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第四章 学園編1
第56話 憎悪の君の祝福③
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禍々しい笑みを浮かべるニコラスだったが。
突然苦しみだし。その場にうずくまる。
頭を押さえながら必死に叫ぶ。
「おい! お前! これ以上はやめろ! 彼女たちは関係ないだろ!」
だが、次の瞬間。人格が入れ替わるように。ニコラスは違う口調で声を放つ。
「ちっ! うるさいですね。……しかし、案外しつこい。いや、さすがは皇族といったところか、我が最初の素体としては合格といったところかな。さあ、皇子さま、我に全て委ねなさい、そうすれば楽になりますよ?」
「だまれ! お前なんかにくれてやるものなど、このカルルク帝国には何一つ無い!」
ニコラスは一人で何かに抗っているようだ。どうやらニコラスは何かに精神を乗っ取られようとしている。
この状況。ソフィアは冷静に分析する。
状況はかなりまずい。今にして後悔した。友達を巻き込むべきではなかった。
自分は12歳にしてマスター級の魔法使いで、自分がいればなんとかなると思っていた。
だがそれ以上の存在。極大魔法を使える敵を想定していなかったのだ。
ルーシーのハインドも、思ってたよりもはるかに能力が高かったのですっかり油断していたのだ。
だが、ハインドが魔法系の精霊である以上、亡者の処刑人には勝てないだろう。
(勝機は無い……か。ならば私は、何としてでもルーシーさんを逃がす! その目的の為に今の私にできること……)
その瞬間、ソフィアは母の言葉を思い出した。
「ソフィア、魔法使い同士の戦いにおいて、最も相手にしたらヤバい奴がいるんだけど知ってるかしら?」
「それって、極大魔法の……えっと、『亡者の処刑人』ですか?」
「正解、亡者の処刑人は対魔法使い専用の召喚魔法と言えるわね。これの長所は、中級魔法以下の完全魔法耐性にあります。もっとも攻撃は大剣による近接攻撃のみで大したことないけどね」
「大したことないんですか? ですがお母様、魔法使いに接近戦は不利ですよ? もしそれを呼び出されたら99パーセントの魔法使いは絶対に勝てないのでは? 1パーセントに満たない極大魔法を使える魔法使いならばあるいは勝てるかもですが」
「違うわね、ソフィア。仮に極大魔法を使えても、発動前の隙をつかれて亡者の処刑人に首を刎ねられて終わりよ。でもね、そんな亡者の処刑人にも弱点はあるの。
知ってるでしょ? 奴の弱点は物理的に首を刎ねればいいのよ。もちろん一対一の場合は何とか同じ魔法で膠着状態に持っていくしかないけどね。
だからこそ憶えておきなさい。所詮、魔法使いは一人では何もできないってことを。
……そうね、ソフィア、まずはお友達を作りなさい。理想を言えば前衛を務めてくれる素敵な剣士がいいわ。
ふふ、私にとってはね、あなたのお父様、カイルがそうだった。彼が前に立って私を守ってくれたから安心して魔法を使うことが出来たの。
でもね、ソフィア。カイルったら最初はね、私のアプローチを無視したりしてね、でも……一生懸命守ってくれたのは嬉しい。
それからね、旅先で一緒にお風呂に入ったのよ。言っとくけど別に何もなかったわ、あの時はお互いにドキドキしてたというか、初々しかったのよ。その後、カイルは私に初めてのキスをしてね――」
思い出は、いつの間にか母ののろけ話になってしまったが、ヒントは充分にある。ルーシーさんと協力すればなんとかなるかもしれない。
ニコラス殿下はまだうずくまっている。それを守るかのように亡者の処刑人はその場から一歩も動かない。
「ねえ、ルーシーさんのハインド君ってどこまで魔法が使えるの? できればマスター級だといいんだけど」
『ふむ、ソフィア嬢、安心したまえ。私は既にマスター級だ。ただ記憶が曖昧で全ての中級魔法が使えるわけではないがな』
「そう、で、ストーンウォールは使えて?」
『問題ない。それは使える』
「おっけー、なら、亡者の処刑人は倒せるかも。ハインド君、協力して奴を倒しましょう。マスター級ならやり方はわかるでしょ?
