結婚を控えた公爵令嬢は、お伽噺の“救世の神獣”と一心同体!? ~王太子殿下、わたしが人間じゃなくても婚約を続けてくださいますか?~

柳生潤兵衛

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第1章 ワンちゃんに変身しちゃう問題、解決?編

17.お話をしましょう? キアオラさん

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 ヒュウっと変身が解けていく。
 ワンちゃんに見られながらっ!

 裸のわたしがワンちゃんを見ると……

(えー! なに? これ、なに?)

 といった感じで、目をキラキラさせながら驚いているのが分かる。
 尻尾のフリフリも強くなっちゃってる!

「こらー! ズレる! 布がはだけちゃうから、尻尾は振らないで!」

 布から頭を出して、強めに押さえながらドアの方を見ると――
 エドがわたしの方に振り向きたそうにウズウズしているのが見える。
 その間も、ワンちゃんは尻尾をブルンブルン振っている! ズレちゃってるぅ!

「エド! ゼッタイ振り返ってはダメよ?」
「わ、分かっているよ」

「あ! あと、このワンちゃんが遊びたがっているから、連れて帰る時に遊びながら帰るわね?」
「えっ!? ……」

 ワンちゃんの尻尾のせいでほぼほぼはだけてしまっている布に潜って、急いでお酒を被る。

 ヒュウ! フワー……

(ふうー)
(お姉さん! 今の遊びはなあに? ボクもやりたい!)

 違うのよ、これは遊びじゃないのよ……


 兵士の治療や、捕らえた男の応急処置を終えて、隠れ家まで帰還することに。

 街道までは、歩いて行かなければならないのだけれど――

(あはは! 待てぇー!)
(はやい速いっ! もうちょっとゆっくり来てー!)
(お姉ちゃん! 早く逃げないと追いついちゃうよ~?)
(きゃー!)

 わたしは『追いかけっこ』と称して、ワンちゃんから散々追いかけ回されたわ……

 本当は、布を玉みたいに丸めた物や動物の骨なんかを、無傷なエドやシドに投げてもらって、ワンちゃんが取ってくる遊びをさせたかった。
 でも、体力が衰え過ぎていたキアオラを歩かせるわけにはいかず、脚を壊したテーブルの天板に乗せて運ぶのに二人が割かれたので仕方ない……

 負傷をおして歩いている兵士達は、王太子にその様なことをさせて恐縮しきりだったけれど、過酷な環境下にいて強烈な臭いを放っているお爺さんを、直接おぶるよりはマシよね……

 だから、ワンちゃんの遊び相手はわたしが一人で務めているの。
 ……持つかしら? わたしの体力。


 何とか街道まで辿り着いて少し待っていると、数台の馬車が到着。
 馬車が来るまでの間もワンちゃんから追いかけ回されていたわたしは、息も絶え絶えに真っ先に客車に乗り込む。

(えー! もっと走らないの~?)
(ぜぇっぜぇっ! も、もう無理ぃー)

 兵士の人が用意してくれたお水……おいしっ! 生き返るぅー。


 隠れ家に着くと、お父様が鬼の形相でわたしのことを待っていた……
 これは怒られるわ……
 トボトボとお父様の元へ。後ろからはワンちゃんも尻尾をフリフリついてくる。

 事情を知らない兵士達がいる手前、お父様は大っぴらには怒らないけれど、首輪が装着されました……わたしだけ!
 アンもお父様の後ろに控えていて、着替えを持って来てくれたようね。

 屋敷に入ると、キアオラはお風呂に入れられることに。
 エドが、ついでにワンちゃんも洗うように指示していた。まあ、ワンちゃんも野性味あふれるニオイがしていたものね……
 ――と思っていたら、わたしまで連れて行かれそうになって、お父様やエドが慌てて止めてくれた。
 アンがクスクス笑っていたのは、しっかり見ていましたからねっ!


 キアオラは、入浴の際も本を手放そうとはせず抵抗したため、湯殿内の手の届くところに本も持ち込むことで納得させたよう。
 お風呂に入れられたキアオラは、身体の様子もくまなく検査された。

 彼は、体力の低下が著しく、事情聴取は後回しにして体力の回復を図ることに。
 そうよね……彼は監禁被害者であり、わたしとエドの問題解決の鍵になる人物ですもの。
 無理をさせて余計体調を崩されたら解決が遠のくものね。

 そう決断される頃には、わたしの変身が解ける時間になり、隠れ家の二階の個室で人間の姿に戻る。
 アンと共に着替えて部屋を出ると、お父様が腕組みしながら立ち塞がって「オリヴィア……」と、目に怒りを湛えていらっしゃる……

 別室で「勝手に無茶な事をしおって!」と、こってりとお叱りを受ける。
 ついでにエドからも小言を頂戴する。

「でも、おかげで犠牲者を出さずにキアオラを確保できた。ありがとう。卿も叱るのはこれくらいにしてあげて下さい」
「殿下……」

 これ以上長く絞られなくてよかった……。助け舟ありがとう、エド。


 ワンちゃんには、エドにお願いして約束通りお肉のご飯をあげると、美味しそうに食べてくれたわ。
 キアオラも、当面の間はこの隠れ家で静養に努めてもらう事になった。

 まだ追跡組の動向が分からないけれど、私達に出来ることは無さそうなので、お父様と一緒に王都に戻る。
 ワンちゃんも連れ帰って、飼う事にしました。

 帰りの車中でエドと相談して、この子の名前を『ブッチ』にする。
 だって、この子ったら尻尾を千切れそうなくらい振るんですもの……

 数日後、追跡班が突き止めた組織のアジトに一斉攻撃が行われたそう。
 捕縛した人員が多かったために、“王家の隠れ家”で拘留・聴取が行われることになった。
 キアオラを一緒にするわけにはいかないので、公爵邸の小屋で預かることに。


 でも……少し体力が回復してきたキアオラ翁から、エドやシドが話を聞こうとしても、頑として口を開かないらしい。
 恐らくこの十年間、組織の男連中から酷い目にあわされ続けてきたのでしょうから、エドやシドのことも怖いのでしょうね。

 という事で、わたしの出番かしら?

 ブッチを連れて、彼のいる小部屋へ。

「お話をしませんか? キアオラさん」
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