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エピソード3
フェイタルフェイト18/31
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地上に降りる。
時刻は午後4時を過ぎた頃、日没にはまだはやい。
だというのに、森の中は随分と暗かった。
それもそのはずで、森全体を覆いかぶさるように空は樹木でふさがれて、陽の光は地面には届かないのだ。
【警告! 現在、霊子レーダーがオフになっております。目視での行動は危険です!】
「たしかに、視界が悪すぎるな。ミシェルンよ、ライトをつけてくれ」
「はいですー」
前方のライトが点灯するが、草木をライトアップしただけで光は遠くまでは届かない。
「全然見えないな。ミシェルさん行けるかい?」
『はい、問題ないです』
問題ないか……フルダイブモードのミシェルさんには見えているのか、あるいはゲーマーの感というやつだろうか。
「よし、じゃあ。無理せずに、でもできるだけ急いで行こう」
俺達は樹齢100年はゆうに越えるだろう大木の隙間を高速で移動する。
さすがはシースパイダー。
車輪では出来ない三次元的な動きで、木々の間を縫うように前に進む。
ミシェルさんはさすがの操縦技術である。廃ゲーマーであった事が役に立ったようだ。
人間何があるかは分からない。それがゲームのスキルだったとして、突き詰めれば何かの役に立つのだ。
そういえば、レッドドワーフの装甲車は車輪だった。この地形だとさぞ苦戦しただろう。
『イチローさん。間もなく現場に到着します!』
そこは少し開けた岩場であった。
上空からはよく分からなかったが、そこには木々は無く青空が少しだけ覗いていた。
だが、数十メートルの大木がそびえるジャングル。上空からでは発見出来なかったのだろう。
【警告! 不適切な映像が確認されました。フィルターをオンにします】
パパパッ!
シースパイダーのモニター画像に瞬時にモザイク処理が入る。
そのモザイクは地面全体に広がっていた。
……だが、そのモザイク画像は、全体的に赤色であったために察しはつく。
「うっ、これは……ミシェルン。至急、霊子通信をアマテラスにつなげて!」
これはもう環境保護のレベルではない。俺の独断ではあるが、命よりも重要な環境保護活動などないのだ。
「了解ですー。霊子通信、アマテラスにつなぎますー。……ミシェルさん……大丈夫ですー?」
『うん、大丈夫。ミシェルンちゃん……ありがとう。でもまだ生きてる人は居るはずです。脳波パッシブセンサーの反応は?』
「はい、現在5つですー。洞窟の入り口から少し離れている場所に集まっているみたいですー」
「……なあ。ミシェルンよ。脳波の反応が無いからって、必ず死んでるわけじゃないよな……」
「うーん。私は医療ロボットではないですから、死の定義について詳しいことは分からないですー。
けど、一般論として意識が無くても、脳が生きてれば反応はあるはずですー。逆に脳が死んでいれば体が生きていても反応は無いのですー。
あるいは意図的に隠している場合はその限りではないですけどー。
例えばブーステッドヒューマンなどの、特殊な処置をされている場合は脳波の隠ぺいは可能ですー」
レッドドワーフのメンバーは全員ブーステッドヒューマンではなかった……。
「……そうか。情報ありがとうな……。アイちゃん! 聞こえてるかい?」
モニターにはアマテラスの画像が写る。霊子通信により情報のやりとりが可能になったのだ。
『ええ聞こえていますよ。霊子通信を使ったということは……そういうことですね。マスター直ぐに撤退を!』
「いや、まだ近くに生きている人たちがいるんだ。彼等だけでも助けたい」
『……了解しました。しかし戦闘状態だった場合は介入せずに撤退してくださいね。
ミシェルさん、私に命令できる権限はないので、これはお願いです。私としてはマスターの命が最優先ですから。もちろん貴女の命もですよ? 無茶はしないでください』
