殉愛の狂ゲーマー 〜俺は終末世界で推しキャラの最強を証明する〜

一味違う一味

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◆ルーベン side








ったどー」



 エリカに言われるがまま【阿鼻決別】を抜いた俺は一度言ってみたかったセリフと共に天へ掲げる。

 そうして溢れ達成感とは裏腹に部屋を満たしていた黒い泥エリカニウムは、まるで蒸発するかのように消え去った。



「ああ……まだ全部回収してなかったのに……」



 エリカからの使命を果たした俺を待っていたのは大いなる絶望だった。せめてアイテムボックスに入れる案をもっと早く思い付いていれば話は違ったものを。

 しかし挫ける訳にはいかない。俺が選んだのは最強『証明』修羅の道、何があってもエリカを愛し続けると誓った俺の気持ちが揺らぐことはない。



「エリカ、愛してるぞ!」


〔黙れバカ〕



 しくしく……

 過去一番で辛辣かもしれない。ある意味ご褒美でもあるが。

 しかし、あの時なんでエリカは焦っていたのだろうか。ゲーム時代を含め、過去類を見ないほどに。

 【阿鼻決別あびけつべつ】から溢れた泥で黒く染まった床でゴロゴロしながら考える。

 ああ、右に行っても左に行ってもエリカを感じられるのは素晴らしいな。乾いて(?)鮮度が落ちているのは残念だが。



〔あんた、自分がどんな状態だったか分かってる?〕


「わからない」


 それと普通に会話してくれてありがとう。前はエリカに辛い思いをさせたようだったから早いとこ思い出の上書きをしたかったんだ。

 エリカ大好きだよエリカ愛してるよエリカずっと一緒にいようエリカ誰にも渡さないよエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカ。

 おっと、エリカニウムを補給したばかりだと言うのに感じていた絶望の深さで精神の安定の為に多大に消費され禁断症状が出てしまった。

 耳から新鮮なエリカニウムを摂取し、肌からもエリカニウムを摂取していると言うのに足らなくなるとは予想外だった。



〔死ぬとこだったのよ!〕



 エリカニウムの摂取量を少しでも増やそうと、全裸になって床との接地面を増やそうとしていたらエリカに衝撃の事実を告げられた。



「えっ、そんなにヤバかったのか。教えてくれてありがとう」



 ゴロゴロ~っと寝返りを打ちながら真剣に話を聞く俺。エリカが心配してくれたなんて嬉しくてスピードが上がってしまいそうだ。

 ハァハァ、エリカ(の持ち物から出たナニカの残滓)と全裸で触れ合ってるだけで幸せだというのに、こんなに俺を喜ばせてどうするつもりなんだ。



〔はぁ、そんなバカなルーベンには少しのことを教えてあげる。じゃないと同じことしそうだしね〕


「是非、お願いします」



 ゴロゴロゴロ~

 エリカと話せるのなら、どんな話題でも嬉しい。しかもエリカから話そうと言ってくれてるのだ。俺がするべきなのは感涙に咽び泣くだけだろう。

 そうして、エリカは真剣な声音で話始めた。



〔霧もそうなんだけど、あの黒いドロドロは私が死ぬ度に抱いた苦痛と恨みの塊なの。すぐに死んじゃう弱っちい私が復讐を誓うと共に抱いた恨みのね〕



 ゴロゴロゴロゴロ~

 なるほど、あの泥はエリカの黒歴史ってことか。でも、エリカが弱っちいなんて事はないから安心してほしい。

 ただの少女であったエリカが死の苦痛や恐怖に耐えられるだけで十分すぎる程に強いのだから。

 一応、俺も耐えられてはいるが、それはエリカへの愛が支えてくれているからで、それがなければ一度として耐えられるモノではないだろう。



〔普通、生物は死の記憶というものに耐えられないの。なぜなら、ダメージは想定されてないから。むしろ、ように脆く作られてすらいるわ〕



 ゴロゴロゴロゴロゴロ~

 エリカはメンタル強くて博識だと言う事か。どうやら俺が思っていた以上にエリカは凄かったらしい。エリカ万歳。



〔私が耐えられるのは決して消えることのない復讐心のがあるから、それこそ自分の体がどうなろうと復讐を遂げたいという気持ちよ。不死体質は多分、あまり関係ないわ。だって肉体が無事でも心だけが壊れるなんて珍しくないでしょ?〕



 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ~

 たしかに、仮眠室に付けた飾りの『元』しかり、少し違うが『能力』を得る前の俺しかりだ。

 それに、現実がゲームに侵食される前の日本でも自殺者なんて腐る程いた。それらは心が死んでしまったから体も殺そうと思ったという人間が多いのかもしれない。



〔あのドロドロには、そんな心が死ぬような代物の塊なの。だから、もう二度とあんなマネはしないで。だってルーベンは私がようやく見つけたかもしれな……〕



 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ~



〔ねぇ、私の話聞いてる?〕


「もちろん。俺がエリカの話を聞かないなんて天変地異が起ころうとも有り得ない」



 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ~

 これだけは、例えエリカであっても譲れない。俺がエリカ以上に優先するものなど、この世に存在しない。

 だから、どうかエリカには分かって欲しい。俺が何をしようとも、それはエリカを第一に考えた結果なのだと。



〔だったら、その寝返りを今すぐ止めて服を着ろ!〕



 ゴロゴロゴ……ピタッ、ガサゴソガサゴソ(服を着る音)。

 やはりエリカは照れ屋だな。俺達の関係は夫婦を超越してるというのに、まさか肌を見ただけで恥ずかしがるとは。

 だが、そんなところも愛おしい。



〔と、とにかく【阿鼻決別】をアイテムボックにも入れないで放置するとドロドロで心が死ぬの。それともアンタは、私が死ぬ光景を何度も見たいわけ!?〕


「無理無理無理。そんな光景は考えたくもないぞ」


〔私だって見たくないし思い出したくないの! はい終わり、この話は終わりぃ!〕



 散々、黒い泥を呑んだ俺だが今のところ何ともない。あれより更に泥を摂取し続ければエリカの言う死の記憶を見させられるのだろうか?

 まぁ、確かめる予定もなければ、そのつもりもない事柄だ、これ以上詮索する必要もないだろう。

 俺は勿論、エリカも嫌がっているのだから積極的に嫌厭けんえんするくらいで丁度いいかもしれない。



〔アンタと一緒になってから私はずっと期待してるの。本当に、ほんっとうに少しだけどね。だから、ちゃんと『証明』しなさいよ〕


「……」


〔ちょっと、どうしてこんな時だけ無言なのよ。いつもの気持ち悪い反応は何処に消えたのかしら?〕



 え、エリカが俺をそこまで認めてくれていたなんて。正直、愛想を尽かされてる可能性まで考えていたのに最初に声を聞かせてくれた時から期待し続けてくれていたなんて。

 何より嬉しかったのは、エリカも俺と『一緒』だと言ってくれた事だ。時に虚しさすら覚えながら一人芝居でエリカに愛を囁いていた俺だったが、ようやく報われた。

 最早もはや、長年好きって言ってくれない恋人に、やっとの思いで言ってもらえた心境である。

 あまりの喜びで声が出ない俺だったが、エリカを待たせてしまったのはよくない。きちんと言葉にして伝えなければ、この感情を。



「その、エリカ」


〔なによ? はっきり言ってくれる?〕



 未だに言葉を濁す俺にエリカが痺れを切らしたように先を促す。エリカを照れ屋シャイだ何だと思っていたが、どうやら俺も他人事ではなかったらしい。

 羞恥で下を噛み切りたい衝動に襲われるが、そんな事をしても何の解決にもならない。何とか衝動を抑え込み言葉を続ける。



「俺に期待してありがとう」


〔え、うん〕


「俺に愛想を尽かさないでくれてありがとう」


〔ふんっ。ギリギリよ〕


「何より、俺と『一緒』にいてくれて、そう思ってくれてありがとう」


〔事実を言っただけよ。何もアンタに礼を言われるような事はないわ。でも、貰えるものは貰ってあげる。感謝してよね〕



 まるで拒絶するような言い回しで悪態を吐くエリカ。それでも俺の贈った言葉を受け取ってくれてありがとう。そんな君が大好きだ。

 もう、迷いはない。心置きなく行動に移す事が出来る。



「これで、俺達は相思相愛で完全無欠のパートナー同士という事だな」


〔……は?〕


「よし、今から祭壇を俺達の愛の巣へ変えよう。実はエリカと安全に暮らせる一軒家も悪くないと思ってたんだ」


〔ちょ、急に何の話? だいたい私達の愛の巣って何よ? 百歩譲ってパートナーはいいとしても相思相愛とか一体どんな解釈したら、そう思えるの?〕



 解釈も何も、元から俺達はだったじゃないか。そして今までは俺だけが言っていた事をエリカも言葉にして認めてくれたって事だろ?

 ああ、そうか。エリカの不安が分かったぞ。確かに二人の家では不安が残るよな。



「よし、産まれてくる子供が不自由なく暮らせる家を造ってみせるぞ。待っててくれエリカ」


〔アンタ話を聞きなさい。愛の巣の次は子供ってアンタの中では、どこまで話が進んでるの!?〕


「はっはっは、言っただろ? 俺がエリカの話を聞かないなんて有り得ないって。一言一句、耳に焼き付けているから安心してくれ!」


〔話を聞きなさいって。ルーベン、ルーーベーンッ!!〕



 この期に及んでとぼけるなんて、やっぱりエリカは照れ屋シャイだな。俺より照れ屋シャイだ。

 でも大丈夫、エリカが口に出せない願い思いは俺が全て汲み取るから。

 そうして俺は祭壇のリフォームを開始した。



〔絶対、聞いてないでしょ!〕
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