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1話『屑砲』

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スピーカーが拾う銃声と味方の怒鳴り声に、C4はうんざりしていた。
 もう人は誰一人いない、どでかいビルが無駄に建っている廃墟を、銃弾やら榴弾が次々となぎ倒していく。その中を、約50mの2本脚の人型のロボットがホバーで浮きながら逃げまどっている。だが、間もなく胸部、コックピットを銃弾が撃ち抜き、爆発した。その様を、C4は『あーあー』と無気力に呟きながら、自身のロボット、CV(Combat Vehicle)のコックピットから眺めていた。灰色のボディに、図太い足が2本。両手にはマシンガンが一丁ずつ。背部にはブースターが2基と、左右に武装をマウントするアームがついてる。右アームには折りたたまれたキャノン砲、左アームには腕にはめるガントレットのようなパーツがついてる。頭部は前方に角を倒した三角錐形で、中央に赤い単眼を持つ。
『くそっ、もう2機もやられた!!開始30秒だぞ!?オペ!!何見てんだ!!?』
 怒鳴り声の主、C1が、嫌になるくらいの音量でオペレーターに怒鳴り散らす。
『敵は前衛2機、それ以外はまだ確認してないけど、多分後ろに2機いる。』
『んなことはわかってるんだよ!何にやられたんだよ!?』
『わからない。やられた2人とも、防御値が高いのに一瞬で溶けた。ログからは実体弾ってことしかわからない。』
 怒鳴り続けるC1に、オペレーターの男は淡々と状況を伝える。その飄々とした態度が、余計C1を怒らせていた。
『実体弾なら、盾で防げばいい!』
 そう言うと、C4の隣で憤慨していたC1の2脚CVが、肩にマウントしていた大盾を前方に、空いた右手でライフルを構える。黄色と黒、所謂踏切色のボディで、C4機の脚部に比べて比較的細い二本足だ。界隈では、中量2脚と呼ばれてるタイプだ。ちなみにC4機の太い二本足は、重量2脚と呼ばれてる。C4機の武装は近距離主体で、今構えた武装以外には、右背部に細長いロッドハンマー、左背部には四角い形をした煙幕噴射機がマウントされるくらいだ。頭部は四角く、中央のスリットにはツインアイの赤光が覗く。
『C4、今から俺が前に出て突っ込む。攻撃を引き付けてる間に前衛2機を潰すぞ。』
『その案は賛成だけど、前衛を潰すのは後だ。』
 C4は指示を聞くなり、反論した。
『はぁ!?どう考えても前衛が先だろ?』
『オペレーター。今から俺の直上にデコイドローンを飛ばす。前衛2機はまだ遠いな?』
 依頼主の声をミュートにし、オペレーターに確認する。
『あ、あぁ。まだそっちには気づいてない。』
『じゃあ、ドローンがどこで壊されたか、ログで確認してくれ。』
 指示をして、ドローン1機をコンソールで選択する。直後、機体の肩部のハッチから、プロペラのついたドローンが打ち出され、上空で羽を広げて滞空する。
 直後、心地よい高音が鳴り響く。それと同時に、ドローンが砕け散った。
『ええっ!?』
 オペレーターが素っ頓狂な声を出す。
 その時にはC4は操縦稈を握り、後方に急旋回した。
『C1、全速で後退するぞ。』
 ミュートを外し、C1に後退を促す。外した途端にまた怒鳴り声が響いた。あいつ、ずっと怒鳴り続けてたらしい。
『後退だぁ!!?何考えてんだおい!!』
『オペレーター。ログは?』
『ドローン、実体弾で撃墜。ドローンの音波ソナーでは、前衛2機から離れた右方から反応があった。これは、狙撃?』
『後衛1機による狙撃だ。おそらく、最近入荷したスナイパーキャノンだろう。』
『『屑砲』のことか!?あれは命中率が致命的に低いから、遠距離から当てるのは不可能だぞ!』
 C2の言っていることも確かだ。
 スナイパーキャノン『DUST』。通称、『屑砲』。最近店に入荷した新パーツの1つで、並みのCVを1発で仕留められるほどの攻撃力を持つ一方で、致命的に低い命中率であることが原因でゴミ扱いされた。今時こんなのを使ってるCV乗りはいない。
