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第五章 迷宮都市タラス
第78話 スタンピード④
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夜が訪れる。
マンイーターの先遣隊を倒した騎士団や冒険者達は全員街の中央の広場に集まっていた。
そこには大きなテーブルが何脚も並んでおり。その上にはさまざまな料理が並んでいる。
「皆の者、よくやった。一人も死者が出なかった事に吾輩はただただ感謝するのみである。敵の本隊はまだ健在だが、後は吾輩に任せよ、計画は順調である。
まあ、それはそれとしてだ、長話は嫌われるからのう。今日の勝利に乾杯!」
『勝利に乾杯!』
ルカの挨拶は実に堂々としていた。
普段引きこもっている彼女だが、さすがは元貴族だけある。
それに騎士や冒険者たち、さらに商人達に囲まれている。
それぞれが感謝の言葉や、ずっとタラスの総督でいてくださいといった懇願を受けているようだ。
俺とシャルロットは食事を楽しんでいると、ルカが近づいてきた。
「お二人さん、楽しんでいるようじゃな。吾輩はこういうパーティーはどうも苦手じゃ。貴族だったころは極力さけておったしな」
「そうですか? さすがはルカ様だと思って見てたんですけど、シャルロットもそう思うだろ?」
相変わらず口いっぱいに料理を頬張っていたが、勢いよく飲み込むと返事をした。
「そうよね、これが噂の辺境伯だって感心してたんだから、私達が知ってるルカ様は普段、研究以外はだらしない姿しか見てなかったし。本当に貴族だったんだって思ってたくらいよ」
「ふむ、まあ好意的に受け取っておこう。だが、お二人よ、我らの仕事はまだ残っておるぞ? 気は緩んでおるまいな!」
「はい、もちろんです。それについて打ち合わせをしようと思ってました」
「うむ、まあ、今日は疲れただろうから明日から本格的に作戦会議といこうか、ほれ、英雄は吾輩ではない。お主たちじゃぞ!
おーい皆の者! 彼らが、かのラングレン兄妹じゃ!」
ルカの声が広場に響く。
「おお、あれが噂の、マンイーターのリーダー格を次々と狩っていった遊撃隊、まさかこんなに若いとは」
「俺も覚えている。あと一歩のところで俺は命を落とすところだった。だが彼の剣の一撃で……」
「ああ、俺もだ。妹のシャルロットさんの魔法で助けられた……」
いつの間にか俺達の周囲に人だかりができていた。
俺も、ルカの気持ちが少しわかった気がする。嬉しいけどなんというか慣れないというか、むず痒いのだ。
◆
一週間後。
マンイーターの本隊が到着した。
数はおよそ1000体、いやそれ以上いるかもしれない。なるほど。数は力とはこのことだ。
そうだ、この目の前の光景は圧倒的だった。
今、俺とシャルロットにルカは北門の城壁の上にいる。
「おお、壮観よのう。この街の終わりを連想してしまうのう、街の皆がこれを見たら混乱を起こしてしまっただろうて」
ルカの言うとおりだ。この数の見て足がすくまない人間はいないだろう。暴動だって起きてしまうかもしれない。だからルカは俺達だけで倒す作戦を思いついたのか。
「では、お嬢ちゃん。計画通りにおとりをたのむぞい」
「おっけー、じゃあ、行くわよ! 極大死霊魔法。最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!」
シャルロットの隣に黒い甲冑の騎士が現れた。
以前、俺は訓練でこの騎士と戦ったことがある。
剣士としての技量を高度なレベルで修めており、かなり強い。
それに加え、唯一の弱点である首を切断しない限り決して死ぬことはない。それ以外を傷付けても直ぐに再生してしまうのだ。
「処刑人に命ずる! 出来る限り敵を引きつけなさい! 攻撃は最小限にして、防御に徹すること。くれぐれも首を取られないように。では行きなさい!」
黒い騎士は城壁を飛び降りるとマンイーターの群れに突っ込む。
マンイーターの群れは亡者の処刑人を取り囲むとそこだけマンイーターの山ができていた。
おとりとしてはこれ以上の効果はない。
しかし、左右から溢れたやつが城壁に近づいてくる。
一か所に集めて二十番の魔剣開放で一網打尽にする計画だったのだが……どうする?
