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エピソード3
フェイタルフェイト30/31
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マクシミリアンは一人、洞窟を歩く。
いつも通りの仕事をこなし、成功しても失敗しても感情はなく、成果については後で反省する。
打てる手は全て打った。後は結果を待つのみ。
今は自身の身の安全の確保である。そうしてマクシミリアンは生きてきた。
戦いとは、始まった時点で終わっているのだ。
戦いの本質とは始まる前にいかに準備をするかが全てである。
……もちろん多少のノイズはある。
今、目の前にいる男はマクシミリアンにとっては完全に想定外であった。
前身は傷だらけで、生きているのも奇蹟といえる。
彼の身体は至る所に包帯が巻かれており満身創痍なようだ。
「へへ、みつけたぜ! ……お前、俺を数に数えてなかっただろう? ああ?
……そうさ、確かにお前にとっては俺達レッドドワーフなんざ雑魚だったんだろうな!
無様にやられる俺達はさぞかし笑えただろうぜ。
……だがなぁ、窮鼠猫を噛むって言葉は知ってるだろ?」
そう、マクシミリアンの前に立つ男はレッドドワーフの団長であった。
爆風に巻き込まれながらも奇蹟的に一命を取り留めたのだ。
「ふっ、もちろん知っているとも。
……で? 今さらお前が俺にどうにかできるのか? 自然保護団体のレッドドワーフだったか?
ふっ、知らなかったよ。お前達はネズミだったのか……俺はてっきり虫けら以下だと思っていたからな。それは失礼した」
安い挑発である。だが、レッドドワーフの団長にとってはマクシミリアンの全てが許せない。
簡単に挑発に乗ってしまった。
「ふざけろよ! やろー! ぶっ殺してやるー!」
団長はナイフで突撃する。
渾身の一撃だ。
両手でグリップを握りしめ、腰だめに構えられたナイフは簡単に払うことはできない。
だが、マクシミリアンは、それを軽く素手であしらう。
ナイフを蹴り落とし、次に右手の拳が彼のみぞおちに入る。
「ぐはっ!」
その場にうずくまる団長。
ブーステッドヒューマンと普通の人間では、身体能力が根本的に違う。
その差は大人と子供以上に開きがあるのだ。
「ただの人間が俺達ブーステッドヒューマンに素手で勝てる訳がないだろう。
お前等が知的生命体と呼ばれるのが実に不可解だな。やはりネズミどころか虫けら以下ではないか」
マクシミリアンは地面にうずくまる団長の頭を掴むと、そのまま力任せに全身を持ち上げる。
「もう喋れないのか? さっきまでの威勢はどうした?」
そのとき、カチンッ! という音が聞こえた。
団長は金属製のピンの様な物を数本咥えていた。
そして足元には黒いボールの様な物が数個転がる。
「なんだ? それは……」
団長は苦痛に顔を歪ませながらも、マクシミリアンに向かって不気味な笑みを向ける。
ここに来て初めてマクシミリアンは自身に迫る危険を感じた。
「ははは……それは勉強不足だな。これは手りゅう弾って言うんだよ。バカヤロー!」
一瞬の閃光に包まれる。
そして洞窟内に響く爆発音。
…………。
……。
「ちっ……。確かにいい武器だ。
完全に侮っていたな。自爆特攻か……俺達人類が忘れてしまった攻撃方法だったか……」
かろうじで頭を隠したマクシミリアンは、血まみれになりながらも生きている。
ブーステッドヒューマンの筋力と治癒能力のおかげだ。
だが体中にめり込んだ金属のつぶてにより満足に動けない。
内臓をえぐる金属片にナノマシンの回復能力が発揮できていないのだ。
足を引きずりながらもゆっくりと歩みを進めるマクシミリアン。
「ふふ、虫けらだと思っていたがやるじゃないか。
しかし、俺も油断したな……なまじ力を得ると人間堕落するものだな……」
「そうだ、お前は堕落した。落ちるところまで落ちた。お前を助ける者は誰もいないだろうさ」
マクシミリアンの目の前にはマードックが立っていた。
「ふっ、マードックか……信じられんな……まさか息子たちが負けるとはな……」
「ああ、特殊な弾丸を使用したからな。もう一人も生きていないさ」
「……そうか。やはりお前はブーステッドヒューマンの裏切り者だ。父親同様にな……」
「ああ、その通りさ……。お前を拘束する。その前になにか言い残すことはないか?」
「無い。
俺は戦った。そして負けた。
何もないさ。ただ一つ悔いがあるとすれば、この先起こるであろう大戦争を見ることが出来なかったことだろうな……」
マードックは銃を構える。
「俺からもひとつ聞きたい。あのオーバード・ブーステッドヒューマン達。お前の息子と言っていたな、母親はいたのだろう?」
「ああ、いたさ。ラブクラフト、ベルナップ、アシュトン、ダーレス。どの母親も違うが、全員殺されたよ。
トーマス・マードックにな。ふふふ。知らなかったか? お前の親父は警察ながらに俺を上回る悪党だったよ。
ああ、勘違いしないでくれ、別に同情なんていらないしな。
それに息子であるお前には関係のない話だからな。
あくまで俺は、俺の目的の為に自分の息子を利用したに過ぎない。それだけだ……。
だが、それも失敗だったか。ふふふ、まあそれもいいさ」
マクシミリアンは隠し持っていた拳銃で自身のこめかみを撃ち抜こうとする。
バンッ!