『わかりました。最善をつくします』
脳波の反応は5つ、まだ間に合うかもしれない。せめて彼等だけでも。
シースパイダーは反応のあった洞窟入口付近に急ぐ。
あった! 洞窟の入り口から数十メートル離れた場所にレッドドワーフの装甲車が一台。
故障しているのだろうか。エンジンがかかっている様子はない。
装甲車を囲う形で団員の人達が警戒態勢を取っている。その側で怪我人の介助をしている団員の姿があった。
服装でわかる。あれは団長さんだ。
……しかし、脳波パッシブセンサーには、怪我人からの反応は出力されていなかった。
彼等はシースパーダ―の接近に一斉に銃口を向けた。
『お待ちください! 我々はアマテラスの者です。救助にきました!』
団長さんはさっきまで怪我人だった団員の目を閉じると、ゆっくりと立ち上がる。
「助かった……のか……。くそ、俺は…………情けない」
「ミシェルン! 周囲に敵はいるか?」
「いないですー。脳波の反応は彼等五人以外にはありませんですー。
霊子レーダーによると周囲数キロメートルの範囲で無数の恐竜がいますが……現状は我々には敵意は無いようですー。まさに野生動物といった感じですー」
「よし、ミシェルさん、シースパイダーはその場で待機。周囲の警戒を頼む、武器の使用は任せた。
もし恐竜が襲ってきたら容赦なく撃ってくれ。……もうここは自然保護とか、そういう状況じゃないと思うから。
ごめん。嫌な気持ちになるかもしれないけど人命がかかってるんだ、たのむ!」
『はい……。理解しています。今は一人でも多くの人を助けること……ですね』
「おう! その調子! よし、ミシェルンよ。ハッチを開けてくれ」
「船長さん、ダメですー。外は危険ですー。私の判断では出来ませんですー。アイさんにもその辺はきつく言われているですー」
たしかにな、逆の立場なら俺だってそうする。
だが……。
「アイちゃん! たのむ! 今、外には助けないといけない人達がいるんだ!
医療キットだってあるし、俺だって応急処置くらいはできる。今やらないと俺は一生後悔するんだ! たのむ! 俺を男にしてくれ!」
『ふぅ……。そこまで言われたら私は何も言えません。……マスター。どうか無理をせずに』
シースパイダーのハッチが開く。
時刻は午後4時を過ぎた頃、日没にはまだはやい。
だというのに、森の中は随分と暗かった。
それもそのはずで、森全体を覆いかぶさるように空は樹木でふさがれて、陽の光は地面には届かないのだ。
【警告! 現在、霊子レーダーがオフになっております。目視での行動は危険です!】
「たしかに、視界が悪すぎるな。ミシェルンよ、ライトをつけてくれ」
「はいですー」
前方のライトが点灯するが、草木をライトアップしただけで光は遠くまでは届かない。
「全然見えないな。ミシェルさん行けるかい?」
『はい、問題ないです』
問題ないか……フルダイブモードのミシェルさんには見えているのか、あるいはゲーマーの感というやつだろうか。
「よし、じゃあ。無理せずに、でもできるだけ急いで行こう」
俺達は樹齢100年はゆうに越えるだろう大木の隙間を高速で移動する。
さすがはシースパイダー。
車輪では出来ない三次元的な動きで、木々の間を縫うように前に進む。
ミシェルさんはさすがの操縦技術である。廃ゲーマーであった事が役に立ったようだ。
人間何があるかは分からない。それがゲームのスキルだったとして、突き詰めれば何かの役に立つのだ。
そういえば、レッドドワーフの装甲車は車輪だった。この地形だとさぞ苦戦しただろう。
『イチローさん。間もなく現場に到着します!』
そこは少し開けた岩場であった。
上空からはよく分からなかったが、そこには木々は無く青空が少しだけ覗いていた。
だが、数十メートルの大木がそびえるジャングル。上空からでは発見出来なかったのだろう。
【警告! 不適切な映像が確認されました。フィルターをオンにします】
パパパッ!
