殉愛の狂ゲーマー 〜俺は終末世界で推しキャラの最強を証明する〜

一味違う一味

文字の大きさ
23 / 39

22

しおりを挟む
◆ルーベンside








「確か、この辺だったよな」



 【復讐誓約】のクールタイムが終わった俺は『ゆるふわ』が居るであろう場所へ向かっていた。

 見つけられたのは偶然だ。腐肉戦士の【滅私放光】による【自爆】でできたクレーターの底から薄紫色の光を放つ石造りの人工物を発見したからである。

 それが目当ての場所だも思ったのは、鉄筋コンクリートを容易く破壊する【自爆】で殆ど傷がついていなかった事、そしてゲームストーリーでリコリスがいたのは地下にある石造りの祭壇であり、その石材は目の前にある石と同じような色をしていた事だ。

 ストーリーの設定上、リコリスの居る祭壇は彼女の魔導により尋常ではなく強化されており、半端な攻撃ではビクともしない耐久力となっている。恐らく、その設定が再現された結果なのだろう。



「それとも、『ゆるふわ』はリコリスのゲームストーリー由来の『能力』も使えるのか?」



 『ゆるふわ』の『能力』も戦闘システムの仕様に縛られている部分もあるのは分かる。その最たる例は腐肉戦士だ。

 【従僕生成】による腐肉戦士の【召喚】も十分に恐ろしいがゲームストーリーでは、それを遥かに上回る。

 ゲームストーリーでの【従僕生成】の効果範囲は街一つに及ぶのだ。それだけでなく、あの世とこの世の境を曖昧にし世界中でゾンビの発生率を激増させる。

 今までゾンビ大量発生は『ゆるふわ』ではなく、神が原因である可能性も考えていたが、あの祭壇と思われるモノを見る限りリコリスが原因の可能性が高いだろう。



「だとしても、俺が負ける理由にはならんけどな」



 『ゆるふわ』がゲームストーリーの能力を使えるのだとしたら確かに脅威だ。俺が使えるエリカの『能力』はストーリーと比べれば、戦闘システム由来の貧弱なモノだろう。

 だが、俺が最強だと信じたエリカの『能力』は戦闘システム由来の『能力』だ。確かにストーリー由来の『能力』は強力ではある。

 しかし、その『能力』は俺を含め全てのユーザーが誰も使うことの出来なかったエリカだけの『能力』だ。

 そのエリカだけの財産とさえ言える『能力』は俺にとっては誰も汚してはならない聖域に等しい。今思えば、俺が使えるようになった『能力』が戦闘システム由来のモノで良かったとすら思える。



「見つけた」



 考え事をしながらも足を止めずに探していた祭壇の一部と思われるモノを見つける。

 昼間でも見える僅かな紫の光はアメジストのような大衆受けする美しさではなく、寒気を感じる光を放っていた。



「【阿鼻決別あびけつべつ】から出る霧の方が綺麗だな」



 俺は基本的にいるモノが好きだ。物理的な尖りではなく、性格やステータス等の形がないモノが特化している意味での尖りである。

 その点、この石材から感じる寒気はゴキブリを見たときに感じるような安っぽい寒気である。対してエリカの専用装備である【阿鼻決別】は見ただけで精神を侵されるレベルだ。(実際、飾りの『元』に見せたら発狂しかけた)

 一寸先も見えぬ闇の中に立たされた時に先を見たくなるような、刃物や兵器が危険だと分かっているのに使いたくなるような、そんな妖しく誘う美しさがある。これもエリカの一途な感情を受け止めた武器であるが故に持てる美しさだろう。

 結論。エリカは美しく、『ゆるふわ』はゴキブリである。

 と、言うわけで──



「汚物は消毒だよな」



 浮浪者汚物火炎放射消毒、虫に殺虫剤、バフにはバフ解除。

 このバフ解除を持つスキルこそリコリスが居る祭壇の出入り口を探さず探索を終わりにした理由にして、祭壇の堅牢な守りを打ち砕く手段にして、【従僕生成】に対する切り札。

 その名は【絶対制裁】。敵のバフを全て解除した上でATKの1200%ダメージという高倍率を叩き込む凶悪なスキルだ。

 何故、戦闘システム由来の『能力』であるバフ解除がストーリー由来の『能力』であろう祭壇の守りを砕く手段になるかと言えば、俺は祭壇の堅牢性はある意味バフによるものだと考えた為だ。