マクシミリアンの持った拳銃は前腕ごと吹き飛ぶ。
「簡単に死ぬな。お前は言い逃れが出来ない程の罪を犯した。法による裁きは受けてもらう」
「ふっ。今のはただのスラッグだな。せっかくなら妻や息子たちを殺した例の弾丸とやらを受けてみたかったよ……」
その言葉を最後にマクシミリアンは意識を失った。
いつも通りの仕事をこなし、成功しても失敗しても感情はなく、成果については後で反省する。
打てる手は全て打った。後は結果を待つのみ。
今は自身の身の安全の確保である。そうしてマクシミリアンは生きてきた。
戦いとは、始まった時点で終わっているのだ。
戦いの本質とは始まる前にいかに準備をするかが全てである。
……もちろん多少のノイズはある。
今、目の前にいる男はマクシミリアンにとっては完全に想定外であった。
前身は傷だらけで、生きているのも奇蹟といえる。
彼の身体は至る所に包帯が巻かれており満身創痍なようだ。
「へへ、みつけたぜ! ……お前、俺を数に数えてなかっただろう? ああ?
……そうさ、確かにお前にとっては俺達レッドドワーフなんざ雑魚だったんだろうな!
無様にやられる俺達はさぞかし笑えただろうぜ。
……だがなぁ、窮鼠猫を噛むって言葉は知ってるだろ?」
そう、マクシミリアンの前に立つ男はレッドドワーフの団長であった。
爆風に巻き込まれながらも奇蹟的に一命を取り留めたのだ。
「ふっ、もちろん知っているとも。
……で? 今さらお前が俺にどうにかできるのか? 自然保護団体のレッドドワーフだったか?
ふっ、知らなかったよ。お前達はネズミだったのか……俺はてっきり虫けら以下だと思っていたからな。それは失礼した」
安い挑発である。だが、レッドドワーフの団長にとってはマクシミリアンの全てが許せない。
簡単に挑発に乗ってしまった。
「ふざけろよ! やろー! ぶっ殺してやるー!」
団長はナイフで突撃する。
渾身の一撃だ。
両手でグリップを握りしめ、腰だめに構えられたナイフは簡単に払うことはできない。
だが、マクシミリアンは、それを軽く素手であしらう。
ナイフを蹴り落とし、次に右手の拳が彼のみぞおちに入る。
「ぐはっ!」
その場にうずくまる団長。
ブーステッドヒューマンと普通の人間では、身体能力が根本的に違う。
その差は大人と子供以上に開きがあるのだ。
「ただの人間が俺達ブーステッドヒューマンに素手で勝てる訳がないだろう。
お前等が知的生命体と呼ばれるのが実に不可解だな。やはりネズミどころか虫けら以下ではないか」
マクシミリアンは地面にうずくまる団長の頭を掴むと、そのまま力任せに全身を持ち上げる。
「もう喋れないのか? さっきまでの威勢はどうした?」
そのとき、カチンッ! という音が聞こえた。
団長は金属製のピンの様な物を数本咥えていた。
そして足元には黒いボールの様な物が数個転がる。
「なんだ? それは……」
団長は苦痛に顔を歪ませながらも、マクシミリアンに向かって不気味な笑みを向ける。
ここに来て初めてマクシミリアンは自身に迫る危険を感じた。
「ははは……それは勉強不足だな。これは手りゅう弾って言うんだよ。バカヤロー!」
一瞬の閃光に包まれる。
そして洞窟内に響く爆発音。
…………。
……。
「ちっ……。確かにいい武器だ。
完全に侮っていたな。自爆特攻か……俺達人類が忘れてしまった攻撃方法だったか……」
かろうじで頭を隠したマクシミリアンは、血まみれになりながらも生きている。
ブーステッドヒューマンの筋力と治癒能力のおかげだ。
だが体中にめり込んだ金属のつぶてにより満足に動けない。
内臓をえぐる金属片にナノマシンの回復能力が発揮できていないのだ。
足を引きずりながらもゆっくりと歩みを進めるマクシミリアン。
「ふふ、虫けらだと思っていたがやるじゃないか。
しかし、俺も油断したな……なまじ力を得ると人間堕落するものだな……」
「そうだ、お前は堕落した。落ちるところまで落ちた。お前を助ける者は誰もいないだろうさ」
マクシミリアンの目の前にはマードックが立っていた。
「ふっ、マードックか……信じられんな……まさか息子たちが負けるとはな……」
「ああ、特殊な弾丸を使用したからな。もう一人も生きていないさ」
「……そうか。やはりお前はブーステッドヒューマンの裏切り者だ。父親同様にな……」
「ああ、その通りさ……。お前を拘束する。その前になにか言い残すことはないか?」
「無い。
俺は戦った。そして負けた。
何もないさ。ただ一つ悔いがあるとすれば、この先起こるであろう大戦争を見ることが出来なかったことだろうな……」
マードックは銃を構える。
「俺からもひとつ聞きたい。あのオーバード・ブーステッドヒューマン達。お前の息子と言っていたな、母親はいたのだろう?」
「ああ、いたさ。ラブクラフト、ベルナップ、アシュトン、ダーレス。どの母親も違うが、全員殺されたよ。
トーマス・マードックにな。ふふふ。知らなかったか? お前の親父は警察ながらに俺を上回る悪党だったよ。
ああ、勘違いしないでくれ、別に同情なんていらないしな。
それに息子であるお前には関係のない話だからな。
あくまで俺は、俺の目的の為に自分の息子を利用したに過ぎない。それだけだ……。
だが、それも失敗だったか。ふふふ、まあそれもいいさ」
マクシミリアンは隠し持っていた拳銃で自身のこめかみを撃ち抜こうとする。
バンッ!
マクシミリアンの持った拳銃は前腕ごと吹き飛ぶ。
「簡単に死ぬな。お前は言い逃れが出来ない程の罪を犯した。法による裁きは受けてもらう」
「ふっ。今のはただのスラッグだな。せっかくなら妻や息子たちを殺した例の弾丸とやらを受けてみたかったよ……」
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