釜ヶ崎少年~西成・あいりん地区の少年記~

四奈川 小次郎

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1.駄菓子屋とK君

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釜ヶ崎に移り住んだのは僕が5歳になる頃であろうと思う。
僕は父親と母親の3人で釜ヶ崎の小さなアパートで3人で生活していた。
母親は喫茶店でパートをしており早朝5時半頃には家を出る。
僕は父親と2人で朝食をとり、父も8時頃には家を出る。
その時間から母が帰宅する17時までは私は1人で過ごす事になる。
毎朝父は昼食代として150円から200円程度置いて行った。
そのお金を握りしめ毎日釜ヶ崎やその周辺の地域を歩き回っていた。

その地域のとある駄菓子屋。
駄菓子屋の一区画にファミコンが数台置いてあり30分50円で遊ばせていた。私からすれば駄菓子屋というよりも安いゲームセンターの感覚であった。
その駄菓子屋には恐らく学校や幼稚園には行っていないのであろう子供たちが朝から毎日集まっていた。
そこで仲良くなったのは1つ年上のK君である。
K君は僕にいつもうまい棒を買ってくれた。2人で他人がやっているゲームを後ろから眺めながらうまい棒を頬張り時間を潰していた。
K君のお父さんはいつもパチンコ屋におり、お昼になるとK君はお父さんのいるパチンコ屋さんに行き、お昼ご飯を食べまた街を徘徊するという生活をしていた。

ある日お昼から戻ったK君が1000円札を握りしめていた。お父さんからもらったらしい。
当時5歳と6歳の子供には大金で無限にお菓子が食べられるような感覚になっていた。
地べたに座り、どうしようか何を買おうかなどと相談していると数人のおっちゃんが僕たちを見ていた。
子供ながらに違和感のある視線であった。
しばらくするとおっちゃんたちはいなくなった。
するとすぐにK君が1000円札がなくなったと言い出した。
視線の真相はポケットの入れていた1000円札が座った拍子にK君の傍らに落ちてしまっており、それを狙われていたのだった。
どこかで落としたと思った僕たちは周囲を何時間も探した。もちろん見つかるわけもない。
その間K君はずっと泣いていた。

その経験からK君はそれ以降お金をポケットに入れず手に握りしめるようになった。
「ポケットに隠しとかんと危ないよ」と注意喚起したがK君は聞き入れなかった。
手にお金を握りめるという行為は周りにお金を持っていると知らせる合図になる。
案の定、年上の兄ちゃん達にいわゆる「カツアゲ」に遭うまで間もなかった。

僕は人目の少ない場所でお金を持っていると知らしてはいけない事を知っていた。
なぜならそれ以前に僕にはカツアゲに遭った経験があった。

ある日いつも通り200円程度の小銭を握りしめ街を歩いていると
10歳前後の2人組の兄ちゃんに呼び止められた。
2人組「金持ってるやろ?出せや」
僕「嫌や」
2人組「しばくぞ」
僕「お昼ご飯代やねん」
2人組「ええから出せや」
ポケットに強引に手を突っ込んで来たので必死に抵抗した。
「ゴツッ!」
味わったことのない衝撃が鼻に走った。
顔面を拳で殴られたのである。
大量の鼻血が滴ってきた。
初めての衝撃と血が滴るのを見て恐怖で全身が震えた。
5歳の僕は血がいっぱい出てる=死ぬかもしれないという思考になっていた。
2人組はお金を奪い取り
「そのまま後ろ向いて真っすぐ行け。振り向いたらまた殴るぞ」
今でも鮮明に覚えてるほどの恐怖の言葉である。
その後しばらくは大きくなったら僕もカツアゲしてやるというイケない思考になっていた。


しばらくしてK君は街に姿を見せなくなった。
おそらく引越し街を離れたのであろうと思う。
当時、仲良くなった子たちが何人かいたが僕を含めほとんどがそう長くない間に街を離れた。
離れたというよりは親の頑張りで脱することが出来たという方が正しいか。

当時の多くの子供たちがこれに近い生活だったように思う。
僕の周りには同年代から小学校低学年程度の子供が一定数いたがほとんどが幼稚園や小学校に通っている様子がなかった。
僕に至っては引越して小学校に通うまではランドセルというものを知らなかった程である。
また、幸い僕はアパートに住んでいたが、簡易宿泊所(通称ドヤ)に住んでいた子達もいた。

当時はその生活が当たり前であったので疑問にも思わなかったが、そのような環境で生活していると僕達のような子供も危険な目に遭うことがしばしばあった。
まず子供たちが遭いがちな危険が性被害である。

その後、僕にもその危険が訪れる事になる。
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