3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

文字の大きさ
122 / 133
エピソード3

フェイタルフェイト20/31

しおりを挟む
 ゴンッ!

 後頭部に衝撃が走る。

 大木の幹にぶつかったのだろう。
 俺は突然の爆発に吹き飛ばされたが、大木おかげでそれほどの距離は飛ばされていないようだ。

「痛たた……。しかしユニクロが無ければ俺は確実に死んでたな……いや、俺はもしかしたら死んでるんだろうか?」

 俺の頭は妙に冷静だった。おそらくはユニクロ内にリラックス効果のある薬剤が循環したんだろう。

『マスター! ご無事ですか! 返事をしてください!』

 ふふ、AIであるアイちゃんの方が取り乱してるみたいだ。

 だが、さすがにあの爆発だ。果たして俺は無事なのだろうか……。

 あまりの出来事に俺の頭はグルグル回る。

 恐る恐る自分の身体をみる。
 ……五体満足だ。

 さすがはユニクロだよ……。
 思えば俺はこの宇宙服に何度も助けられたっけ。

「アイちゃん無事だよ。ちなみに今の爆発って?」

『ふぅ、マスター、とりあえずは良かったです。
 ……おそらくは遠距離からの砲撃でしょうね。
 着弾から想定される砲弾の威力から、敵は大型船の可能性があります……。
 マスターは最優先でシースパイダーに合流。そして速やかにアマテラスに帰還してください。合流ポイントはここから約20キロメートル先の塩湖に――』

 …………。

 アイちゃんの声が途絶える。

「アイちゃん? どうした?」

『おいおい! アースイレブンで霊子通信は条約違反だろうが!』

 何か別人の声がノイズ交じりに聞こえた。

 ズゥゥゥン! 

 続いて、遠くから聞こえる轟音はまるで雷のように思えた。

 上空に見えるアマテラスは突然爆発炎上。
 その直後、バイザーに見える映像は切り替わり本来の常緑の木々に変わった。

 霊子通信による上空の視界が閉ざされたのだ。

「アイちゃん! 霊子通信がオフになってるぞ! どうしたんだ?」

『ははは! 察しが悪いな、さてはお前は素人だな?
 説明してやるよ、俺様はエンターテナーだからな!
 よく聞けよ? 俺様の名はキングアーサー級、惑星強襲揚陸艦モードレッド! 察しの悪いお前等に説明するとだな。
 この大気圏下の霊子通信は俺様が乗っ取ってやったぜ!
 アマテラスが遥か上空にいる限りは通信は不可能ってこった。
 さてと、俺様からプレゼントだ! お前等に特別に見せてやる。
 俺様の最強装備クラレント・46センチハイパーレールガンの威力をな!』

 再びアマテラスの映像が映る。
 ジャミングされているのだろう、おそらくはユニバーサルクロークのバイザー越しに見える映像はモードレッドから流されている。

 無数の砲撃がアマテラスを襲う。そして瞬く間に爆炎に包まれる。
 だが、アマテラスの船体は無事のようだ。

『はは! さすがに大戦艦アマテラス様だぜ! 大気圏内でも装甲は健在のようだ。
 だが、どうだ? 11次元効果バリアは大気圏内だと1パーセントの出力も出せないんだろ?
 さっさと宇宙に逃げるのが得策だぜ?』

 突如現れた、惑星強襲揚陸艦モードレッド。
 船体の大きさはアマテラスの半分以下だが、状況は最悪だ。

 一方的にアマテラスへ砲撃を繰り返している。

「おい! モードレッドとやら、何やってんだよ! これは全部お前の仕業か?」

『おう、さすがは宇宙戦艦アマテラスの艦長様だ、なかなかに肝が据わっている、気に入ったぜ。そんなお前には特別に質問に答えてやる。
 だが、残念だったな。俺様だって計画の一部なんだよ。
 特別に教えてやるとな……そう、これは戦いだ! 俺様とお前等で戦争するんだよ! 俺様としては今こそ戦艦アマテラスを討ち取って勝ち星をあげたいところだ。
 戦闘艦として産まれた俺様にとってはこれ以上の名誉は無いだろ?』

「お前は……いったい何を言ってるんだ! ……アイちゃん! 聞こえてるか!」

『……マスター…………。とにかく逃げて……。マ……ック様達は……います……』

『おっと、霊子通信は無しだぜ? 俺様の仕事はお前等とアマテラスの分断だからな、せいぜい頑張れよ。俺様もこれから大戦艦様とのバトルで忙しいからな!』

 モードレッドから再び砲撃が始まる。
 アマテラスは成層圏から更に上空へ移動しているようだ。

 だがモードレッドの砲撃を喰らい、また爆炎をあげる。
 大気圏内ではバリアーが完全でないのか、あるいはモードレッドの主砲、クラレント・46センチハイパーレールガンとやらが余程強力だったのか、アマテラスの船体には明らかなダメージがあった。

 装甲か、船内の設備なのか。ボロボロとアマテラスの船体から何かが落下しているが確認できた。

 その中にはコンテナなどの補給物資も含まれる。
 格納庫がやられたのだろうか。

 ――――ッ!

 俺は見てしまった。
 コンテナに捕まったまま落下する青いボディーの八本脚のロボットを……。
 その胴体は炎に包まれながらも見覚えのあるコンテナを守るように落下していく。

 ……ああ、俺が居なくなったら爆破してと言ったっけ……。
 サンバ君は俺の言ったことを実行しようとして倉庫にいたのか……。

 俺が余計なことを言ったがために……。

 お掃除ロボットのサンバは軍用ではない、当然ボディーに装甲は無い。
 モードレッドの砲撃の影響か、あるいは炎によるダメージか。
 彼が日ごろから自慢していた八本脚が次々と折れてちぎれ、空中に四散していく。 

 くそっ! サンバ君が!
 いや、落ち着け、サンバ君は量産型ロボットだ。
 バックアップだってある。

 後でコジマ重工に新しい機体を発注すれば良い…………くそっ!

 俺は初めてマードックさんの気持ちが理解できた。
 バックアップだからといって。はい元通りにはならない……。いや、この気持ちは俺だけなのだろうか……。

 ……いや、今は冷静になれ。この中では俺が最弱なんだから、自分の事を最優先に考えないと。
 それにアマテラスは元宇宙戦艦。その程度のダメージは想定された設計になっているはずだ。

 ……なら俺のやることは一つ、アイちゃんの言うとおり、逃げることだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...