 ゲームストーリーでリコリスの祭壇が堅牢だったのはリコリスが魔導により強化されているからである。強化とは、つまりバフだ。ストーリー中だろうが何だろうが、バフで強化されてる事には変わりないのだ。

 ならば【絶対制裁】でバフを解除し、ただの石材となった天井を砕き侵入できると思ったわけだ。

 推定『ゆるふわ』の本拠地だ。さぞ腐肉戦士がひしめいていることだろうが勝算はある。問題ないだろう。


 ──【絶対制裁】──


 俺が【阿鼻決別】をスキルに沿って振るえば、石から放たれていたショボイ光を消し飛ばし、豆腐のようにあっさりと切断した。

 バフを解除をされ両断された石材だけが下へ落ちていく。すなわち、『ゆるふわ』の居城たる祭壇内部へと。




「ついでに俺もっと」



 落ちても大丈夫そうな深さだと確認した後、穴の縁に手を掛け体を穴の中に落とす。こうして、先に落ちた石材に追従する形で俺は祭壇への侵入を果たした。

















 祭壇への侵入を果たした俺が見たのは、散乱した瓦礫と人体を素材とした『インテリア』だった。

 瓦礫は俺が落としたであろう物もあるが、明らかにそうではないから入ってきたと思われる瓦礫も存在した。

 これは、もしや──



「『ゆるふわ』は留守か?」



 念の為と慎重に祭壇内を探索してみるも出てくるのはリコリスが好みそうな『インテリア』と実験か拷問にでも使ったであろうしかなかった。

 それと探索して分かったが、ここはリコリスの祭壇で間違えなさそうだった。

 ストーリーで出てきたイラストそのままに再現されたここは純白の儀式場と、その前に並べられた二列の棺、そして壁に刻まれた『姉上』へのメッセージで断定できた。

 『インテリア』は知らんがメッセージの方はゲーム時代にリコリス本人が書いたものであろう。『ゆるふわ』はリコリスが『姉上』を気持ち悪いと言っていた、そんな『ゆるふわ』が書くとは考え難い。



「そんな『ゆるふわ』が、嫌な顔しながら『姉上』を使ってると思うと笑えるな」



 腐肉戦士が【忍耐】バフを掛けられていた事から『ゆるふわ』がリコリスの専用装備である【姉の献身】を使ってることは分かっている。そして【姉の献身】の天辺に飾られているのは『姉上』の生首だ。

 運営に抗議文を送りつけるほど嫌っていた【姉の献身】を使う気分はどんなモノなのだろうか。少なくとも俺にとって愉快な感情である可能性は高いだろう。

 『ゆるふわ』の場合、性能の素晴らしさにあっさりと手の平を返して【姉の献身】サイコー! とか言ってる可能性もあるが、それはそれで俺が損をする訳でもないので構わない。

 というか、姉上至上主義のリコリスと【姉の献身】が大嫌いな『ゆるふわ』は、どうやってコミュニケーションを取っているのだろうか?

 やはり俺のように色々悩んでいるのか? それともコミュりょくの高そうな『ゆるふわ』が適当に話を合わせているのだろうか?

 エリカへの愛は誰にも負けない自信がある俺だが、そもそものコミュ力に自信がなく毎度そのことを痛感している。参考になる部分があるなら聞いてみたい。



飾り付け復讐ついでに聞いてみるか」



 仮眠室を飾り付けた時に、多少はコツを掴んだつもりだ。

 『能力』で強化された彼女に恐らく薬の痛み止めが効かないだろうが素の耐久力が人間の比ではなく、リコリスは回復スキルも持っていたので大きな問題はないだろう。勝手に回復するだろうからな。

 愉しみが増えて嬉しい限りだな。




「そして、愉しみはもっと増える」



 周囲には、腐肉戦士の【自爆】では傷つかない堅牢な壁、リコリスが『姉上』を復活させるのに必須の儀式場、堅牢な壁と同様にの大扉。

 リコリスに恨みはないが『ゆるふわ』にはある。留守で戦えなかったのは残念だが、これはこれで好都合だ。

 きっと、驚くだろうな。

 俺は、のこのこ戻ってくるであろう『ゆるふわ』がどんな反応をするかを愉しみにすることにした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...