宇宙からの物語

星華藺るく

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星月夜の贈り物

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僕のクラスは、先生と生徒の仲が良く、学校行事に積極的に参加するクラスだった。特に文化祭にとても力を入れていた。二ヶ月も前から文化祭の出し物について話し合い、作れるものは少しずつ作り始めていた。文化祭実行委員の2人は、その頃からすごい忙しそうにしていた。文化祭一ヶ月前になると、他のクラスでも文化祭の話題が増え始め、一週間前にもなると休み時間を使って文化祭の準備をする人が出始めた。かくいう僕のクラスは一ヶ月前から休み時間を使っている人がおり、実行委員の2人は休み時間が休み時間じゃなくなっていたのだが。そうして少なくない犠牲の上にできた僕のクラスの文化祭の出し物は、学年で優勝し実行委員の2人には表彰状が授与された。その次の日は、丸一日を使って文化祭の後片付けをする日となっていた。昼食の時間、不意に学級委員長が前に立ち、
「こうして、文化祭で学年優勝できたのはずっと頑張っていてくれた実行委員の2人のおかげです。クラスを代表して、花束を送りたいと思います」
と言ったのだ。2人は恥ずかしそうに、でも誇らしげに花束を受け取っていた。花束は窓からの日の光を浴びて、キラキラと輝いているようだった。

その日の帰り道の途中で、建設現場が見えてきた。とても大きい音とともに機械が動いているのを、近所に住んでいるであろう奥様方がチラチラと見ながら何かを言っているのも同時に見えた。その様子から良からぬことを言っているのは簡単に想像できた。その時、
「あぶないぞ!」
「もっと慎重にやれ!」
と緊張感が増した。建設現場の方を見てみると、若者が立っている足場が少し揺れていた。それまでヒソヒソと何かを言っていた奥様方も一斉にそちらを見ていた。しばらくして揺れていたのが収まり若者が別の足場に移るとホッとした空気が流れた。思わず足を止めていたのに気付き、歩き始めると奥様方が
「危険と隣り合わせなのねぇ」
「そういえばここ、防音の壁みたいな物がないのね」
「あら、そういえばそうねぇ」
と言っているのが聞こえた。そのうちの1人と目が合うと会釈されたので会釈してそのまま家に帰った。

家に帰り二階に上がると姉が
「今日結婚記念日なんだって、知ってた⁈私さっき知ったの。何か贈り物を用意しなきゃ!」
と一気にまくしたてた。昼間のキラキラと輝いている花束が浮かんできた。姉にその花束のことを話すと、家を飛び出していった。僕も何か用意しようと思い、下に降りると台所で母が作業をしていたので、そのまま夕飯の手伝いをすることにした。しばらくすると父が帰り、その後すぐに姉も帰ってきた。
「ただいま。いい匂いだな」
「おかえりなさい。今日は筑前煮ですよ」
「ただいまっ」
「おかえりなさい。どこに行ってたの?」
「今日結婚記念日でしょ?これ、お父さんとお母さんに贈り物。」
そう言って姉は後手に持っていた花束を取り出し、
「おめでとう」
と言った。2人はすごく喜び、僕と姉のことをギュッと抱きしめた。姉は照れながら抱きしめ返していた。

ひと段落着いたところで家族4人で食卓を囲み、和やかな時間を過ごした。そのあと母が
「おばあちゃんの家で採れた葡萄よ。写真も一緒に送られてきたの」
と言って一枚の写真と葡萄を持ってきた。その写真にはおばあちゃんと白い日本犬が写っていた。
「紀州犬って言う犬種で、今はおばあちゃんが保護して一緒に暮らしているそうよ」
「保護ってことは、何処かに捨てられて……?」
「そうみたいね。最初は近づくことすらできなかったそうよ。それがこの写真ではおばあちゃんに抱っこされてて、かわいいわね」
「おかあさん、私も犬飼いたい!おばあちゃんみたいに保護っていうのは難しいと思うけど、保健所から引き取るぐらいはできるよ!」
「そうねぇ、次の休みの日に行ってみましょうか」
「次の休みの日って…明後日?ありがとう!」
そう笑いながら姉は葡萄を一粒頬張った。葡萄の横の写真の中で犬が笑っていた。

自分の部屋に戻り布団の上で横になると、ここ最近の出来事が順々に思い出された。
『文化祭実行委員への花束』
『建設現場での出来事』
『結婚記念日の贈り物』
『写真の中で笑う犬』
どれも日常の中で易々と体験できる出来事ではないような気がした。けれど実際にこうして体験できているのだから日常を変えようと思えばいとも簡単に変わるのではないだろうか、普段の視点からはベールに包まれて見えないが少し変えただけで見えるようになるのではないかと、いつもは全く考えないことが思い浮かんだ。……少し疲れているのかもしれない。今日はもう寝よう。窓の外を見ると、綺麗な星月夜だった。
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