3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

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エピソード3

フェイタルフェイト27/31

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「サンバ君! ああ、良かった! 俺は……あの時……本当に……」

 感情が溢れだし言葉にならない。

 サンバ君は俺の背中を優しくさする。

「くっ……。船長さんの気持ちは受け取ったっす。でも再会の抱擁は後でゆっくりとするっすよ。
 今は連中の対処をしないといけないっす!」

「……そうだった。今はそれどころではなかった」

 それに、今のサンバ君の見た目は美少女アンドロイドである。
 そんな彼に抱き着いてしまったのだ。俺は途端に照れくさくなってしまった。

「さてと、どしどしと近づいてきてるっすね。……しかし、敵は随分馬鹿っぽいっすね。
 鍾乳石を砕きながら通る意味が分からないっす。
 迂回すればいいのに、まあ、そうしたら船長さんはとっくにミンチでしたっすね」

「あ、ああ。その通りだ。おかげで何とか生き延びることが出来た。
 でも大丈夫か? あいつ等かなり強そうだぞ?」

「ぐへへ、問題ないっす。
 俺っちの今の身体は軍用アンドロイドの中でも白兵戦仕様のアサルトドールっすからね。
 単純な戦闘力だとマリーさんより強いっす。
 ……しかし、船長さん。これ普通に武器の密輸っすよ? どこで買ったっすか?」

「うっ……。それを言われると何も言い訳ができない……」

「まあ、それはいいっす。結果オーライっす。
 しかし、船長さんもコジママインドがあるっすね、俺っちは嬉しいっす!」

「コジママインドね……こんなこともあろうかと! ってやつか?
 確かにな、何事も備えあれば憂いなしってやつか」

「その通りっす!」

 ドガーン!
 鍾乳石の砕ける音。

「ぶおおおおおお!」

「おっと、さっきまで鍾乳石に引っ掛かっていた木偶人形どもがやってきたっす。
 ほんと、馬鹿っすね、ちょっと屈めばいいだけなのに……では、やるっすよ?」

 サンバ君は片手に持った日本刀の様な物を鞘から引き抜く。

 黒髪セーラー服の美少女が日本刀を構える姿はなんかこう、俺の魂を揺さぶる魅力がある。
 このジャンルはもはや古典レベルなのか、男心をくすぐるというか、なぜかぐっとくるのだ。

「そういえば、付属品に日本刀があったよな。たしか……」

「ぐへへへ。これはSK-E48近接戦闘用超電磁警棒・改。
 別名、超振動カタナブレードっす。さて、お掃除開始してやるっすよ!」

 水平に構える日本刀……のような警棒であるが、美しい。洞窟内の薄明りに反射して刀身が怪しくきらめく。

 そして、それを構えるアンドロイドの横顔も儚くも美しい。俺が好きだった二次元の美少女戦士そのものだ。

 ……しかし、いつものサンバ君の口調で台無しではあるが。

 それよりも、本当にやれるのだろうか。
 俺は軍事に詳しくない。アサルトドールといわれてもピンとこないのだ。

 まあ、肉弾戦においてのスペック的にはマリーさんより格上らしい。
 どうなるか見ものだ。どの道、ここでやられたら死ぬだけだし。
 せめて何か援護できるように拳銃はしっかり構える。

「ぶおおおお!」

 巨人はもう十メートル先まで来ていた。
 随分と空気の読める敵だと思うかもしれない。

 だが、鍾乳石が無数に生える天然の洞窟はいつの間にか、ちょっとした広場になっていた。
 やつら、俺よりも鍾乳石を砕くのに夢中だったようだ。

 さすがに本来の目的を思い出したのか、今は俺に敵意を向けて近づいてくる。

「そうだ! サンバ君、奴の血に気をつけろ! ナノマシンの影響で物資を分解してしまうらしいぞ!」

 そう、たしかマリーさんのワイヤーソーは一瞬で分解され、使い物にならなくなったそうだ。

 俺が言い終わる前にサンバ君。いや、セーラー服の美少女アンドロイド『ファイアフライ』は剣を躍らせる。

 巨人の振り上げた、骨のこん棒をクルクルとダンスを踊るようにそらしながら。
 そして、こん棒は目標に衝突することなく、巨人の腕ごと明後日の方向に切り飛ばされた。

 俺は一瞬の出来事に何が起きたのか分からなかった。

 瞬きする間もなく、いつの間にか首を刎ねられた巨人の身体が地面に横たわっていたのだ。

「ぐへへ。今宵のカタナブレードは血に飢えておるっす。ぐへへへへ!」

 くそ、せっかくカッコいいのにサンバ君の口調で台無しだ……。


「あがあああああああ! ぶおおおおおおお!」

「サンバ君! 敵はもう一体いるぞ!」

 そう、もう一体の巨人は先程まで傍観していたが、相棒が殺されたのか怒り狂い、手に持った白い骨のこん棒を振りかぶりながら突進してきた。

 ガギーーンッ!

 しかし、思いっきり振り下ろされた渾身の一撃をカタナで受け止めるサンバ君。

 足元の地面に亀裂が走ると、ローファーの靴底が地面にめり込む。

 だが、決してパワー負けしていない。
 それ以降はお互いに膠着状態になった。

「ぐへへ、さすがはアサルトドールっすね。パワーが違うっす。
 マリーさんの様なアサシンドールがスピードと隠密性、情報収集に特化したアンドロイドなら。この身体は、パワーっす! 力こそパワーっす!」

 すごい、明らかに体格差があるのにびくともしない。
 やはり俺は、ガチの軍用兵器を密輸していたのだ……。どうしよう。

 いや、その問題は後で何とかするとしてだ……。

「そうだ! サンバ君! さっき言ったけど奴の血に気をつけろ!
 カタナがボロボロにされてしまうぞ! ……って、あれ? ていうかさっきの攻撃で何ともないの?」

「ぐふふふ、その質問に今お答えするっす。
 このSK-E48近接戦闘用超電磁警棒はその名の通り。軍事企業スターナイツ社製のエレクトリックウエポンシリーズの48番っす。
 エレクトリックウエポンとは主に軍や警察に配備される、対アンドロイド、ブーステッドヒューマン鎮圧に特化した電磁兵器のことっす。
 船長さんならもうお分かりっすね?」

「あ、ああ。なるほど、つまりナノマシンの動きを止めることが出来るってことだろ?」

「正解っす。ちなみに元々の超電磁警棒は普通に折り畳み式の警棒っす。
 ……船長さん、どこでこれを買ったっすか。これガチな超振動ブレードっすよ?」

 サンバ君がそういった瞬間、上段から巨人の体重を乗せて押し付けていたこん棒が一方的に砕ける。
 強靭な現地生物の骨から作られたであろう骨のこん棒が、まるでウエハースのようにボロボロと……。

 不意に力の均衡が崩れたのか巨人はそのまま地面に倒れ込む。

 サンバ君はすかさず巨人の頭を突き刺す。

 片手で軽く切っ先を乗せただけで、特に力がかかっているようには見えなかった。
 奴は恐竜の頭蓋骨で作ったヘルメットの様な物を被っていた。

 それを、まるで豆腐のようにカタナの重さだけで串刺しにしてしまったのだ。

「……船長さん。この武器、違法改造っすね。超振動ブレードは民間での製造は禁止されてるっすよ。
 弁護士を雇った方が良いっすね。もう言い訳できないっす」

「お、おう、それはもうわかった。後でクリステルさんに土下座するさ。
 今はそんなことより、マードックさん達だ。あっちにも二体巨人がいる。そしてマクシミリアンも……急ぐぞ!」
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