それと今から私は魔力枯渇で動きが取れなくなるわ。もしもの時はルーシーさんは逃げることを視野に入れて行動して頂戴」
『……ふむ、なるほど、ソフィア嬢。それは分かった。マスターもよろしいですか?』
「え? 何も分かんない。……でも、ハインド君……それってソフィアさんが危ないってことでしょ? ソフィアさんは私が守る!」
「ありがとう、ルーシーさん。なら絶対に勝たなくちゃね!」
ソフィアは大きく深呼吸をし魔力を集中する。
ルーシーは本気のソフィアを見たのは初めてであったが。なにか強力な魔法を使うのは明らかだった。そして少し無理をしているように思った。
「私はずっと魔力の深淵を見てきた。そして深淵はやっと答えてくれた。行くわよ! 極大死霊魔法、最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!」
ソフィアの正面に魔法陣が展開される。
そこから、黒い甲冑に身を包み、大剣を持った騎士が出現した。
突然苦しみだし。その場にうずくまる。
頭を押さえながら必死に叫ぶ。
「おい! お前! これ以上はやめろ! 彼女たちは関係ないだろ!」
だが、次の瞬間。人格が入れ替わるように。ニコラスは違う口調で声を放つ。
「ちっ! うるさいですね。……しかし、案外しつこい。いや、さすがは皇族といったところか、我が最初の素体としては合格といったところかな。さあ、皇子さま、我に全て委ねなさい、そうすれば楽になりますよ?」
「だまれ! お前なんかにくれてやるものなど、このカルルク帝国には何一つ無い!」
ニコラスは一人で何かに抗っているようだ。どうやらニコラスは何かに精神を乗っ取られようとしている。
この状況。ソフィアは冷静に分析する。
状況はかなりまずい。今にして後悔した。友達を巻き込むべきではなかった。
自分は12歳にしてマスター級の魔法使いで、自分がいればなんとかなると思っていた。
だがそれ以上の存在。極大魔法を使える敵を想定していなかったのだ。
ルーシーのハインドも、思ってたよりもはるかに能力が高かったのですっかり油断していたのだ。
だが、ハインドが魔法系の精霊である以上、亡者の処刑人には勝てないだろう。
(勝機は無い……か。ならば私は、何としてでもルーシーさんを逃がす! その目的の為に今の私にできること……)
その瞬間、ソフィアは母の言葉を思い出した。
「ソフィア、魔法使い同士の戦いにおいて、最も相手にしたらヤバい奴がいるんだけど知ってるかしら?」
「それって、極大魔法の……えっと、『亡者の処刑人』ですか?」
「正解、亡者の処刑人は対魔法使い専用の召喚魔法と言えるわね。これの長所は、中級魔法以下の完全魔法耐性にあります。もっとも攻撃は大剣による近接攻撃のみで大したことないけどね」
「大したことないんですか? ですがお母様、魔法使いに接近戦は不利ですよ? もしそれを呼び出されたら99パーセントの魔法使いは絶対に勝てないのでは? 1パーセントに満たない極大魔法を使える魔法使いならばあるいは勝てるかもですが」
「違うわね、ソフィア。仮に極大魔法を使えても、発動前の隙をつかれて亡者の処刑人に首を刎ねられて終わりよ。でもね、そんな亡者の処刑人にも弱点はあるの。
知ってるでしょ? 奴の弱点は物理的に首を刎ねればいいのよ。もちろん一対一の場合は何とか同じ魔法で膠着状態に持っていくしかないけどね。
だからこそ憶えておきなさい。所詮、魔法使いは一人では何もできないってことを。
……そうね、ソフィア、まずはお友達を作りなさい。理想を言えば前衛を務めてくれる素敵な剣士がいいわ。
ふふ、私にとってはね、あなたのお父様、カイルがそうだった。彼が前に立って私を守ってくれたから安心して魔法を使うことが出来たの。
でもね、ソフィア。カイルったら最初はね、私のアプローチを無視したりしてね、でも……一生懸命守ってくれたのは嬉しい。
それからね、旅先で一緒にお風呂に入ったのよ。言っとくけど別に何もなかったわ、あの時はお互いにドキドキしてたというか、初々しかったのよ。その後、カイルは私に初めてのキスをしてね――」
思い出は、いつの間にか母ののろけ話になってしまったが、ヒントは充分にある。ルーシーさんと協力すればなんとかなるかもしれない。
ニコラス殿下はまだうずくまっている。それを守るかのように亡者の処刑人はその場から一歩も動かない。
「ねえ、ルーシーさんのハインド君ってどこまで魔法が使えるの? できればマスター級だといいんだけど」
『ふむ、ソフィア嬢、安心したまえ。私は既にマスター級だ。ただ記憶が曖昧で全ての中級魔法が使えるわけではないがな』
「そう、で、ストーンウォールは使えて?」
『問題ない。それは使える』
「おっけー、なら、亡者の処刑人は倒せるかも。ハインド君、協力して奴を倒しましょう。マスター級ならやり方はわかるでしょ?
それと今から私は魔力枯渇で動きが取れなくなるわ。もしもの時はルーシーさんは逃げることを視野に入れて行動して頂戴」
『……ふむ、なるほど、ソフィア嬢。それは分かった。マスターもよろしいですか?』
「え? 何も分かんない。……でも、ハインド君……それってソフィアさんが危ないってことでしょ? ソフィアさんは私が守る!」
「ありがとう、ルーシーさん。なら絶対に勝たなくちゃね!」
ソフィアは大きく深呼吸をし魔力を集中する。
ルーシーは本気のソフィアを見たのは初めてであったが。なにか強力な魔法を使うのは明らかだった。そして少し無理をしているように思った。
「私はずっと魔力の深淵を見てきた。そして深淵はやっと答えてくれた。行くわよ! 極大死霊魔法、最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!」
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そこから、黒い甲冑に身を包み、大剣を持った騎士が出現した。
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