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第1章 突入! エベレストダンジョン!
第26話 塔、出現。
しおりを挟む「何だこれは? どういう仕組みだ?」
一夜明けて41階層に来てみれば、この階層はかなり深い。
幅や奥行きは50m程だが、下の地面が見えない程深く、天井も見えないくらい高い。
雲まであるし、風も吹いている。
「上にも階層があったはずなのに、なんで空みたいになっているんだ?」
「不可思議じゃの~」
そして、この空間の中央には、直径30mちょっとはある円柱形の塔がそびえているのが見下ろせる。
塔は開口部が大きく、数本の柱がある以外はガランとしていて、外周に螺旋状の階段がついていた。
階層入り口からスロープの延長の形でその塔の天辺に渡る通路が続いている。
「この通路、途中で崩れたら余裕で死ねるな……まあ、《フライ》があるんだけど。……高所恐怖症の人いる?」
「我は平気じゃ」
「だ、大丈夫……だと、思います」
「へーきだよ~!」
いつものように階層入り口を塞ぎ、塔の天辺に向かう時もアニタは楽しそうに歩き、スキップまでしている。
「こらこら、風も吹いているんだから注意しながら進むんだ」
「スリル~すりる~」
楽しそうなアニタだったが、その軽い身体が突発的な強風に持っていかれて宙に舞い上がった。
「きゃ~! わ~~~~! おねえちゃ~ん! きゃ~!」
アニタはなぜか楽しそうに叫んでいる。
「アニター!!」
「言わんこっちゃない……」
アニタを助け出して、ようやく天辺に辿り着いたら、通路がガラガラと崩れ落ちた。
「この階層は、これで1階層か? この塔の1階1階が階層1つ分なのか……わからん!」
そうこうしていると、キキキキキキキキキキキと甲高い鳴き声を発しながらバサバサと大きな蝙蝠が大群で、列をなして飛んでくる。
浅層にいたバットより明らかに大きいのでバハムートの記憶を探る。
「え~っとあれは……、確か……テンガロンバットだな。超音波を発して感覚を狂わせてくるヤツだ」
全員に《ウィンドフィルム》を掛け、超音波対策……のつもり。
「あと、ぶっつけ本番だけど皆に《フライ》を掛けるから、飛んで戦うように」
「ふむ。よかろう!」
「えー! それは怖いです~」
「やった~! とぶとぶ~!!」
ミケとアニタはもう飛び立ったが、アニカは怖いようだ。
「アニカ、大丈夫だよ。何かあっても俺がいるし、不安なら塔の範囲から出なくていいからやってみよう?」
「は、はい~~、やってみます~」
足をガタガタと震わせながらも、アニカは気丈に振舞っている。
アニカは塔の範囲から出ないように低空に飛び、ミケの雷に打たれて落ちて来たテンガロンバットにトドメを刺していく。
アニタは時折錐揉み状態になりながらも楽しそうに戦っている。
俺がアニカを見守っている間に、テンガロンバットは片付いた。
「魔石、何個か落ちちゃった~」
「降りればあるんじゃないか? 後で拾えば大丈夫大丈夫!」
落ち込むアニタを慰めていたら、階段の反対側の床からガラガラと崩れ始めた。
「どどどどど、どうしましょう? ユウトさん!」
「はいはい、慌てないで、飛んでるんだからゆっくり下の階に降りればいいんだよ」
アニカの手を取ってやってゆっくりと降りると、今度はカラス――ビルクロウの大群がやってきた。
「デビルクロウっていうモンスターで、足に握っている袋を潰すと、砂が撒き散らされて眼潰しになる。あとウィングカッターと言って切れる羽根を飛ばしてくるぞ」
「ふんっ! そんなもの我には当たらん当たら――っ! なんじゃっ!?」
余裕ぶっているミケに砂が撒かれたが、《ウィンドフィルム》が生きているので事なきを得た。
「ぐぬぬっ! 許さん!! おのれ~、待て~い!! 成敗してくれる!」
「あっミケちゃん! アニタもいく~!」
ミケとアニタが始めてしまった……
「……アニカは、低くてもいいからスピードを出して飛んでみよう。敵の攻撃は防いでやるし、風の膜もあるから」
「お、お願いします」
アニカも徐々に慣れてきて、スピードは出せないが動きが滑らかになって、ミケの落としたデビルクロウにトドメを刺して回っている。
ミケも怒ってる割にちゃんと加減出来ているじゃないか。
そして、同じ流れで床が崩れてきたので、下の階に行く。
今度はスパイクホークという鷹モンスターの大群で、鋭い爪での斬撃のみならず、空中から爪を打ち込んで来る狙撃の様な攻撃もある。
ここまでのモンスターと同様、数だけが厄介な要素できちんと注意を払っていれば問題の無い敵だ。
「数を減らしておくから、アニカも飛んでいって戦ってみろ」
《グラビティコントロール》で塔の円周の範囲内のスパイクホークを床に貼り付け、太刀でズボズボ刺して数を減らす。
アニカは、モンスターの数が減ってかなりスペースの開いた空へと飛び出した。
「お姉ちゃ~ん! こっちこっち!」
随分制動が安定したアニタが、アニカをフォローしつつ狩って行く。
俺は塔から逸れた魔石をキャッチする係を仰せつかった。
「ちゃんと取っててよ~お兄ちゃ~ん!」
「はーい」
「ふん、他愛も無い。後はあの2人で十分じゃろ」
ミケも残りを2人に任せてキャッチ係を引き受けている。
もう1階降りると、またも大群。
霧を発生させる羽根を持ち、敵の視界を奪うフォグコンドルという鷲モンスターだ。
フォグコンドルの発生させる霧は俺の風属性魔法で晴らしてやると、もはやただの大きいコンドルとなる。
「おお、アニカもスピードに乗れるようになってきたな」
「うむ。余裕が出てきて長柄の武器の特徴も活かせているぞ」
薙ぎ払いで囲まれることを防いだり、背後からの攻撃には石突き部分を有効に使って一対多の戦いにならないように立ち回りをしている。
ミケも俺も引き続き魔石キャッチ係をしている。
時間は掛ってしまうが、いずれにせよ戦闘力や対応力を上げるのに必要な事なので2人にやらせている。
「ユウトよ、そろそろ昼時じゃろ? 今日は何を作ってくれるのじゃ?」
「ああ、そのことなんだけどな、下りる度にすぐモンスターが出てくるだろ?」
「そうじゃが?」
「倒したら床が崩れる、下りる、出てくる。これって……もしかして休む暇ないんじゃないのかなって……」
「ふぁっ!?」
知りたくない事実を突き付けられたミケは、ワナワナと震えている。
「ぐ~、大事な食事を摂らせんつもりか……許せん! 我が下まで全て倒してくれる!!」
今にも飛びかかって行きそうな勢いである。
「我が仕留めてやる~! フーッ、フーッ」
「待て待て待て、ストップストップ! 2人の為だから我慢我慢」
「些少ですが、お納めを」
そっとケーキを1つ渡す。
「お、おう。そうじゃの。危うく取り乱しそうになったのじゃ」
……そうに? なった?
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