【完結】オッサンとインキュバス

薗 蜩

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オッサン、イケメンを拾う

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中学生になって覚えたオナニーは、猿の様に毎日でもオナニーしてた。
大学生になったら彼女も出来たので3日に1度はオナニーかセックスしてた。
サラリーマンになったら週末オナニーかセックスしてた。
転職したら2週間に1度オナニーかセックスしてた。
アラフォーになったら1ヶ月に1度、給料日にソープに行った。
アラフィフになって気がついたら性欲がスッポリと行方不明になっていた。

54才独身。
四兄弟の末っ子で両親が他界した後の実家の一軒家で独り暮らしをしている。
長男次男はさっさと結婚してマイホームを作り実家に戻らない。
三男は行方不明だが死んではいないらしい。
年に一度ふらりと家に帰ってきてどこか訳のわからないお土産を置いて1週間もしないうちに出ていくのだ。
なので、土地は長男名義なのでこの家が朽ちるまでは家賃無しで住むことを許された甲斐性無しのしがない職業介護士である。
実際給料安いからお兄様様で家のちょっとした修繕や庭弄りをしながら生まれたときから住んでいるこの家でのんびり暮らしていた。
ずっと独身なのも寂しいので婚活に行ってみたり結婚相談所に登録もした。
名義は違うが一軒家に1人で住んでいるし、両親他界してるので嫁姑問題も無い。
顔も悪くない方だと自負している。
だから自分ではなかなかの優良物件だと思っていたのだが…

今日も40代50代中心の婚活パーティーに参加をしているが、『年収320万』と名前の下に年収が表示された名札を見られるといつの間にか女性が消えている…
なぜ婚活パーティーで年収を表示しないといけないのか!これのせいで!!と一緒に参加しているバツイチ子持ちの同僚に愚痴ったら、

「馬鹿正直に書くからですよ!俺なんか…」

と胸元の名札の年収は『600万』となっていた!
絶対そんなに貰ってないだろ!と小声で注意したが、

「バレた時は副業で稼いでいたと過去形で話せば大丈夫ですよ」

と笑っていた。
いやいやいや!嘘は駄目でしょ!もしお付き合いして嘘の年収だったら悲しいじゃないか?
私は少しの嘘もつかれたら悲しいし信用出来なくなるんだが…
なんとなくモヤモヤした気分のまま誰との連絡先の交換もなく婚活パーティーは終わった。
同僚はいつの間にか姿が消えている。
誰かの連絡先でもGETしたのだろう。
羨ましいのかなんなのか…納得は出来ないがそれも手なのかもしれない。
正直者は馬鹿を見るのはしょうがない世の中とは考えたくはないが…


1人でトボトボと駅から家までの人気の無い道をのんびりダラダラ歩く。
前に女性が歩いているわけもないので足音や速度に気を付けることもない。
いつもなら近道になる公園を突っ切ってさっさと家に帰るところだが今夜はなんとなくそんな気分じゃなかった。
夜空を見上げてもどんよりとした黒っぽい空が見えるだけで星も見えない。
そういえば…彼女ってどれくらいいなかったかなと考えていたら15年位いなかった…
そんだけいなかったら童貞と変わらないんじゃ…
え?もう種さえも作れない不能に…?
まてまてまてまて!オナニーしてないだけで不能と決まったわけではない!
…………と、思う……
うん…ちょっとゾッとした。
なので今夜は行方不明になった性欲でも探しに数年振りにネットからエロ動画でも観ようかなと考えていた時だった。
近道しなかった公園をぐるっとまわるように道を歩いていたら、公園の低い柵にもたれるように誰かが寄りかかっていた。
シルエットや大きさからして女性には考え難い。
ユラユラと動いたり微かに唸り声が聞こえたり…
見てしまったら気になる。
気になってしまった。
ただの酔っ払いなら無視すれば良いだけの話なので少しだけ声掛けして反応をみてどうするか考えようと近寄ってみた。
やらない偽善よりやる偽善が私のモットーなのである。

「だっ……どうしましたぁ?」

日本人は大丈夫かと聞かれたら大丈夫ですと答える人種なのを思い出した。

「………………っ……ぃ…」

近寄ると結構若そうなお兄さんで、髪色は黒っぽいがインナーカラー?というやつで内側が金髪?白髪?だった。
顔は下を向いていて確認はしてないがお腹を押さえて柵にもたれている。
反応が鈍いし声も小さい。
これは救急車案件かもしれないと思い再度お兄さんに声掛けをした。

「お腹痛いんですか?話出来ますか?」

いつもお爺ちゃんお婆ちゃんに声掛けするようにできるだけハッキリゆっくり話し掛けた。

「話…出来ま……す…」

かなりか細い声で返事が聞こえたが、この声量はなかなかの体調不良じゃないか?
そんな声じゃ会話出来ないだろ!と心のなかで突っ込んでいたが、

「とりあえず危なそうなんで救急車呼びますね!」

持っていたスマホで救急ダイヤルを押そうとしたらさっきまで体調悪くしていたお兄さんが私の手元のスマホを取った。

「え?」

急なことだったのでビックリして動けないでいると

「救急車は…駄目です………ハァハァ…」

どう見ても息切れして今にも倒れそうなお兄さんがさっきよりは声量大きめで話し掛けてきた。
初めて見たお兄さんの顔はモデルさんみたいなハーフっぽい。
男から見ても格好良いとしか言い様の無い整いすぎている顔をして少し苦しそうな顔をしてこっちを見ていた。
体調悪くなかったらかなりのイケメンだ。
私が女なら即一目惚れコースだろう。

「あっ…でもかなりヤバそうです…でしたよ?」
「お腹………お腹空いてる…だけ……ハァ…なんで…」
「え?」

お腹空いてるだけ?

