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第五章 学園編2
第82話 キャンプ実習⑦
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しばらく生徒達は砂漠を楽しんだ。
例のトンネルの中に入ると気持ちの良い涼しい風が吹き抜け、生徒達はこぞってトンネル内で涼を取った。
当然、教員方もトンネルに入ってくる。
マーガレットがトンネルの内壁に触れると。
「おや、これは鉄かね? この岩山には鉄鉱石が含まれているようだ、イレーナ先生はどう思うかね?」
「うーん、鉄でしょう……かね? パパ……こほん、アラン先生はどう思いますか?」
「どうっすかねぇ、鉄には違いないっすが、ここまで純度の高いのは初めてっすよ。これは鍛錬しなくても立派な武具が作れるレベルっすね」
アランは、ナイフの柄でトンネルの内壁を叩く。ガラス質の部分は簡単に砕けるが鉄の部分を叩くと、キーンと楽器の様に綺麗な音が響いた。
ルーシーには専門知識がないためよく分からないが、鉄は鉄鉱石を燃やせば出来るらしいので、余程の火力の魔法がこの穴を作ったのだろうと思うことにした。
セシリアは洞窟の内壁を削り取ろうとナイフを取り出し、壁に向かって思い切り突き刺す。
だが、バキンと音をたて、逆にナイフの刃が掛けてしまった。
「ふむ、なるほど、鋼鉄よりも硬いですね。ただの鉄ではないようです。ふむふむ興味深いですね……」
「へえ、じゃあ魔法耐性はどうかしら。中級魔法の中でも最も強いと言われる『ヘルファイア』で溶けないならこれは鉄ではないと証明できますわよ?」
「ソフィアは馬鹿。ヘルファイアなんて使ったらトンネルの中の皆は丸焼き。場所を考えて……」
「そ、そうでしたわね。炎の魔法は洞窟や草原、森では使用してはいけないんでしたわ」
「ねえ、二人とも。落ちてる石なら大丈夫じゃない? これも鉄なんでしょ? 多分壁から欠けて落ちたのがいくつかあるし、持ち帰って実験すればいいんじゃないかしら……」
リリアナのほうが賢かったようだ。
「さて、皆さん。今日はこれくらいにしましょう。ちょうどお昼ですしランチを頂いたら帰路につきますよ」
ルーシーはこのトンネルに何か違和感というか懐かしいというか、どこかで感じた事がある不思議な感覚を覚えたが、ランチという言葉を聞いてそんなことはどうでもよくなった。
砂漠の昼はかなり暑い。
刺すような日光が地面に照り返されて余計に暑さは増す。
「失敗だったね、もう少し早めに引き返すべきだったよ。老体にこの暑さは堪える。氷の魔法もここだと雀の涙だしね」
マーガレットはぼやきながらも、直ぐに水になってしまう氷の魔法を繰り返し唱えながら先頭を歩く。
イレーナは最後尾だ。脱落者が出ないかしっかりと管理するのは担任の仕事である。
暑さで満身創痍な生徒達を見ながらイレーナは一計を思いつく。
「皆、帰ったら夕方まで休憩にしましょう。そうだ、せっかくだし水風呂でも作りましょうか、砂漠で水魔法を使う特訓にもなりますし」
「おや、名案だね。砂漠で水風呂なんて普通は有り得ないが、我らは全員が魔法使い、だからこそできる贅沢ってものさ」
これは生徒達にも朗報だった。
さすがに砂漠の暑さに生徒達は心も体も疲れ果てていたのだ。
「でも、先生、私達水着を持ってきてませんけど……」
リリアナが不安げに質問をする。
その瞬間、男子達からは謎のざわめきが起こる。
「おや、そうだったね。まあ裸になるしかないね。安心しなさい。まさか由緒あるオリビア学園の学生が同級生の女子を覗こうなんてありえないだろう?
