乙女ゲームの住人達はヒロインが居ないときが一番楽しい

つくね

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無口なヒロイン

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新しいヒロインが来てから、早一ヶ月が経とうとしていた。

王婚「どなたか、会話なさいました?」

一同首を横に振る。視線は感じるのだ、まるでアイドルを見るようなキラキラしたやつ。今回は誰とも絡まないノーマルエンドなのかな?と皆が思う中、

担「ふっふっふ、それはどうかな?ノア君?」

魔「は?僕?」

だが、担任の話を聞いて動くことになったのだった。





放課後の空き教室に、ヒロインとノアは居た。アイドルの一人を前に、ヒロインはキョドっていた。

「んじゃ、このコップに水溜めてみて。」

ノアの持つコップを睨みつけ、手までかざしてウンウン唸るヒロイン。基本、誰でも使える魔法がある。生活魔法というやつだ。コップに水など造作もない、はずなのだが…。

「ちゃんとイメージしてる?」

はい……と眉を下げるヒロイン。

「ん~、何で発動しないのかなぁ…、ちょっと声に出してやってみようか。」

「はい!コップさ!みんずば!ためでけ!」

「「「「「「「!?」」」」」」」

こっそり様子を窺っていた面々もずっこける。どうやら訛りのせいで発動しなかったようだ。

「はぁ?何て言ったの?意味分かんないんだけど。みんずって何さ!ためでけって何さ!」

怒られた。しかし、自分の訛りを笑わなかったノアに、ヒロインは感動していた。

「さすがだべさ~。」

「何がだよ!でも何で発動しないか分かったよ!言語として認識出来ないからだよ!」

この後、ノアの指導で無事コップに水は溜まった。おめでとう。




訛りを気にしていただけで、実はおしゃべりしたかったヒロイン。それからは他の人達とも徐々に打ち解けて行った。だがやはり誰かを攻略なぞ、自分には不相応だと思っているらしく、結局対象者の中で話したのはノアだけであった。それも、魔術の指導のときのみだったので、モブの皆さまも好意的であり、ヒロイン含めのんびりした一年を過ごしたのであった。





ヒロインが成仏した後。

王「ちなみに火は何て言ってたの?」

魔「ひぃ、もす。」

宰「は?」

騎「何て?」

魔婚「うーん実に興味深い。」

宰婚「どちらの方だったのかしら?」

騎婚「どこでもいいけど面白かったね。」

王婚「ふふ、そうですね、楽しかったですわ。」

担「いい子だったよね。」

なにげに癒された面々であった。



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