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梅雨の頃
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雨の降る中、傘もささずに舞う人影がひとつ。
春の空の色だった彼女のロングスカートは、雨を吸って夏の海の色に変わってしまっている。
重く足にまとわりつくであろうに、それでも踊るのをやめようとしない。
雨が木の葉にあたる音と、彼女の靴が水を跳ね上げる音が音色を奏でる。
不意に陽の光がさし始める。光の乱反射か、それとも春への憧憬か、彼女が桜吹雪に攫われかけているように見えた。
傘で桜をはじきながら彼女に近付いて、もう一本傘をさし彼女の上に掲げる。雨に濡れなくなったのを不思議に思ったのか、きょとり、とこちらを見上げてくる。
「そろそろ風邪をひくよ」
彼女の踊りが見られなくなるのは残念だが、風邪で苦しむ姿は見たくないので。
2人でゆったりと歩き始める。手元の荷物からタオルを取り出して彼女に渡したら、最初に顔を拭き、髪の毛を拭い始めた。
長い黒髪を片側にまとめて絞るようにしているその姿は、なんだか海から上がってきた人魚姫に見えて。舞っていた桜が一瞬のうちに気泡になり、雲を通って青色と灰色が混ざった色の光が海になり。
ぼおっとしていたのに気付いたらしい。
ふわりと彼女が振り返って、
「季節外れだけど、おでん買ってかない?」
僕は今さっき彼女がしていたような表情をしているのだろう。そこには人魚姫なんていなかった。
「…まだコンビニにあるのかな」
「たしかに。なかったら肉まん…もなさそうだね。どうしよっかな」
真剣に悩み始める彼女の手をとる。すっかり冷え切っていて僕の手の熱を奪っていく。
「濡れた服で入るのはやめとこう?冬に買ったおでんの具材たちがまだあるから、このまま帰ろう」
そう言って横並びで歩き始める。彼女が腕を振るのにつられて僕の腕も揺れる。傘と傘の間を縫って雨が体温を奪おうとするが、お互いの体温が溶け合っていて気にならなかった。
春の空の色だった彼女のロングスカートは、雨を吸って夏の海の色に変わってしまっている。
重く足にまとわりつくであろうに、それでも踊るのをやめようとしない。
雨が木の葉にあたる音と、彼女の靴が水を跳ね上げる音が音色を奏でる。
不意に陽の光がさし始める。光の乱反射か、それとも春への憧憬か、彼女が桜吹雪に攫われかけているように見えた。
傘で桜をはじきながら彼女に近付いて、もう一本傘をさし彼女の上に掲げる。雨に濡れなくなったのを不思議に思ったのか、きょとり、とこちらを見上げてくる。
「そろそろ風邪をひくよ」
彼女の踊りが見られなくなるのは残念だが、風邪で苦しむ姿は見たくないので。
2人でゆったりと歩き始める。手元の荷物からタオルを取り出して彼女に渡したら、最初に顔を拭き、髪の毛を拭い始めた。
長い黒髪を片側にまとめて絞るようにしているその姿は、なんだか海から上がってきた人魚姫に見えて。舞っていた桜が一瞬のうちに気泡になり、雲を通って青色と灰色が混ざった色の光が海になり。
ぼおっとしていたのに気付いたらしい。
ふわりと彼女が振り返って、
「季節外れだけど、おでん買ってかない?」
僕は今さっき彼女がしていたような表情をしているのだろう。そこには人魚姫なんていなかった。
「…まだコンビニにあるのかな」
「たしかに。なかったら肉まん…もなさそうだね。どうしよっかな」
真剣に悩み始める彼女の手をとる。すっかり冷え切っていて僕の手の熱を奪っていく。
「濡れた服で入るのはやめとこう?冬に買ったおでんの具材たちがまだあるから、このまま帰ろう」
そう言って横並びで歩き始める。彼女が腕を振るのにつられて僕の腕も揺れる。傘と傘の間を縫って雨が体温を奪おうとするが、お互いの体温が溶け合っていて気にならなかった。
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