もしそうなったら退学どころか、覗き魔としての肩書が子々孫々にまで伝わるだろうて」
「いやあ、それでもやるのが思春期の男子ってもんっすよ。まあ、野郎どもは俺っちと裸の付き合いでもしてもらいましょうや」
アランが男子達にウィンクをすると、謎のざわめきはピタッと止んだ。
「そうだぞ、僕達はカルルク帝国の誇りある魔法使いなんだ。そんな煩悩に惑わされるようでは我が国の未来は危ういだろう」
ニコラスの堂々とした態度に、先程までざわついていた男子たちは反省したのニコラスに謝罪をした。
ルーシーは一連の男子たちの行動が理解できなかった。
覗きは良くないがニコラス殿下に謝罪する意味はないのでは? いや無くはないのか、一応この国の皇子だし。
そんなことを思いながらルーシーはニコラスに尋ねる。
「あのー、ニコラス殿下は覗きに興味はないんですか?」
男子達がざわついているなか、ニコラスだけは冷静だったので疑問だったのだ。殿下は男でも狼ではないのだろうかと。
そんなストレートで失礼な質問が出来るのはルーシーだけだった。
「ふ、ルーシー。別に僕だって女性の裸に興味が無いわけでは……ハッ! ……す、すまん。俺もまだまだ修行が足りないということだ」
ニコラスは不意にあの事件を思い出したのか、真っ赤になりながらルーシーから目を逸らしたのだった。
◆◆◆
砂漠で一人、鉄鉱石と思われる赤褐色の石を食べるヘイズ。
「なるほど魔物の本能にしたがって正解だった。俺の皮膚の硬度は日に日に増している。デスイーターの外骨格の硬さの秘密はこの鉄鉱石であったか」
そしてヘイズは目的地である西グプタへ到着した。
西グプタの外壁を前に大きく息を吸い込む。
確かに感じる、随分と弱くなったが、かつての主。
呪いのドラゴンロード・ルシウスの今にも消えそうな魔力の残滓を……。
理由は分からないがここにいるのは間違いないだろう。
だが、問題は海のドラゴンロード・ベアトリクス。
はたして奴に勝てるだろうか。
いや、今の俺ならば、千を越える魔物の魂を内包した、この闇の執行官ヘイズならばやれる。
例のトンネルの中に入ると気持ちの良い涼しい風が吹き抜け、生徒達はこぞってトンネル内で涼を取った。
当然、教員方もトンネルに入ってくる。
マーガレットがトンネルの内壁に触れると。
「おや、これは鉄かね? この岩山には鉄鉱石が含まれているようだ、イレーナ先生はどう思うかね?」
「うーん、鉄でしょう……かね? パパ……こほん、アラン先生はどう思いますか?」
「どうっすかねぇ、鉄には違いないっすが、ここまで純度の高いのは初めてっすよ。これは鍛錬しなくても立派な武具が作れるレベルっすね」
アランは、ナイフの柄でトンネルの内壁を叩く。ガラス質の部分は簡単に砕けるが鉄の部分を叩くと、キーンと楽器の様に綺麗な音が響いた。
ルーシーには専門知識がないためよく分からないが、鉄は鉄鉱石を燃やせば出来るらしいので、余程の火力の魔法がこの穴を作ったのだろうと思うことにした。
セシリアは洞窟の内壁を削り取ろうとナイフを取り出し、壁に向かって思い切り突き刺す。
だが、バキンと音をたて、逆にナイフの刃が掛けてしまった。
「ふむ、なるほど、鋼鉄よりも硬いですね。ただの鉄ではないようです。ふむふむ興味深いですね……」
「へえ、じゃあ魔法耐性はどうかしら。中級魔法の中でも最も強いと言われる『ヘルファイア』で溶けないならこれは鉄ではないと証明できますわよ?」
「ソフィアは馬鹿。ヘルファイアなんて使ったらトンネルの中の皆は丸焼き。場所を考えて……」
「そ、そうでしたわね。炎の魔法は洞窟や草原、森では使用してはいけないんでしたわ」
「ねえ、二人とも。落ちてる石なら大丈夫じゃない? これも鉄なんでしょ? 多分壁から欠けて落ちたのがいくつかあるし、持ち帰って実験すればいいんじゃないかしら……」
