3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

文字の大きさ
116 / 133
エピソード3

フェイタルフェイト14/31

しおりを挟む
「うわー……ワイバーンのやつ、何羽食ったんだよ。えぐいなー。しかし空中でも捕食できるとは実に器用なやつだ……」

 音は聞こえないが大型の翼竜、ワイバーン(仮)が獲物の羽を両手でむしる様子に、俺の脳内ではブシュル、ブシュルという効果音が補完された。
 それくらいにリアルな野生動物の弱肉強食の世界に俺は釘付けだった。

『マスター、そろそろ三時のおやつの時間ですよ』

「おっと、もうそんな時間か。そういえば、いつもならミシェルンがお菓子とコーヒーを運んでくるはずなのに……」

 おそらくはミシェルさんに付き合っているのだろう。あの二人は仲良しだからな。
 一生懸命なのはいい傾向だが根を詰めてもしょうがない、そんな時は周りが支えないとな。

「よし、休憩にしよう。ミシェルさんは倉庫に居るよな」

『はい、そのようです。ミシェルン……調理ロボットだというのに仕事を放棄するとは感心しませんね、注意しましょうか?』

「いやいや、それはいいよ。おそらくミシェルさんに付きっきりなのだろうから。
 こういう関係は尊重したい。技術者はチームワークがあってこそだ。
 それに彼女たちは一生懸命で時間を忘れてるんだろう、だから俺みたいな暇な奴が休憩に誘うのが丁度いいのだよ。
 ちょっと様子見がてらに声を掛けてくるよ」

 ふむ、頭を使ったときは甘いチョコレートなんかがいいかもな。
 そんなことを思いながら、倉庫に向かう。

 扉が開くと、まるで工事現場の様な音が聞こえてきた。

『警告! そのデバイスは地上攻撃用の兵器を搭載しています。シースパーダーは海洋調査ロボットとして開発されました。
 そのようなオプションパーツの装着についてはコジマ重工のコンプライアンス委員会において――』

「うるさいっす! 安全装置の解除コードを喰らうといいっす! ぐへへ、シースパイダーは大人しく俺っちの改造を受け入れるっすよ」

 うーむ、なんか凄い場面に遭遇してしまった。
 ロボットがロボットを改造するシーン。
 いや工場でロボットが製品を作るのは昔から見ている。でも喋るロボット同士ってのはちょっとショッキングなだけだ。

 ちなみにシースパイダーには人工知能が無い。あくまで機械といった位置づけだ。
 オプションパーツはサードパーティー製でコジマ重工と提携している軍事会社が開発した物のようだった。

 軍用品の使用感をレポートしてくれって無茶振りが過ぎるが、まあ使わなくても実際に装備して動かすだけでも充分レポートにはなるだろう。

「やあ皆、随分と精が出るなー。だが君達、もう三時だし休憩の時間だぞー」

「アイアイさーっす。でも俺っちはコジマ重工製の――」

「ベストセラーお掃除ロボットなんだろ? 休憩が必要ないのは分かるけど、まあ何事もほどほどにな。ところでミシェルさんは居るかい?」

 シースパイダーのハッチが開き、中からミシェルさんが顔を出す。

「あ、はい、ここに居ます。でも調整に少し手こずっていまして……脳波パッシブセンサー、ミシェルンちゃんと一緒に調整してるんですけど。
 人間と他の生物との脳波の識別が上手く行かないんですよ。いえ、識別自体は出来ているんですけど。
 地上のデータとの整合性が取れなくてですね。うーん、何がいけないんだろう……」
 
「そうなのですー。脳波パッシブセンサーは問題ないはずですー。もう、地上にいる知的生命体は千人でいいと思うのですー」

「おいおい、ミシェルン。やっつけ仕事はよくないぞ、地上にいる人間は百人だよ。
 実は恐竜は人間並みに頭がいいってんなら話は別だけどな。
 それよりミシェルさん、休憩時間ですよ。おやつを食べましょう、ミシェルン準備よろしく!」

「はいですー。今日は準備が出来ませんでしたので作り置きで申し訳ないですが、チョコレートのバームクーヘンでどうですー?」

「お! いいね、そういうので良いんだよ。頭を休めるには甘いお菓子に苦いコーヒーこそが至高なのだ。
 じゃあブリッジまで運んでくれ。
 ちなみにミシェルさん、約束したよね。ちゃんと休憩は取ることって」

「……はい、ごめんなさい」

 ◇◇◇

 うーん甘い、このバームクーヘンは脳に突き刺すような甘さがある。
 これが本場ヨーロッパ基準なのか……よく分からないが濃く抽出されたエスプレッソの苦味と相まってこれはこれでよい。
 疲れが一気に吹き飛ぶようだ。

「しかし、驚いたよ。ミシェルさんはロボットに興味があるようだね。将来は科学者になりたいのかい?」

「いいえ、そこまで具体的な事は考えてないですし。高校中退の私だと大学進学は無理かなと……それに私は前科がありますし」

「いや、それは関係ないよ。ミシェルさんは裁判の結果、ボランティア活動をすることで罪は無くなるんだ。だからここでの活動が終わったら次を考えなきゃいけないんだよ」

 そう、人間誰でもやり直すことができる。もっともそれは理想論で、そうではない事例もあることは知ってる。
 でもミシェルさんなら、やり直すことは絶対にできると俺は確信している。

「そうですね……。ロボットは好きです。ミシェルンちゃんとも仲良くなれたし、専門的に勉強すればもっと仲良くなれるかも……」

「うん、その通りだ。もし、その気があるなら俺はミシェルさんの支援を約束するよ」

『はい、スズキ財団は大学へ多額の支援金を毎年おこなっております。その血縁者であるマスターが推薦すれば、ほぼフリーパスでしょう』

「おいおい、まるで俺が裏口入学をあっせんしてるみたいだぞ! もちろんミシェルさんの学力が一定基準に達しているのが条件だけどね」

 まあ、俺としては裏口だろうが協力できるなら何でもするつもりだがな。

『うふふ、ということです。お勉強頑張ってくださいね。ちなみに理系女子はモテモテらしいので頑張ったら頑張っただけの恩恵はあると思いますよ?』

「あ、そういうのは興味がないです……。でも勉強は頑張ります!」

 ミシェルさんの表情は分かりやすかった。
 彼女はこれからの未来に向けて希望を見出したのだろう。

 福祉事業の喜びとはまさにこれなのだ。
 うん、俺だって確かに頑張っていると、そう実感できる瞬間だ。

『……さてと、マスターはこれからお仕事ですよ? 溜まってた報告書の作成をしないといけません』

「お、おう。そうだったな。地上の監視はミシェルさんにお願いしようかな」

「はい! 了解しました!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

処理中です...