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29.赤い糸
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「茜先輩。指輪じゃなくて、爆弾ですよ。玲さんは貴方に爆弾を渡したんです」
「⋯⋯」
茜さんは黙って私を睨んでいる。
「何事ですか?」
制服を着た二人組の警察官が私たちの控室の異様な状況を察知し駆け込んできた。今日の招待客には要人もいるのでホテルの警備員だけでなく多くの警察官が配備されている。
「曽根崎玲が指輪に爆弾を仕込んで私を殺そうとしました」
私の言葉に二人の警察官が驚いたように顔を見合わせる。
「曽根崎玲は何も関与してません。私が指輪に爆弾を仕込み、柏原凛音の殺害を試みました」
茜さんの凛とした声に驚いて彼女の顔を見る。私にニヤリと笑いかけると彼女は私の耳元に囁いてきた。
「玲はきっとまた私の元に戻ってくるわ」
警察の二人が茜さんを連れて行く。私はその後ろ姿を見て、目眩がした。崩れそうになる私をHIROが受け止める。
「HIRO、来てくれてありがとう」
HIROが無言で微笑むと私を宝物のようにギュッと抱きしめてきた。
奈美子さんが私たちを2人きりにしようと、泣き崩れるRINAさんを連れて部屋を出るのが見えた。
しばらくHIROと抱き合っていると、静かに扉が開いた。
「玲さん」
私とHIROが抱き合うのを見て、玲さんが睨みつける。私は慌ててHIROを引き剥がそうとした。これ以上、私のトラブルに彼を巻き込んではいけない。
「曽根崎玲さん。俺、結婚を前提に凛音と付き合ってるんです。曽根崎さんは凛音へのストーカー行為を直ちにやめてくれませんか?」
HIROは私を離そうとはせず、玲さんを見据え淡々と言葉を紡ぐ。
「ストーカー? 誰に向かって口を聞いてるんだ? 凛音はずっと昔から僕のモノだ」
玲さんの冷ややかな声に身震いした。
「出会う順番が違っただけですよね。凛音も前に子供もいないんだし、別れてくれって言ったはずです」
初めの人生で私が言った言葉をHIROが覚えている訳がない。初対面の私に彼が兄のように時を超える深い感情を持ってたとは思えない。
「お前⋯⋯」
玲さんも驚いているようだった。
その時、開ききった扉から警察官を連れた兄が現れた。
「曽根崎玲さん、柏原凛音殺害未遂で貴方の婚約者である東大寺茜に容疑がかかっています。署までご同行頂きお話聞かせて頂けますでしょうか」
「もちろんです。僕でよければ、できる限り協力させて頂きますよ」
玲さんは余裕の笑みを浮かべると警察と一緒に部屋を出て行った。
「凛音、心配した」
兄はHIROが私を抱きしめてるので、二人まとめて私たちを抱きしめてくる。
「ふふっ、お兄様、流石にこれは変だよ。もう、大丈夫だから二人とも私から離れて! それより、HIROも記憶を引き継いでるみたいなんだけど⋯⋯」
「俺が事細かに説明したからな。凛音が好きなら全て思い出して命懸けで守ってみろって言ったんだ」
「ちょっと、待って! そんな巻き込むような真似!」
私はHIROの顔を見ると、HIROは初めて会った時のような余裕の表情で私を見つめていた。彼の家が私に巻き込まれたせいで崩壊した。私の双眸の眦から涙が溢れる。その涙をHIROが親指で拭ってくる。
「『そんな事したら、貴方もタダじゃ済まないわよ』って凛音は俺に言ったじゃないか。あの時に、厄介ごとに巻き込まれてもお前を守りたいと思った。今は凛音を愛してるから守りたい。恋人のフリじゃなくて恋人になりたい」
「う、うん」
私は思わずHIROの首に抱きついて目を瞑った。
キスが降ってくると思ったら、兄の一声によりストップがかかった。
「流石にそういうのは二人きりの時にしようか。二人とも自分の立場を考えようね。誰かに見られたら大変だよ。真紘君! トップアイドルになってウチのブランドのアンバサダーになるくらい成功しないと、俺は君を凛音の相手とは認めないから」
兄は微笑みながら言い放つと部屋を出ていって、私たちを二人きりにしてくれた。
私とHIROはお互いを確かめ合うようにキスを交わすと、ゆっくりと唇を離す。
「ねえ、真紘。本当に私といて良いの?」
私が彼を名前で呼んだのが嬉しかったのか、彼はにっこりと笑った。
「曽根崎玲は戻ってきて、また凛音を殺しにくるだろうな。でも、何度時が戻っても俺は凛音を愛し守るヒーローになるよ。博樹さんもいるからダブルヒーロー体制で凛音を守るから」
ドヤ顔で真紘は語っているが、何度も死ぬことを前提とされたヒロインなんてやりたくない。
「できれば、今度は死なないでこの人生を全うさせて欲しい」
殺される恐怖というのは消えないし、頑張って積み上げたもののある今の人生を私は気に入っている。
「もちろん! 俺たちトップをとって、ラブラブ夫婦になろうな!」
真紘は非常に前向きな男だ。今、私を抱きしめているのはヤンチャで前向きな私のヒーロー。でも、ふと目線を落とすと私の小指にはこんがらがった赤い糸がどこかに繋がっているように見えた。時を繰り返し解けなくなっているようなこの糸の先を辿ると誰がいるのか私は知っていた。