ルカは冷静だった。
「さすがに一体では数がたらんか。まあ想定の範囲内じゃがな、お嬢ちゃん七番の魔剣を持っておるな。そして魔剣開放の効果も聞いておろう」
「はい、もちろんです。一時的に自身と指定した他一名の魔力最大保有量の増加、そして自然回復力向上、リジェネレーションの効果を付与すると皇帝陛下から聞きました。
……ですが、一度も魔剣開放に成功したことがなくて」
「うん? オリビアちゃんは何も言わんかったか? ふむ、それの魔剣開放には特別な呪文が必要なんじゃが……まあ、よい。お嬢ちゃん耳を貸せい」
ルカはシャルロットに何か耳打ちをした。
そして、驚いた表情で俺に向く。何があったのか彼女の顔は真っ赤になっていた。
だが覚悟を決めたのか、七番の魔剣。魅惑の短剣『ダーリンアタック』を取り出し、深呼吸をした。
「……カイル、魔剣の効果を貴方にも付与する為に、聞かせなければいけない呪文があるの」
真剣な表情だった。彼女からはさっきまでの余裕が一切ない。
「シャルロットいまさらだ、俺はどんな魔剣によるリスクも受け入れる。その魔剣は強力なんだろう? なら受け入れるさ」
「そう、なら、行くわよ。しっかり聞きなさい。……すぅ。……好き、好き、好き好きダーリン! 私は貴方が大好きよ。ずっと好きだった 私は、私はカイルがすき、めちゃめちゃに愛してほしいの!」
……一瞬空気が凍る。この状況で一体何を言ってるんだ。
いや、俺は嬉しいし俺も同じ気持ちだ。でも時と場所を……。
だが、次の瞬間、シャルロットの持った魔剣が輝く。
俺は温かい光に包まれ、体中の魔力の向上を感じた。
シャルロットも同じように光っている。
なるほどこれが魔剣開放の為の特別な呪文だったか。
ルカ……こんな恥ずかしいセリフを強要する魔剣を皇帝陛下にプレゼントしたというのか。
いや当時は皇帝ではなかったとしても、他国の皇族相手にそれは……
俺は少しルカを軽蔑した。
「なんじゃ、その目は。言っておくが吾輩はオリビアちゃんにお願いされてそれを造ってやったのじゃ。
あの子は随分と奥手じゃったからなあ。吾輩の気遣いというものじゃ。
それにその魔剣は元々は寝室で使うためのものじゃ。
白昼堂々とそれを使ったのはお主たちが初めてじゃろうて。
まあ、お二人さんもいずれ試してみることをお勧めするぞい。
おっと、それはそれ。
お嬢ちゃん。おとりの追加じゃ。奴らが城壁に到達してしまうぞい」
「わ、わかったわ。その話は後でしましょう。
行くわよ! 極大死霊魔法。最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!
……って凄いわ。なにかしら、体中から魔力が溢れてくる。もう一回行くわよ! 極大死霊魔法。最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!」
新たに追加された2体の亡者の処刑人はそれぞれ左右に分かれて。マンイーターの群れに突っ込んでいった。
大きなマンイーターの山は3つ。上手くまとまってくれた。
今だ亡者の処刑人は健在だ。
それでも首を斬れば消滅する。だが奴らは知らない。
まさにおとりとして最適な戦法だが、一方的に嬲られるのはさすがに見ていられない。
人型だからだろうか、いや、これが本当に人だったら、あの群がる魔物に喰われる姿を想像してしまったからだろう。
スタンピードとはそういうことだ、魔物の群れに飲まれたら誰だってああなるのだ、だから俺は奴らに哀れみは持たないし手加減もしない。
ならば俺も仕事をする。
「魔剣開放!」
刀身の先から柄にかけて青く光るリング状の魔法陣が何重にも展開される。
「さて、カイル少年よ、目標は三つ、魔剣に蓄えた魔力を全て使ってもギリギリ足りぬな。
だが、お主もお嬢ちゃんと同様に七番の影響で魔力は溢れんばかりにギンギンになっているじゃろう。その魔力を魔剣に注ぎ込めば問題ない」