リリアナのほうが賢かったようだ。
「さて、皆さん。今日はこれくらいにしましょう。ちょうどお昼ですしランチを頂いたら帰路につきますよ」
ルーシーはこのトンネルに何か違和感というか懐かしいというか、どこかで感じた事がある不思議な感覚を覚えたが、ランチという言葉を聞いてそんなことはどうでもよくなった。
砂漠の昼はかなり暑い。
刺すような日光が地面に照り返されて余計に暑さは増す。
「失敗だったね、もう少し早めに引き返すべきだったよ。老体にこの暑さは堪える。氷の魔法もここだと雀の涙だしね」
マーガレットはぼやきながらも、直ぐに水になってしまう氷の魔法を繰り返し唱えながら先頭を歩く。
イレーナは最後尾だ。脱落者が出ないかしっかりと管理するのは担任の仕事である。
暑さで満身創痍な生徒達を見ながらイレーナは一計を思いつく。
「皆、帰ったら夕方まで休憩にしましょう。そうだ、せっかくだし水風呂でも作りましょうか、砂漠で水魔法を使う特訓にもなりますし」
「おや、名案だね。砂漠で水風呂なんて普通は有り得ないが、我らは全員が魔法使い、だからこそできる贅沢ってものさ」
これは生徒達にも朗報だった。
さすがに砂漠の暑さに生徒達は心も体も疲れ果てていたのだ。
「でも、先生、私達水着を持ってきてませんけど……」
リリアナが不安げに質問をする。
その瞬間、男子達からは謎のざわめきが起こる。
「おや、そうだったね。まあ裸になるしかないね。安心しなさい。まさか由緒あるオリビア学園の学生が同級生の女子を覗こうなんてありえないだろう?
もしそうなったら退学どころか、覗き魔としての肩書が子々孫々にまで伝わるだろうて」
「いやあ、それでもやるのが思春期の男子ってもんっすよ。まあ、野郎どもは俺っちと裸の付き合いでもしてもらいましょうや」
アランが男子達にウィンクをすると、謎のざわめきはピタッと止んだ。
「そうだぞ、僕達はカルルク帝国の誇りある魔法使いなんだ。そんな煩悩に惑わされるようでは我が国の未来は危ういだろう」
ニコラスの堂々とした態度に、先程までざわついていた男子たちは反省したのニコラスに謝罪をした。
ルーシーは一連の男子たちの行動が理解できなかった。
覗きは良くないがニコラス殿下に謝罪する意味はないのでは? いや無くはないのか、一応この国の皇子だし。
そんなことを思いながらルーシーはニコラスに尋ねる。
「あのー、ニコラス殿下は覗きに興味はないんですか?」
男子達がざわついているなか、ニコラスだけは冷静だったので疑問だったのだ。殿下は男でも狼ではないのだろうかと。
そんなストレートで失礼な質問が出来るのはルーシーだけだった。
「ふ、ルーシー。別に僕だって女性の裸に興味が無いわけでは……ハッ! ……す、すまん。俺もまだまだ修行が足りないということだ」
ニコラスは不意にあの事件を思い出したのか、真っ赤になりながらルーシーから目を逸らしたのだった。
◆◆◆
砂漠で一人、鉄鉱石と思われる赤褐色の石を食べるヘイズ。
「なるほど魔物の本能にしたがって正解だった。俺の皮膚の硬度は日に日に増している。デスイーターの外骨格の硬さの秘密はこの鉄鉱石であったか」
そしてヘイズは目的地である西グプタへ到着した。
西グプタの外壁を前に大きく息を吸い込む。
確かに感じる、随分と弱くなったが、かつての主。
呪いのドラゴンロード・ルシウスの今にも消えそうな魔力の残滓を……。
理由は分からないがここにいるのは間違いないだろう。
だが、問題は海のドラゴンロード・ベアトリクス。
はたして奴に勝てるだろうか。
いや、今の俺ならば、千を越える魔物の魂を内包した、この闇の執行官ヘイズならばやれる。
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