「お腹空いてるだけ?」
「ハァ…ハァ…」

お兄さんは必死に息をしながら首を縦にした。
お腹空いてるだけって………それだけでこんなになる?
何日位食べてないんだってレベルか?

「お腹……空いてるレベル…?」

お腹空いてるだけにしてはヤバそうなんだけど…本人が言うならお腹空いてるだけなんだろう……?
うーん…

「今、特に食べ物持ってないんだけど……あ、うちに作り置きおかずあるから…それ食べさせるよ。口にあうかはわからないが」

独り暮らしが長いと食費さえも節約するようになって週に1度一気に作り置きおかずを作って冷凍する事が楽しみのひとつになっていた。
イケメンのお兄さんはさっきよりは苦しくなさそうな顔で縦に首を頑張って振っていた。
うん。本当にお腹空いてたんだな…

「家、すぐそこなんだけど………歩けそうにないならここで……」
「あるっ……ける…」

お兄さんは顔は嬉しそうなのに体がフラフラでよろけながら頑張って立ち上がって来た。
そこまで……相当飢えているのかと可哀想に思った。

「いや、ここで待ってて!すぐに持って!っ!」
「一緒に………行くっ!」

お兄さんは激しく息を切らしながら私に寄りかかって来た。
そんなに飢えてるなんて…

「わかりました。仕事柄体力と力だけはあるんで…」

私はそう言うとお兄さんをお姫様抱っこした。
あ、思ってたより軽い。

「うわぁ!」

お兄さん声出るじゃん。

「ちょっと恥ずかしいけど夜だし、人も見えないんでさっさと行きましょう!落としちゃうかもしれないから、確り掴まってください」

私がそう言うとお兄さんは納得したのか私の首に腕を回して肩に頭を寄せてきた。

「ん?」

抱っこされ慣れしてる?

「オジサン…………ありがと…」

素直にお礼を言える若い子は珍しいなと思った。

「とりあえずご飯食べさせてあげるから、お礼はその後に」

家はすぐそこなので2分もしないうちに着いた。

本当なら知らない人を家の中に簡単にあげる事はしないのだが、このお兄さんは何だか可哀想に思えてついあげてしまった。
お腹を空かせた子犬のように見えていたのかもしれないが、そんな雰囲気をこのお兄さんに感じてしまっていた。

「じゃあ、すぐに用意するから10分位待ってて、そこら辺にある本なら適当に読んでても構わないからね」

私は婚活パーティーに着ていたスーツのままで台所に立った。
冷凍庫から作り置きしていたカボチャとトマトのスープの素を取り出し小さめの鍋に氷を砕くように入れ火をかける。
ある程度溶けたら牛乳を加えいちど火から下ろしミキサーにかける。
スープが滑らかになったら再度鍋に入れて軽く沸騰したら完成。
『カボチャとトマトのクリームスープ』

「とりあえず急に固形物は怖いから、お腹が暖まるスープを飲んでみて」

私はお兄さんにさっき出来たばかりのスープを大きめのマグカップに入れてスプーンと一緒に出した。
お兄さんはソレを受け取ると匂いを嗅いでスプーンにスープを乗せてフーフーして口に入れた。

「んんんんんんっっ!!!」

お兄さんはスプーンを口に入れたまま顔全体で喜んでくれた。
どうやら口にあったようで安心した。
美味しかったのか二口三口と飲んで最後にはジュースでも飲むように飲んでくれた。

「そんな風に食べてくれると嬉しいよ」

私は素直に伝えた。
誰かに食べて貰うのは嫌いじゃない。
なんなら作ってあげるのが好きな方だ。

「こんな美味しいスープ初めてです!」

普通に声が出せるようになったお兄さんは爽やかに眩しい笑顔で味を誉めてくれた。
正直嬉しいがイケメンの笑顔の破壊力も凄くてだんだん目をあわせられなくなってくる。

「そんなに誉めてくれると恥ずかしいなぁ」

もう50もとうに過ぎたおっさんの照れ顔なんて恥ずかしいしかない。

「あのぉ…お名前教えて頂けますか?」

え?名前?
あ!あー!そうかそうか!

「そうだったね、自己紹介というかお互い名前もわからなかったねぇ。ははは」

私はまだ名乗ってもいなかったし名前も聞いていなかった。

「私は秀一。橋場秀一(はしば しゅういち)と言います。君は?」
「俺はレオン!ただのレオンで良いよ!あとね、ぶっちゃけとくけどインキュバスです!」
「………ん?」
「俺、秀一さんバリタイプなんですよ!ちょっとだけ精液貰っても良い?」
「………ん?」
「それはOKって事だね!可愛い!秀一さん!」
「え?え?」
「ふふふ…じゃあ…いただきまぁす!」
「えっーーー?!?!」
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