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第七章 学園編3
第107話 二学期
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「さーて、皆さん。夏休みは満喫したかなー。おやおやすっかり日焼けして、バカンスを満喫してきた子達がいますねー」
ルーシー達を見るイレーナ先生はちょっととげとげしかった。
真夏のグプタにいれば日焼けくらいはする。
それにしてもイレーナは随分と青白くなっている。不健康な生活をしていたのは否めない。
ソフィアはイレーナのジャケットについているキラキラと光るバッチを見ると。
「イレーナ先生! 助教授になられたのですね! おめでとうございます、最年少記録ですわね!」
それと同時にクラス中から拍手が沸き起こる。
この時点でイレーナの負の感情は浄化された。
「え? そうかしら? あはは、まあ頑張っちゃったしねー。でも先生は皆さんの先生ですから。うふふ。ちょっとー、おだてたって何にもでないわよー」
「……イレーナ先生、ちょろい。ちょっと心配。助教授ってマーガレット先生のパシリになるだけなのに。でもイレーナ先生はいい先生。私は応援したい」
「セシリアさん、さすがにそれは言い過ぎですわ。たしかにちょろいのは心配ですが……」
ルーシーにとっては親戚のお姉さんの立場であるイレーナの出世に心から喜ぶ。
「うむ、イレーナさんは優しい良い人だ。ちょろいなんてとんでもない。
そう言えばセシリアさん、セバスティアーナさんが家に戻ったんでしょ? 週末は帰るの?」
ソフィアですら聞きにくいセシリアの家庭の事情を、ルーシーは自然体で聞く。
「ううん、私は寮にいるよ。だって、両親のそんな場面に出くわしたくないし。きっと、近いうちに弟か妹が出来た報告がくるに違いない」
「ええ? さすがにそれはないんじゃないかしら……」
だがソフィアとて、それは否定できなかった。
学生とはいえ子供が一人、親元を巣立ったとき、なぜかそういう現象があるという話は稀に聞くのだ。
自分の両親ですら怪しいだろう。
ソフィアがそう考えを巡らしていると、ルーシーがセシリアに答える。
「ふふ、セシリアさんは正しい。現実にそれはあるんです。昨日のレオからの手紙で、来年、私に新たな弟か妹が産まれると連絡がありました……」
「まあ、ルーシーさん、おめでたいわ! 来年の帰省が楽しみですわね」
ガヤガヤとしていた教室内は、褒められすぎてすっかり上機嫌になったイレーナが落ち着きを取り戻すと静かになった。
「さて、皆さん。二学期からは中級魔法の習得に移ります。
そう、中級魔法。これは人を殺せる程の威力があります。皆さんも一学期の授業で理解したはずです。
しっかり基礎を身に付けたあなた達は、くだらない見栄とか自尊心で同級生を傷付けないように。
これはだけは肝に銘じなさい、死んだ人間はどんな魔法でも生き返らせることはできないと」
ルーシーはイレーナの言葉に息を呑む。
初級魔法は遊び感覚で覚えれたが。これから学ぶ魔法は本気の攻撃魔法。
いよいよ一人前の魔法使いになるのだと、改めて気を引き締めるのだった。
「では、ここで皆さんには班分けをしてもらいます。実は班の組み合わせは先生の方で事前に決めさせてもらいました。
各々の習熟度に合わせて、最もいいバランスにしてるはずだから。
結局、独学では限界があるし、中級魔法の習得もお互いに助け合う必要があるってことね。
もし組み合わせに異議があったら先生にこっそり相談してもらってもいいわ」
イレーナの組み分けはこうだ。
魔法の才能のある上級者、それに順ずる中級者。そして低級者を一組の班にするのだ。
もっともクラスの仲が悪ければ途端に破綻する組み合わせだが、今のところクラスの仲は良い。
最上位のソフィアや、次点のニコラスを中心に貴族の派閥争いは無い。お互いに尊重し合い助け合う空気ができている。
何気に、この良好な空気を作り出したのはルーシーだが当人はその自覚はなかった。
「では、しばらくの間はこの組み分けで行きましょう。実技の時は必ず同じメンバーでお互いに注意し合い。事故を起こさないように頑張りましょう」
こうして三人一組の班が出来る。
「むー。私の班はニコラス殿下と一緒か……。でもリリアナさんと一緒なら心強い」
ニコラスは班分けの後もルーシーの顔を見ることはなかった。
わざと避けているようにも思える。
ルーシーは思った。
ソフィアに次いで魔法の才能のあるニコラスと最底辺の自分が同じ班になってしまったことに不服なのだろうと。
また攻撃的な態度になるのは面倒くさいと思ったが、今のところは無かった。
だが、ニコラスはルーシーと目を合わすことはなく、終始ぎこちない態度であった。
それはそれとして、リリアナと同じ班なのは心強かった。
ルーシーにはリリアナが必要不可欠だ。
どうにも魔法書の読解力が低いルーシーにとってリリアナの教え方は相性が良かったのだ。
ちなみにソフィアの班は感覚で理解できる天才肌の生徒達ばかりであった。
ソフィアは人に教えるのは苦手だが、そのカリスマ性はそれに順ずる秀才たちの目標であるのだ。
つまり、イレーナが教えなくても勝手に伸びていく。そういう生徒達はソフィアに任せることにしたのだ。
ズルではない。やがてソフィアにも教師になってほしいという思いが半分ほどあったのだ。
ルーシー達を見るイレーナ先生はちょっととげとげしかった。
真夏のグプタにいれば日焼けくらいはする。
それにしてもイレーナは随分と青白くなっている。不健康な生活をしていたのは否めない。
ソフィアはイレーナのジャケットについているキラキラと光るバッチを見ると。
「イレーナ先生! 助教授になられたのですね! おめでとうございます、最年少記録ですわね!」
それと同時にクラス中から拍手が沸き起こる。
この時点でイレーナの負の感情は浄化された。
「え? そうかしら? あはは、まあ頑張っちゃったしねー。でも先生は皆さんの先生ですから。うふふ。ちょっとー、おだてたって何にもでないわよー」
「……イレーナ先生、ちょろい。ちょっと心配。助教授ってマーガレット先生のパシリになるだけなのに。でもイレーナ先生はいい先生。私は応援したい」
「セシリアさん、さすがにそれは言い過ぎですわ。たしかにちょろいのは心配ですが……」
ルーシーにとっては親戚のお姉さんの立場であるイレーナの出世に心から喜ぶ。
「うむ、イレーナさんは優しい良い人だ。ちょろいなんてとんでもない。
そう言えばセシリアさん、セバスティアーナさんが家に戻ったんでしょ? 週末は帰るの?」
ソフィアですら聞きにくいセシリアの家庭の事情を、ルーシーは自然体で聞く。
「ううん、私は寮にいるよ。だって、両親のそんな場面に出くわしたくないし。きっと、近いうちに弟か妹が出来た報告がくるに違いない」
「ええ? さすがにそれはないんじゃないかしら……」
だがソフィアとて、それは否定できなかった。
学生とはいえ子供が一人、親元を巣立ったとき、なぜかそういう現象があるという話は稀に聞くのだ。
自分の両親ですら怪しいだろう。
ソフィアがそう考えを巡らしていると、ルーシーがセシリアに答える。
「ふふ、セシリアさんは正しい。現実にそれはあるんです。昨日のレオからの手紙で、来年、私に新たな弟か妹が産まれると連絡がありました……」
「まあ、ルーシーさん、おめでたいわ! 来年の帰省が楽しみですわね」
ガヤガヤとしていた教室内は、褒められすぎてすっかり上機嫌になったイレーナが落ち着きを取り戻すと静かになった。
「さて、皆さん。二学期からは中級魔法の習得に移ります。
そう、中級魔法。これは人を殺せる程の威力があります。皆さんも一学期の授業で理解したはずです。
しっかり基礎を身に付けたあなた達は、くだらない見栄とか自尊心で同級生を傷付けないように。
これはだけは肝に銘じなさい、死んだ人間はどんな魔法でも生き返らせることはできないと」
ルーシーはイレーナの言葉に息を呑む。
初級魔法は遊び感覚で覚えれたが。これから学ぶ魔法は本気の攻撃魔法。
いよいよ一人前の魔法使いになるのだと、改めて気を引き締めるのだった。
「では、ここで皆さんには班分けをしてもらいます。実は班の組み合わせは先生の方で事前に決めさせてもらいました。
各々の習熟度に合わせて、最もいいバランスにしてるはずだから。
結局、独学では限界があるし、中級魔法の習得もお互いに助け合う必要があるってことね。
もし組み合わせに異議があったら先生にこっそり相談してもらってもいいわ」
イレーナの組み分けはこうだ。
魔法の才能のある上級者、それに順ずる中級者。そして低級者を一組の班にするのだ。
もっともクラスの仲が悪ければ途端に破綻する組み合わせだが、今のところクラスの仲は良い。
最上位のソフィアや、次点のニコラスを中心に貴族の派閥争いは無い。お互いに尊重し合い助け合う空気ができている。
何気に、この良好な空気を作り出したのはルーシーだが当人はその自覚はなかった。
「では、しばらくの間はこの組み分けで行きましょう。実技の時は必ず同じメンバーでお互いに注意し合い。事故を起こさないように頑張りましょう」
こうして三人一組の班が出来る。
「むー。私の班はニコラス殿下と一緒か……。でもリリアナさんと一緒なら心強い」
ニコラスは班分けの後もルーシーの顔を見ることはなかった。
わざと避けているようにも思える。
ルーシーは思った。
ソフィアに次いで魔法の才能のあるニコラスと最底辺の自分が同じ班になってしまったことに不服なのだろうと。
また攻撃的な態度になるのは面倒くさいと思ったが、今のところは無かった。
だが、ニコラスはルーシーと目を合わすことはなく、終始ぎこちない態度であった。
それはそれとして、リリアナと同じ班なのは心強かった。
ルーシーにはリリアナが必要不可欠だ。
どうにも魔法書の読解力が低いルーシーにとってリリアナの教え方は相性が良かったのだ。
ちなみにソフィアの班は感覚で理解できる天才肌の生徒達ばかりであった。
ソフィアは人に教えるのは苦手だが、そのカリスマ性はそれに順ずる秀才たちの目標であるのだ。
つまり、イレーナが教えなくても勝手に伸びていく。そういう生徒達はソフィアに任せることにしたのだ。
ズルではない。やがてソフィアにも教師になってほしいという思いが半分ほどあったのだ。
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