なるほど、たしかに俺の魔力は今までにないほどに充実している。
ヘイストなら何回使っても余りある。
よし、俺は魔剣を持つ腕を通して魔力を剣に集中させる。
まるで剣と一体化したような感覚を覚えた。
「やるな少年、剣と魔力的な接続を説明なしに会得するとは。いや、そういえばお主はセバスちゃんから修行を受けていたな。うむ、感心感心。
さて、お主は氷の魔法は会得しておるかのう? 炎の魔法を使うと火事になってしまう恐れがあるからのう」
「はい、最近、アイスニードルが使えるようになりました」
「ほう、初級魔法じゃの、だがそれでよい。むしろ初級魔法の方が制御がしやすい。ではたのむぞ」
俺は魔剣を敵に向けて構える。リング状の魔法陣が赤に変る。敵をロックオンしたということだ。
「ではいきます。『アイスニードル』!」
次の瞬間、魔剣の先端から無限に思える氷の槍が次々と敵に向かって降り注ぐ。
剣先の方向を変え、薙ぎ払うように氷の矢をつぎつぎとマンイーターの群れに向かって撃つ。
身長の二倍ほどの長さはある氷の槍は無慈悲にマンイーターを貫き、そのまま地面に突き刺さる。
マンイーターはそのまま串刺しの状態で地面に固定された。
まるで早贄だ、たしか捕らえた獲物を串刺しにして地面に吊るす修正をもった魔物がいたがまさにそれだ。
まだ生きているマンイーターは氷の槍から抜け出そうともがいているが、やがて凍り付き動きを止める。
その光景は圧倒的でむごたらしく思えた。しかしやらなければ俺達がやられていたのだ。
マンイーターの死体の山の中から動く人影が出てきた。
そうか、亡者の処刑人は魔法耐性があったんだっけ。
処刑人達は生きてる個体を見つけてはマンイーターの首をはねる。
それをしばらく繰り返すと、シャルロットの方を向き剣を顔の前に構え、会釈をするとそのまま消失した。
役目を終えたということだろう。
終わった。俺は深呼吸をして、シャルロットを見る。彼女も俺を見た。
「やったな!」
「ええ、やったわ!」
俺達は高らかにハイタッチを交わした。
マンイーターの先遣隊を倒した騎士団や冒険者達は全員街の中央の広場に集まっていた。
そこには大きなテーブルが何脚も並んでおり。その上にはさまざまな料理が並んでいる。
「皆の者、よくやった。一人も死者が出なかった事に吾輩はただただ感謝するのみである。敵の本隊はまだ健在だが、後は吾輩に任せよ、計画は順調である。
まあ、それはそれとしてだ、長話は嫌われるからのう。今日の勝利に乾杯!」
『勝利に乾杯!』
ルカの挨拶は実に堂々としていた。
普段引きこもっている彼女だが、さすがは元貴族だけある。
それに騎士や冒険者たち、さらに商人達に囲まれている。
それぞれが感謝の言葉や、ずっとタラスの総督でいてくださいといった懇願を受けているようだ。
俺とシャルロットは食事を楽しんでいると、ルカが近づいてきた。
「お二人さん、楽しんでいるようじゃな。吾輩はこういうパーティーはどうも苦手じゃ。貴族だったころは極力さけておったしな」
「そうですか? さすがはルカ様だと思って見てたんですけど、シャルロットもそう思うだろ?」
相変わらず口いっぱいに料理を頬張っていたが、勢いよく飲み込むと返事をした。
「そうよね、これが噂の辺境伯だって感心してたんだから、私達が知ってるルカ様は普段、研究以外はだらしない姿しか見てなかったし。本当に貴族だったんだって思ってたくらいよ」
「ふむ、まあ好意的に受け取っておこう。だが、お二人よ、我らの仕事はまだ残っておるぞ? 気は緩んでおるまいな!」
「はい、もちろんです。それについて打ち合わせをしようと思ってました」
「うむ、まあ、今日は疲れただろうから明日から本格的に作戦会議といこうか、ほれ、英雄は吾輩ではない。お主たちじゃぞ!