『とにかく、地下へ逃げるぞ。C1、スモーク焚いて攪乱してくれ。』
『隊長の俺に命令するな!お前傭兵だろ!?』
『いいからやれって』
『てんめぇ!!あとで覚えとけよ!!』
 怒鳴りつつも、C1機の背部からスモークが射出された。黒い煙幕が辺りを覆い隠し、2機はその場を後にした。

 この市街地には巨大な地下鉄網が張り巡らされており、使用するのを見越したかのようにCVが入れる高さになっている。
 敵勢力から逃れたC4たちは今、この地下鉄道をホバー移動していた。
『で、これからどうすんだC4?』
 ようやく声に落ち着きが出てきたC1が聞いてきた。
『仮にあの産廃キャノンが犯人だとすると、素のままで使ってるわけがない。何かしらの補助が必要だ。』
『ミサイル誘導装置の類は知ってるけど、狙撃能力を向上するアイテムなんて数個あるくらいだな。しかも『屑砲』の補助にはなり得ない。ましてや、CV用のパーツでそんな効果のあるパーツなんて知らないな。』
 オペレーターが説明した通りだ。『屑砲』の低い命中率を単機でまともなものにするには、どんな手段を用いても不可能だ。
『まさか、チーターかよ?』
『だったら今頃消されてる。『警備団』の鼻の良さは知ってるだろ。』
 C1の憶測がオペレーターに否定され、癇に障ったのか、舌打ちが聞こえた。
『単機では『屑砲』は使えない。なら、複数機ではどうだ?例えば、残りの後衛1機とか。』
 C4も憶測を言ってみる。さっき言ってたミサイル誘導装置は、使用した機体がミサイル搭載機に情報を送信し、それによってロックオン射程の長距離化を可能とするものだ。未だに所在不明の後衛1機。そいつが何かをしているか、或いはただの隠し玉なのか。
『複数・・・・・・あっ』
 オペレータが何かに気づき、少し時間をおいて、あるパーツ情報がコンソールに送信された。
『こりゃ、ずいぶん前から売られてる、環境値測定装置じゃねぇか。』
 自身の機体の周囲の温度、風速、天気等を数値化して表示するパーツだ。主に未開拓地の調査に使われ、戦闘ではお荷物になる。
『そのパーツは、対象との距離も測定する。観測手って聞いたことは?』
『観測手?狙撃手の隣で双眼鏡見てる奴のことか?』
『ああ。もしかすると、残りの一機がそれを使って対象との距離と風速を計測し、それを基に狙撃をしているのかもしれない。』
『だとしても、反動がでかすぎて集弾率もゴミな『屑砲』なのは変わらない。当てるのは難しいぞ』
 C4は思考する。キャノン砲は発射時に反動が生じ、その大小が命中率に直結している。『屑砲』はその攻撃力のあまり、反動が大きくなってしまった。
『『機体連結』なら、反動を解決できるかもしれない。』
『『機体連結』だと!?あんなわけのわからないシステムでどうするんだ?』
『そうか、その手があったか!』
 C4はオペレーターの推測に合点がいき、唸った。C1が『何々?どういうこったよ?』と聞いてくるが、とりあえず置いておく。
『機体連結』とはその名の通り、2機の機体を連結させることだ。機体そのものではなく、パーツ同士が合体することを指している。組み合わせによって様々な効果をもたらすが、連結により2機はその場から動けなくなる。機動戦闘を主体とするCVには致命的なシステムであり、このシステムを使う者はほとんどいない。
 しかし、それを使うCVが、2機とも動く必要がないとしたら。狙撃戦に特化した機体同士だとしたら。
『『機体連結』の組み合わせ効果には、反動を軽減するものがある。それを使って狙撃戦をするとなると、『屑砲』がとんでもない武器に化けるぞ。』
 C4のたどり着いた結論に、他の2人は驚嘆する。
 一体、どれだけの組み合わせを試し、この戦法を見つけたのだろうか。
 だが、その努力を知ったところで、こちらが負ける道理はない。
『オペレーター、C1。俺の作戦を聞いてくれないか。』
 とてつもない壁を前に、C4は静かに闘志を燃やし始めていた。
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