シースパイダーのモニター画像に瞬時にモザイク処理が入る。
そのモザイクは地面全体に広がっていた。
……だが、そのモザイク画像は、全体的に赤色であったために察しはつく。
「うっ、これは……ミシェルン。至急、霊子通信をアマテラスにつなげて!」
これはもう環境保護のレベルではない。俺の独断ではあるが、命よりも重要な環境保護活動などないのだ。
「了解ですー。霊子通信、アマテラスにつなぎますー。……ミシェルさん……大丈夫ですー?」
『うん、大丈夫。ミシェルンちゃん……ありがとう。でもまだ生きてる人は居るはずです。脳波パッシブセンサーの反応は?』
「はい、現在5つですー。洞窟の入り口から少し離れている場所に集まっているみたいですー」
「……なあ。ミシェルンよ。脳波の反応が無いからって、必ず死んでるわけじゃないよな……」
「うーん。私は医療ロボットではないですから、死の定義について詳しいことは分からないですー。
けど、一般論として意識が無くても、脳が生きてれば反応はあるはずですー。逆に脳が死んでいれば体が生きていても反応は無いのですー。
あるいは意図的に隠している場合はその限りではないですけどー。
例えばブーステッドヒューマンなどの、特殊な処置をされている場合は脳波の隠ぺいは可能ですー」
レッドドワーフのメンバーは全員ブーステッドヒューマンではなかった……。
「……そうか。情報ありがとうな……。アイちゃん! 聞こえてるかい?」
モニターにはアマテラスの画像が写る。霊子通信により情報のやりとりが可能になったのだ。
『ええ聞こえていますよ。霊子通信を使ったということは……そういうことですね。マスター直ぐに撤退を!』
「いや、まだ近くに生きている人たちがいるんだ。彼等だけでも助けたい」
『……了解しました。しかし戦闘状態だった場合は介入せずに撤退してくださいね。
ミシェルさん、私に命令できる権限はないので、これはお願いです。私としてはマスターの命が最優先ですから。もちろん貴女の命もですよ? 無茶はしないでください』
『わかりました。最善をつくします』
脳波の反応は5つ、まだ間に合うかもしれない。せめて彼等だけでも。
シースパイダーは反応のあった洞窟入口付近に急ぐ。
あった! 洞窟の入り口から数十メートル離れた場所にレッドドワーフの装甲車が一台。
故障しているのだろうか。エンジンがかかっている様子はない。
装甲車を囲う形で団員の人達が警戒態勢を取っている。その側で怪我人の介助をしている団員の姿があった。
服装でわかる。あれは団長さんだ。
……しかし、脳波パッシブセンサーには、怪我人からの反応は出力されていなかった。
彼等はシースパーダ―の接近に一斉に銃口を向けた。
『お待ちください! 我々はアマテラスの者です。救助にきました!』
団長さんはさっきまで怪我人だった団員の目を閉じると、ゆっくりと立ち上がる。
「助かった……のか……。くそ、俺は…………情けない」
「ミシェルン! 周囲に敵はいるか?」
「いないですー。脳波の反応は彼等五人以外にはありませんですー。
霊子レーダーによると周囲数キロメートルの範囲で無数の恐竜がいますが……現状は我々には敵意は無いようですー。まさに野生動物といった感じですー」
「よし、ミシェルさん、シースパイダーはその場で待機。周囲の警戒を頼む、武器の使用は任せた。
もし恐竜が襲ってきたら容赦なく撃ってくれ。……もうここは自然保護とか、そういう状況じゃないと思うから。
ごめん。嫌な気持ちになるかもしれないけど人命がかかってるんだ、たのむ!」
『はい……。理解しています。今は一人でも多くの人を助けること……ですね』
「おう! その調子! よし、ミシェルンよ。ハッチを開けてくれ」
「船長さん、ダメですー。外は危険ですー。私の判断では出来ませんですー。アイさんにもその辺はきつく言われているですー」
たしかにな、逆の立場なら俺だってそうする。
だが……。
「アイちゃん! たのむ! 今、外には助けないといけない人達がいるんだ!
医療キットだってあるし、俺だって応急処置くらいはできる。今やらないと俺は一生後悔するんだ! たのむ! 俺を男にしてくれ!」
『ふぅ……。そこまで言われたら私は何も言えません。……マスター。どうか無理をせずに』
シースパイダーのハッチが開く。
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