おーい皆の者! 彼らが、かのラングレン兄妹じゃ!」
ルカの声が広場に響く。
「おお、あれが噂の、マンイーターのリーダー格を次々と狩っていった遊撃隊、まさかこんなに若いとは」
「俺も覚えている。あと一歩のところで俺は命を落とすところだった。だが彼の剣の一撃で……」
「ああ、俺もだ。妹のシャルロットさんの魔法で助けられた……」
いつの間にか俺達の周囲に人だかりができていた。
俺も、ルカの気持ちが少しわかった気がする。嬉しいけどなんというか慣れないというか、むず痒いのだ。
◆
一週間後。
マンイーターの本隊が到着した。
数はおよそ1000体、いやそれ以上いるかもしれない。なるほど。数は力とはこのことだ。
そうだ、この目の前の光景は圧倒的だった。
今、俺とシャルロットにルカは北門の城壁の上にいる。
「おお、壮観よのう。この街の終わりを連想してしまうのう、街の皆がこれを見たら混乱を起こしてしまっただろうて」
ルカの言うとおりだ。この数の見て足がすくまない人間はいないだろう。暴動だって起きてしまうかもしれない。だからルカは俺達だけで倒す作戦を思いついたのか。
「では、お嬢ちゃん。計画通りにおとりをたのむぞい」
「おっけー、じゃあ、行くわよ! 極大死霊魔法。最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!」
シャルロットの隣に黒い甲冑の騎士が現れた。
以前、俺は訓練でこの騎士と戦ったことがある。
剣士としての技量を高度なレベルで修めており、かなり強い。
それに加え、唯一の弱点である首を切断しない限り決して死ぬことはない。それ以外を傷付けても直ぐに再生してしまうのだ。
「処刑人に命ずる! 出来る限り敵を引きつけなさい! 攻撃は最小限にして、防御に徹すること。くれぐれも首を取られないように。では行きなさい!」
黒い騎士は城壁を飛び降りるとマンイーターの群れに突っ込む。
マンイーターの群れは亡者の処刑人を取り囲むとそこだけマンイーターの山ができていた。
おとりとしてはこれ以上の効果はない。
しかし、左右から溢れたやつが城壁に近づいてくる。
一か所に集めて二十番の魔剣開放で一網打尽にする計画だったのだが……どうする?
ルカは冷静だった。
「さすがに一体では数がたらんか。まあ想定の範囲内じゃがな、お嬢ちゃん七番の魔剣を持っておるな。そして魔剣開放の効果も聞いておろう」
「はい、もちろんです。一時的に自身と指定した他一名の魔力最大保有量の増加、そして自然回復力向上、リジェネレーションの効果を付与すると皇帝陛下から聞きました。
……ですが、一度も魔剣開放に成功したことがなくて」
「うん? オリビアちゃんは何も言わんかったか? ふむ、それの魔剣開放には特別な呪文が必要なんじゃが……まあ、よい。お嬢ちゃん耳を貸せい」
ルカはシャルロットに何か耳打ちをした。
そして、驚いた表情で俺に向く。何があったのか彼女の顔は真っ赤になっていた。
だが覚悟を決めたのか、七番の魔剣。魅惑の短剣『ダーリンアタック』を取り出し、深呼吸をした。
「……カイル、魔剣の効果を貴方にも付与する為に、聞かせなければいけない呪文があるの」
真剣な表情だった。彼女からはさっきまでの余裕が一切ない。
「シャルロットいまさらだ、俺はどんな魔剣によるリスクも受け入れる。その魔剣は強力なんだろう? なら受け入れるさ」
「そう、なら、行くわよ。しっかり聞きなさい。……すぅ。……好き、好き、好き好きダーリン! 私は貴方が大好きよ。ずっと好きだった 私は、私はカイルがすき、めちゃめちゃに愛してほしいの!」
……一瞬空気が凍る。この状況で一体何を言ってるんだ。
いや、俺は嬉しいし俺も同じ気持ちだ。でも時と場所を……。
だが、次の瞬間、シャルロットの持った魔剣が輝く。
俺は温かい光に包まれ、体中の魔力の向上を感じた。
シャルロットも同じように光っている。
なるほどこれが魔剣開放の為の特別な呪文だったか。
ルカ……こんな恥ずかしいセリフを強要する魔剣を皇帝陛下にプレゼントしたというのか。
いや当時は皇帝ではなかったとしても、他国の皇族相手にそれは……
俺は少しルカを軽蔑した。
「なんじゃ、その目は。言っておくが吾輩はオリビアちゃんにお願いされてそれを造ってやったのじゃ。
あの子は随分と奥手じゃったからなあ。吾輩の気遣いというものじゃ。
それにその魔剣は元々は寝室で使うためのものじゃ。
白昼堂々とそれを使ったのはお主たちが初めてじゃろうて。
まあ、お二人さんもいずれ試してみることをお勧めするぞい。
おっと、それはそれ。
お嬢ちゃん。おとりの追加じゃ。奴らが城壁に到達してしまうぞい」
「わ、わかったわ。その話は後でしましょう。
行くわよ! 極大死霊魔法。最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!
……って凄いわ。なにかしら、体中から魔力が溢れてくる。もう一回行くわよ! 極大死霊魔法。最終戦争、第二章、第三幕『亡者の処刑人』!」
新たに追加された2体の亡者の処刑人はそれぞれ左右に分かれて。マンイーターの群れに突っ込んでいった。
大きなマンイーターの山は3つ。上手くまとまってくれた。
今だ亡者の処刑人は健在だ。
それでも首を斬れば消滅する。だが奴らは知らない。
まさにおとりとして最適な戦法だが、一方的に嬲られるのはさすがに見ていられない。
人型だからだろうか、いや、これが本当に人だったら、あの群がる魔物に喰われる姿を想像してしまったからだろう。
スタンピードとはそういうことだ、魔物の群れに飲まれたら誰だってああなるのだ、だから俺は奴らに哀れみは持たないし手加減もしない。
ならば俺も仕事をする。
「魔剣開放!」
刀身の先から柄にかけて青く光るリング状の魔法陣が何重にも展開される。
「さて、カイル少年よ、目標は三つ、魔剣に蓄えた魔力を全て使ってもギリギリ足りぬな。
だが、お主もお嬢ちゃんと同様に七番の影響で魔力は溢れんばかりにギンギンになっているじゃろう。その魔力を魔剣に注ぎ込めば問題ない」
なるほど、たしかに俺の魔力は今までにないほどに充実している。
ヘイストなら何回使っても余りある。
よし、俺は魔剣を持つ腕を通して魔力を剣に集中させる。
まるで剣と一体化したような感覚を覚えた。
「やるな少年、剣と魔力的な接続を説明なしに会得するとは。いや、そういえばお主はセバスちゃんから修行を受けていたな。うむ、感心感心。
さて、お主は氷の魔法は会得しておるかのう? 炎の魔法を使うと火事になってしまう恐れがあるからのう」
「はい、最近、アイスニードルが使えるようになりました」
「ほう、初級魔法じゃの、だがそれでよい。むしろ初級魔法の方が制御がしやすい。ではたのむぞ」
俺は魔剣を敵に向けて構える。リング状の魔法陣が赤に変る。敵をロックオンしたということだ。
「ではいきます。『アイスニードル』!」
次の瞬間、魔剣の先端から無限に思える氷の槍が次々と敵に向かって降り注ぐ。
剣先の方向を変え、薙ぎ払うように氷の矢をつぎつぎとマンイーターの群れに向かって撃つ。
身長の二倍ほどの長さはある氷の槍は無慈悲にマンイーターを貫き、そのまま地面に突き刺さる。
マンイーターはそのまま串刺しの状態で地面に固定された。
まるで早贄だ、たしか捕らえた獲物を串刺しにして地面に吊るす修正をもった魔物がいたがまさにそれだ。
まだ生きているマンイーターは氷の槍から抜け出そうともがいているが、やがて凍り付き動きを止める。
その光景は圧倒的でむごたらしく思えた。しかしやらなければ俺達がやられていたのだ。
マンイーターの死体の山の中から動く人影が出てきた。
そうか、亡者の処刑人は魔法耐性があったんだっけ。
処刑人達は生きてる個体を見つけてはマンイーターの首をはねる。
それをしばらく繰り返すと、シャルロットの方を向き剣を顔の前に構え、会釈をするとそのまま消失した。
役目を終えたということだろう。
終わった。俺は深呼吸をして、シャルロットを見る。彼女も俺を見た。
「やったな!」
「ええ、やったわ!」
俺達は高らかにハイタッチを交わした。
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