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第五章 学園編2
第84話 キャンプ実習⑨
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水風呂は先生方が使用した後はきれいさっぱりと元通りになっていた。
要塞の様な石の壁も、魔法を解くとただの砂に戻る。
中級魔法、ストーンウォールは指定した場所に石の壁を作るのだが、魔力のコントロールが優れていれば好きな形に作り替えることもできる。
だが、術者が離れるか、魔法を解くとただの砂になってしまうのだ。
だから街を守る外壁などの永続的な壁は、優秀な設計者と力持ちの労働者が必要不可欠なのである。
それなくして街の平和は保たれない、魔法は万能ではないのだ。
だが、近年になり魔法機械はそれを可能にしつつある。
魔法の力を形として永続的に残す、これが魔法機械の凄さだと、かつてジャンが言ってたのをルーシーは思い出した。
「うーん、魔法機械か、私もそっち方面に才能があればなー」
「ふふ、ルーシーさんには無理でしょう。魔法機械学科は厳しい。そんなぼんやりとした気持ちではやっていけない。それに遊ぶ時間がないくらい忙しいのです、だからルーシーさんには絶対に無理」
セシリアは辛辣だった。だがこれが彼女の通常の態度なので今では誰も気にしない。
「そうよ、ルーシーさん。もし魔法機械学科に行ってしまったら毎週お出かけしたり。今日みたいにキャンプ実習なんて出来なかったんじゃないかしら。
私とザックも選択必修で初級魔法機械を受けてるけど、あれってなんていうのかしら、数学よね。初級であれなら、一年で挫折してるわよ」
リリアナが言うには相当難しいそうだ。数学、頭が痛くなるやつだ。
ルーシーとて昔は嫌いじゃなかったが、問題が難しくなるにつれて次第に敬遠していった学問であった。
「ま、いっか。ジャン君とアンナちゃんが出来るなら私がやる必要もないし。それに私は魔法を学ぶんだ。
素敵な友達にも会えたし。友達だって永続的に残る魔法機械なんかよりも大切な宝物だ!」
たまにルーシーは照れくさい事を平気で言う。だが周りの皆もそれが嫌ではない、むしろ好ましく思ったのだった。
日が暮れようとしている。
生徒一同はキャンプ場の中央に集まる。
「さーて、今日はなんと、お肉の差し入れがありました。近くの酪農家さんからの差し入れです。皆さん大好きな牛肉ですよー。
しかも、調理済み。ばっちりと下味がついていて焼くだけで美味しい完璧なお肉です。
今日は中央におっきなグリルを作って焼肉パーティーとしましょうか。もちろんお野菜の差し入れもありましたのでサラダも作りますよー」
◆◆◆
「魔剣開放!」
西グプタ外壁の上から一人の騎士が飛び降り、ストーンゴーレムの頭上に剣を突き立てる。
次の瞬間、ストーンゴーレムは魔法が解けたのか、ただの石と砂になりその場に崩れた。
「貴様がこのゴーレムのマスターか! 何が狙いかは分からんが、このグプタ警備隊長クロード・バンデルがいる限り、これ以上は貴様の好きにはさせない!」
クロードの手には、かつてルカ・レスレクシオンが作った十二番の魔剣『魔封じの剣』が握られていた。
「ふむ、その剣。魔力を乱す効果があるようだな。……厄介な剣だ。
貴様はこれまでさぞ多くの魔法使いを殺したのだろうな。結構結構。
ならば闇の執行官ヘイズとして名も顔も知らぬ魔法使いの同胞たちの為に敵討ちに興じるとしようか」
ヘイズは冷静に目の前の敵を分析する。
クロードと名乗る男、奴の持つ魔剣にはあらゆる魔法が効かないのだろう。
あるいは極大魔法であれば対応はできるだろうが、前衛がいないこの状況ではそれも不可能。ふ、魔法使いは無防備である。だったか。
彼は魔法使いとして戦えば、まず目の前の男に勝機はないだろうと結論付ける。
「だが、俺には数千の魔物の魂がある。クロードとやら、千匹の魔物と戦う栄誉を貴様に与えてやろう、騎士として本望であろう?」
ヘイズは、自身に取り込んだ魔物の魂を開放する。
全身が硬いからで覆われ、右手からデスイーターの毒針が生えてくる。それは槍のように長かった。
「ふ、これが魔物の身体か、大きさの割には随分と軽いものだ。しかし、まさか魔法使いの俺が接近戦に興じるとは思わなかったぞ」
ヘイズは赤褐色の鎧をまとった重武装の戦士と化していた。
そしてクロードに毒針の一刺しを与えんがために突っ込む。
だが、次の瞬間。
「おい、お前は俺をなめてないか? 素人の槍が俺に当たる訳ないだろう」
クロードの剣はヘイズの右腕を斬り飛ばす。
毒針の付いた右腕は宙を舞いそのまま地面に突き刺さった。
だがヘイズは口元をゆがめる。
「ふ、そんなことは承知の上よ、俺とて自分の力がどれほどか、まだ把握しきれていないからな。
だが言ったはずだ。お前は千の魔物と対峙しているとな……」
その言葉を最後に、ヘイズは人でなくなった。
魔物の強さは数にある。
ヘイズの身体から、あらゆる砂漠の魔物の頭部や腕が無秩序に生え、クロードに雪崩のように襲い掛かる。
間一髪、クロードは数個の魔物の首、腕を切り落とし、後退する。
「ち、化け物か。これは俺では荷が重いな」
「そうだ、人間であるお前にはどうしようもないのだ。ならばさっさと海のドラゴンロードをだせ! でなければ街の民を全て喰らってやるぞ!」
要塞の様な石の壁も、魔法を解くとただの砂に戻る。
中級魔法、ストーンウォールは指定した場所に石の壁を作るのだが、魔力のコントロールが優れていれば好きな形に作り替えることもできる。
だが、術者が離れるか、魔法を解くとただの砂になってしまうのだ。
だから街を守る外壁などの永続的な壁は、優秀な設計者と力持ちの労働者が必要不可欠なのである。
それなくして街の平和は保たれない、魔法は万能ではないのだ。
だが、近年になり魔法機械はそれを可能にしつつある。
魔法の力を形として永続的に残す、これが魔法機械の凄さだと、かつてジャンが言ってたのをルーシーは思い出した。
「うーん、魔法機械か、私もそっち方面に才能があればなー」
「ふふ、ルーシーさんには無理でしょう。魔法機械学科は厳しい。そんなぼんやりとした気持ちではやっていけない。それに遊ぶ時間がないくらい忙しいのです、だからルーシーさんには絶対に無理」
セシリアは辛辣だった。だがこれが彼女の通常の態度なので今では誰も気にしない。
「そうよ、ルーシーさん。もし魔法機械学科に行ってしまったら毎週お出かけしたり。今日みたいにキャンプ実習なんて出来なかったんじゃないかしら。
私とザックも選択必修で初級魔法機械を受けてるけど、あれってなんていうのかしら、数学よね。初級であれなら、一年で挫折してるわよ」
リリアナが言うには相当難しいそうだ。数学、頭が痛くなるやつだ。
ルーシーとて昔は嫌いじゃなかったが、問題が難しくなるにつれて次第に敬遠していった学問であった。
「ま、いっか。ジャン君とアンナちゃんが出来るなら私がやる必要もないし。それに私は魔法を学ぶんだ。
素敵な友達にも会えたし。友達だって永続的に残る魔法機械なんかよりも大切な宝物だ!」
たまにルーシーは照れくさい事を平気で言う。だが周りの皆もそれが嫌ではない、むしろ好ましく思ったのだった。
日が暮れようとしている。
生徒一同はキャンプ場の中央に集まる。
「さーて、今日はなんと、お肉の差し入れがありました。近くの酪農家さんからの差し入れです。皆さん大好きな牛肉ですよー。
しかも、調理済み。ばっちりと下味がついていて焼くだけで美味しい完璧なお肉です。
今日は中央におっきなグリルを作って焼肉パーティーとしましょうか。もちろんお野菜の差し入れもありましたのでサラダも作りますよー」
◆◆◆
「魔剣開放!」
西グプタ外壁の上から一人の騎士が飛び降り、ストーンゴーレムの頭上に剣を突き立てる。
次の瞬間、ストーンゴーレムは魔法が解けたのか、ただの石と砂になりその場に崩れた。
「貴様がこのゴーレムのマスターか! 何が狙いかは分からんが、このグプタ警備隊長クロード・バンデルがいる限り、これ以上は貴様の好きにはさせない!」
クロードの手には、かつてルカ・レスレクシオンが作った十二番の魔剣『魔封じの剣』が握られていた。
「ふむ、その剣。魔力を乱す効果があるようだな。……厄介な剣だ。
貴様はこれまでさぞ多くの魔法使いを殺したのだろうな。結構結構。
ならば闇の執行官ヘイズとして名も顔も知らぬ魔法使いの同胞たちの為に敵討ちに興じるとしようか」
ヘイズは冷静に目の前の敵を分析する。
クロードと名乗る男、奴の持つ魔剣にはあらゆる魔法が効かないのだろう。
あるいは極大魔法であれば対応はできるだろうが、前衛がいないこの状況ではそれも不可能。ふ、魔法使いは無防備である。だったか。
彼は魔法使いとして戦えば、まず目の前の男に勝機はないだろうと結論付ける。
「だが、俺には数千の魔物の魂がある。クロードとやら、千匹の魔物と戦う栄誉を貴様に与えてやろう、騎士として本望であろう?」
ヘイズは、自身に取り込んだ魔物の魂を開放する。
全身が硬いからで覆われ、右手からデスイーターの毒針が生えてくる。それは槍のように長かった。
「ふ、これが魔物の身体か、大きさの割には随分と軽いものだ。しかし、まさか魔法使いの俺が接近戦に興じるとは思わなかったぞ」
ヘイズは赤褐色の鎧をまとった重武装の戦士と化していた。
そしてクロードに毒針の一刺しを与えんがために突っ込む。
だが、次の瞬間。
「おい、お前は俺をなめてないか? 素人の槍が俺に当たる訳ないだろう」
クロードの剣はヘイズの右腕を斬り飛ばす。
毒針の付いた右腕は宙を舞いそのまま地面に突き刺さった。
だがヘイズは口元をゆがめる。
「ふ、そんなことは承知の上よ、俺とて自分の力がどれほどか、まだ把握しきれていないからな。
だが言ったはずだ。お前は千の魔物と対峙しているとな……」
その言葉を最後に、ヘイズは人でなくなった。
魔物の強さは数にある。
ヘイズの身体から、あらゆる砂漠の魔物の頭部や腕が無秩序に生え、クロードに雪崩のように襲い掛かる。
間一髪、クロードは数個の魔物の首、腕を切り落とし、後退する。
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