「⋯⋯」
茜さんは黙って私を睨んでいる。
「何事ですか?」
制服を着た二人組の警察官が私たちの控室の異様な状況を察知し駆け込んできた。今日の招待客には要人もいるのでホテルの警備員だけでなく多くの警察官が配備されている。
「曽根崎玲が指輪に爆弾を仕込んで私を殺そうとしました」
私の言葉に二人の警察官が驚いたように顔を見合わせる。
「曽根崎玲は何も関与してません。私が指輪に爆弾を仕込み、柏原凛音の殺害を試みました」
茜さんの凛とした声に驚いて彼女の顔を見る。私にニヤリと笑いかけると彼女は私の耳元に囁いてきた。
「玲はきっとまた私の元に戻ってくるわ」
警察の二人が茜さんを連れて行く。私はその後ろ姿を見て、目眩がした。崩れそうになる私をHIROが受け止める。
「HIRO、来てくれてありがとう」
HIROが無言で微笑むと私を宝物のようにギュッと抱きしめてきた。
奈美子さんが私たちを2人きりにしようと、泣き崩れるRINAさんを連れて部屋を出るのが見えた。
しばらくHIROと抱き合っていると、静かに扉が開いた。
「玲さん」
私とHIROが抱き合うのを見て、玲さんが睨みつける。私は慌ててHIROを引き剥がそうとした。これ以上、私のトラブルに彼を巻き込んではいけない。
「曽根崎玲さん。俺、結婚を前提に凛音と付き合ってるんです。曽根崎さんは凛音へのストーカー行為を直ちにやめてくれませんか?」
HIROは私を離そうとはせず、玲さんを見据え淡々と言葉を紡ぐ。
「ストーカー? 誰に向かって口を聞いてるんだ? 凛音はずっと昔から僕のモノだ」
玲さんの冷ややかな声に身震いした。
「出会う順番が違っただけですよね。凛音も前に子供もいないんだし、別れてくれって言ったはずです」
初めの人生で私が言った言葉をHIROが覚えている訳がない。初対面の私に彼が兄のように時を超える深い感情を持ってたとは思えない。
「お前⋯⋯」
玲さんも驚いているようだった。
その時、開ききった扉から警察官を連れた兄が現れた。
「曽根崎玲さん、柏原凛音殺害未遂で貴方の婚約者である東大寺茜に容疑がかかっています。署までご同行頂きお話聞かせて頂けますでしょうか」
「もちろんです。僕でよければ、できる限り協力させて頂きますよ」
玲さんは余裕の笑みを浮かべると警察と一緒に部屋を出て行った。
「凛音、心配した」
兄はHIROが私を抱きしめてるので、二人まとめて私たちを抱きしめてくる。
「ふふっ、お兄様、流石にこれは変だよ。もう、大丈夫だから二人とも私から離れて! それより、HIROも記憶を引き継いでるみたいなんだけど⋯⋯」
「俺が事細かに説明したからな。凛音が好きなら全て思い出して命懸けで守ってみろって言ったんだ」
「ちょっと、待って! そんな巻き込むような真似!」
私はHIROの顔を見ると、HIROは初めて会った時のような余裕の表情で私を見つめていた。彼の家が私に巻き込まれたせいで崩壊した。私の双眸の眦から涙が溢れる。その涙をHIROが親指で拭ってくる。
「『そんな事したら、貴方もタダじゃ済まないわよ』って凛音は俺に言ったじゃないか。あの時に、厄介ごとに巻き込まれてもお前を守りたいと思った。今は凛音を愛してるから守りたい。恋人のフリじゃなくて恋人になりたい」
「う、うん」
私は思わずHIROの首に抱きついて目を瞑った。
キスが降ってくると思ったら、兄の一声によりストップがかかった。
「流石にそういうのは二人きりの時にしようか。二人とも自分の立場を考えようね。誰かに見られたら大変だよ。真紘君! トップアイドルになってウチのブランドのアンバサダーになるくらい成功しないと、俺は君を凛音の相手とは認めないから」
兄は微笑みながら言い放つと部屋を出ていって、私たちを二人きりにしてくれた。
私とHIROはお互いを確かめ合うようにキスを交わすと、ゆっくりと唇を離す。
「ねえ、真紘。本当に私といて良いの?」
私が彼を名前で呼んだのが嬉しかったのか、彼はにっこりと笑った。
「曽根崎玲は戻ってきて、また凛音を殺しにくるだろうな。でも、何度時が戻っても俺は凛音を愛し守るヒーローになるよ。博樹さんもいるからダブルヒーロー体制で凛音を守るから」
ドヤ顔で真紘は語っているが、何度も死ぬことを前提とされたヒロインなんてやりたくない。
「できれば、今度は死なないでこの人生を全うさせて欲しい」
殺される恐怖というのは消えないし、頑張って積み上げたもののある今の人生を私は気に入っている。
「もちろん! 俺たちトップをとって、ラブラブ夫婦になろうな!」
真紘は非常に前向きな男だ。今、私を抱きしめているのはヤンチャで前向きな私のヒーロー。でも、ふと目線を落とすと私の小指にはこんがらがった赤い糸がどこかに繋がっているように見えた。時を繰り返し解けなくなっているようなこの糸の先を辿ると誰がいるのか私は知っていた。
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