるサタコさん……
「ご、ごめんサタコ……ほ、ほらバームクーヘンやるから許してくれよ……」
大吉が持ってきたバームクーヘンを手渡すと、ピタリと涙が止まり、願いが叶ったと大喜び!!
愛情薄っっっ!!!
その後サタコは、新しい石を拾ってきて何度も呪文を唱えたが、一つも願いが叶わなかった。
「恭。やっぱり裕〇郎は偉大だったんだな」
「そ、そうだな……」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる