72 / 92
第五章 迷宮都市タラス
第72話 ルカとセバスティアーナの出会い④
しおりを挟む
バシュミル大森林を歩く、道も何もない森林を迷うこと無くすすむ。
不思議と魔物とは遭遇しなかった。
このルート自体が彼らが長年の経験で見つけた、あるいは安全なように作り替えたのかは分からない。
しかし事実バシュミル大森林であるのに魔物はいなかった。そして森を抜けると小さな集落があった。
人はまばらだがいる。
集落の人々はルカ達を見ても何も言わない。セバスティアーナはまだ仲間だと認識されているようだ。
なんの邪魔をされることなくモガミの里の首領の屋敷に入る。
そこには首領の他、数名の大人たちが同席している。会議を行っていたのだろう。
ルカ達が許可なく会議中の屋敷に侵入したことに気付いた首領は驚き。そして怒りの声を上げた。
「なんじゃ、貴様ら! いや、お前はルカ・レスレクシオン! それにセバスティアーナ……まさか懐柔されたのか!」
ルカはここに来て初めて自分を知っている人間に会ったことに若干驚いた。
そして気付く。ルカの暗殺計画は首領の独断であったのだと。
「いや、彼女は懐柔されておらんぞ? お主の命令通りに吾輩を殺そうとし、失敗し、そして毒を飲んだ。それで懐柔されたというのか?」
「であるなら、そこにいるセバスティアーナはなんだ! あの毒は致死性の毒だ。説明が掴んではないか。嘘を言うなよ! ……ならば、これではっきりするわ! モガミ流忍術・裏。 忍法『決死の毒・発』!
…………。何も起こらぬか、ならば毒を飲んだのは本当か……」
周りがざわつく。
「首領! どういうことですか! まさか、セバスティアーナに決死隊をさせたということですか?」
「だまれ! しかたなかろう、セバスティアーナはまだ12歳。言葉巧みにルカ・レスレクシオンに懐柔される恐れがあった。
それくらいの用心はする。でなければモガミの里はエフタルの貴族共に滅ぼされてしまうのだぞ!」
「ですからセバスティアーナにこの任は重いと我らはもうしたのに、そもそも、いくら掟とはいえ魔法機械はいい物だと我らは結論付けたではないですか。
いくら始祖ユーギ・モガミの教えとて、口伝による間違いだってあると。
それに首領。あなたはセバスティアーナには別の任務を与えると我らには言ったではありませんか!」
「だまれ小僧! 儂はユーギ・モガミの玄孫じゃ、最後の言葉を憶えているのはこの里で儂だけじゃ!」
内輪もめをはじめるモガミの里の面々。
「ふむ、今回の一件は首領の独断的な面があったのかのう。セバスちゃんはどう思う?」
「はい、私は首領の命で今回の任務を受けました。機械文明は悪い文明。それを生み出そうとするルカ様は殺されるべきだと」
「なるほどの……。、おーい! 皆の者! よく聞け! セバスちゃんは毒を飲んだ、そして死にかけた。吾輩は魔法機械を使って彼女の命を救った。そしてだ! 掟を破ったと言って彼女は自分には価値がなくなったと言った。
だから吾輩はセバスちゃんの命を買った。お主らには、もはやどうこう言う筋合いはないが、どうか?」
…………。
しばらくの沈黙の後、若い男は答える。
「掟通りなら、我らにはセバスティアーナのこの先について、どうこう言う権利はありません。ですが、ルカ・レスレクシオン殿はセバスティアーナをどうするつもりですか?」
「うむ、メイドにするに決まっておろう。彼女は優秀だ。仕事はできるし、文句も言わん……たまには言ってほしいくらいだ、そして料理が旨い。それで充分じゃ」
こうしてモガミの里との一件は決着した。
ルカ・レスレクシオンとモガミの里は友好関係を持つことになった。
もっとも、あくまで個人的な繋がりであり、エフタルにはいっさいの秘密を約束している。
ルカ自身、エフタルは信用できないし、モガミ流忍術という魔法体系が彼らに知れたら戦争はやむを得ないからだ。
エフタルの貴族にとって魔法とは神の力、異端は許されないのだ。
セバスティアーナもモガミの里と縁が切れたわけではない。
里の皆はいつでも気軽にもどってこいといった雰囲気だった。
ルカは話せばわかる連中だと知って安心した。
…………。
その後。
モガミの里の首領は、独断で行った責任をとって隠居、そして里を追放された。
彼は里を離れ、放浪の旅に出る。そして、ある集落を訪れた。
「…………。人里か、おい、むすめ、ここはどこだ? お主はなにものじゃ」
「はい、ここは、エフタル王国の首都サマルカンド……の隅っこの片田舎です。えっと私の名前はマーサといいます。おじいさんはどちらから来られたのですか?」
「モガミの里……」
不思議と魔物とは遭遇しなかった。
このルート自体が彼らが長年の経験で見つけた、あるいは安全なように作り替えたのかは分からない。
しかし事実バシュミル大森林であるのに魔物はいなかった。そして森を抜けると小さな集落があった。
人はまばらだがいる。
集落の人々はルカ達を見ても何も言わない。セバスティアーナはまだ仲間だと認識されているようだ。
なんの邪魔をされることなくモガミの里の首領の屋敷に入る。
そこには首領の他、数名の大人たちが同席している。会議を行っていたのだろう。
ルカ達が許可なく会議中の屋敷に侵入したことに気付いた首領は驚き。そして怒りの声を上げた。
「なんじゃ、貴様ら! いや、お前はルカ・レスレクシオン! それにセバスティアーナ……まさか懐柔されたのか!」
ルカはここに来て初めて自分を知っている人間に会ったことに若干驚いた。
そして気付く。ルカの暗殺計画は首領の独断であったのだと。
「いや、彼女は懐柔されておらんぞ? お主の命令通りに吾輩を殺そうとし、失敗し、そして毒を飲んだ。それで懐柔されたというのか?」
「であるなら、そこにいるセバスティアーナはなんだ! あの毒は致死性の毒だ。説明が掴んではないか。嘘を言うなよ! ……ならば、これではっきりするわ! モガミ流忍術・裏。 忍法『決死の毒・発』!
…………。何も起こらぬか、ならば毒を飲んだのは本当か……」
周りがざわつく。
「首領! どういうことですか! まさか、セバスティアーナに決死隊をさせたということですか?」
「だまれ! しかたなかろう、セバスティアーナはまだ12歳。言葉巧みにルカ・レスレクシオンに懐柔される恐れがあった。
それくらいの用心はする。でなければモガミの里はエフタルの貴族共に滅ぼされてしまうのだぞ!」
「ですからセバスティアーナにこの任は重いと我らはもうしたのに、そもそも、いくら掟とはいえ魔法機械はいい物だと我らは結論付けたではないですか。
いくら始祖ユーギ・モガミの教えとて、口伝による間違いだってあると。
それに首領。あなたはセバスティアーナには別の任務を与えると我らには言ったではありませんか!」
「だまれ小僧! 儂はユーギ・モガミの玄孫じゃ、最後の言葉を憶えているのはこの里で儂だけじゃ!」
内輪もめをはじめるモガミの里の面々。
「ふむ、今回の一件は首領の独断的な面があったのかのう。セバスちゃんはどう思う?」
「はい、私は首領の命で今回の任務を受けました。機械文明は悪い文明。それを生み出そうとするルカ様は殺されるべきだと」
「なるほどの……。、おーい! 皆の者! よく聞け! セバスちゃんは毒を飲んだ、そして死にかけた。吾輩は魔法機械を使って彼女の命を救った。そしてだ! 掟を破ったと言って彼女は自分には価値がなくなったと言った。
だから吾輩はセバスちゃんの命を買った。お主らには、もはやどうこう言う筋合いはないが、どうか?」
…………。
しばらくの沈黙の後、若い男は答える。
「掟通りなら、我らにはセバスティアーナのこの先について、どうこう言う権利はありません。ですが、ルカ・レスレクシオン殿はセバスティアーナをどうするつもりですか?」
「うむ、メイドにするに決まっておろう。彼女は優秀だ。仕事はできるし、文句も言わん……たまには言ってほしいくらいだ、そして料理が旨い。それで充分じゃ」
こうしてモガミの里との一件は決着した。
ルカ・レスレクシオンとモガミの里は友好関係を持つことになった。
もっとも、あくまで個人的な繋がりであり、エフタルにはいっさいの秘密を約束している。
ルカ自身、エフタルは信用できないし、モガミ流忍術という魔法体系が彼らに知れたら戦争はやむを得ないからだ。
エフタルの貴族にとって魔法とは神の力、異端は許されないのだ。
セバスティアーナもモガミの里と縁が切れたわけではない。
里の皆はいつでも気軽にもどってこいといった雰囲気だった。
ルカは話せばわかる連中だと知って安心した。
…………。
その後。
モガミの里の首領は、独断で行った責任をとって隠居、そして里を追放された。
彼は里を離れ、放浪の旅に出る。そして、ある集落を訪れた。
「…………。人里か、おい、むすめ、ここはどこだ? お主はなにものじゃ」
「はい、ここは、エフタル王国の首都サマルカンド……の隅っこの片田舎です。えっと私の名前はマーサといいます。おじいさんはどちらから来られたのですか?」
「モガミの里……」
2
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる