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二幕 "邂逅"
【十二話:勇者一行】
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墓前で手を組む金髪の少女と少年。そしてその母親。
「……それじゃあ行ってくるね、パパ」
そう言葉を残して、彼女達はその場を去って行った。
◇
オーガ襲撃の一件から2年と10カ月が過ぎ、私は6歳になっていた。
そして、季節は春。森には色鮮やかな花が咲き、それは新たな一歩を踏み出す若者達にとってのはなむけのようでもあった。
「よーし! 準備はいいか! 【勇者一行】!」
「お弁当でしょ~、水筒でしょ~、ハンカチでしょ~、お洋服でしょ……えっと~、オッケーだよ~」
「ちょっとレイナ!? あんた受験票持ってないでしょ!」
「あ、本当だ~。少し待っててね~」
そう言ってレイナは一旦荷馬車から降りていった。
「……ふふ。レイナらしいや。他の人も受験票を持ってるか再度確認しておこうか」
「おい、ヨミ! 【勇者一行】のリーダーは俺だぞ! 勝手に指揮んな!」
「はいはい、分かった分かった」
私たち子供組はこれから騎士養成学校の入学試験を受けるべく、イシュカ村から一番近い街、ラジュアルへと向かおうとしていた。
それにしても……
「いいや、ヨミ! お前は何も分かっていない! 【勇者一行】は俺がリーダーだからこそ最強なんだ! 俺の華麗な剣捌きはタゴア師匠直伝だからな!」
「何言ってんのよ、それはみんな同じでしょ! 【勇者一行】は強さじゃない! 絆よ! いいえ、もっというならユナちゃんを支えたいっていう愛情でしょ!」
【勇者一行】、やめてもらえませんか!!?
すっごい恥ずかしいんだけど!?
『いいじゃない。あながち間違っていないんだから』
「そういう事じゃないんだよ……」
『なら主が云えば良かったのに、考えてたでしょ。たしか、【昏き闇に差すヒカr……』
ストップ! ストップ!!!
それ以上言わなくていいから!!!
「ごめんね~、今度こそ準備オッケーだよ~」
レイナが受験票を手に戻ってきた。
そして荷馬車は動き出す。
「行ってらしゃい。ヨミ、ユナ」
「気合入れろよ、お前たち! まさか試験で落ちるとか、この俺が許さねぇからな!」
「カイト、馬鹿な事して人様に迷惑かけんじゃないわよ!」
「気を付けてね、愛しのリン」
「頑張るのよ、レイナ!」
「ジル、いい子にするんだぞ!」
「ニノア、風邪ひかないようにね」
「「「ーーーー行ってきます!!!」」」
◇
村を出て6日が過ぎた昼頃。
「ユナ、あそこに見えるのがラジュアルだよ」
兄が指差す方角には高い石壁で覆われた大きな街があった。
「うわぁ、大きい……!!」
魔物みたい強大な敵がいるからあんな防壁が必要なんだろうけど……あまり頑強とは言えないな。
ただ石を綺麗に積み上げただけのようにしか見えないし。あんな物、オーガの一撃で粉砕するんじゃないかな。
「何難しい顔してんの? そんな顔も可愛いけど」
リンが顔を覗き込んできてそう聞いた。
「んん、何でもないよ! あの壁凄く大きいなって思ってただけだよ」
……まぁオーガを基準に考えれば、鉄製でもない限り安心とは言えないし、それもこの世界じゃきっと無茶な話だ。
オーガを基準にするのはやめておこう。
それからしばらくして荷馬車は街の大門へと辿り着き、私たちはそこで下車した。
そして歩いて門まで向かうと、二人の衛兵が身分証を提示するようこっちに促してきた。
それに対して兄が素早く受験票を衛兵に手渡す。私たちもそれにならって受験票を提示した。
「子供ばかりだから何事かと思ったが、試験者たちか……しかし試験資格があるとは言えまだ早すぎないか? 特にそこのお嬢ちゃんは」
入学試験を受けるにあたっての受験資格。それは満22歳以下である事、そして下限は6歳だ。
私はその最低ライン。兄やカイトに至っても13歳と、事実適齢期には達していない。
「どうせ16未満は受験料が半額だからって、それ狙いなんだろ? 受かればラッキーってな。土塊ばかり弄ってる田舎もんの考えそうなこった。だがまぁこんなガキども受かるわけもねぇし、どちらにせよ金の無駄だがよ」
「なんだと……!」
もう一人の衛兵の嫌味にカイトが反応する。
「あ? なんだガキ? 大人に向かって不遜な態度……気に食わねぇ、舐めんじゃねーぞ! ガキが!!!」
男は腰の剣に手を掛けた。
対してカイトは無手による抜刀の構えをとる。
しかし、それを諌めるように兄が前へと出た。
「抑えるんだカイト! 誰が何を言おうと関係ない、だろ? それに師匠が言っていたじゃないか、男なら誰かを護るために戦えって」
「けど、ムカつくじゃねーか! なんで子供だからって、外のもんだからって好き勝手言われなきゃならねーんだ!」
カイトの言いたい事はよく分かる。
大人は大人だから偉いとでも言うのか、そんな口ぶりで世の常を説く。そういう人は少数なりどんな世界にでもいる。もちろん村にもいなかったわけじゃないし、なによりそんな人に限って頑なに私たちを認めようとはしなかった。ただ私に関していえば勇者紋が無い事も問題だったけど、それでもタゴアおじさんの元、必死に頑張る子供達を見て剣術の稽古をしても無駄だと嘲ていた彼らは私には不快な存在だった。
まぁ村では実力行使をもって無理矢理認めさせてやったが、ここではそういう訳にもいかず、こちらが大人な対応を見せることとなった。
あちらのもう一人の衛兵も激情する男をなんとか沈めていた。
「ふんっ……!」
男は鼻を鳴らし、詰所へと入っていく。
「……まぁ、なんだ……頑張れよ!」
「はい!」
そうして私たちは無事、ラジュアルへと辿り着いた。
「……それじゃあ行ってくるね、パパ」
そう言葉を残して、彼女達はその場を去って行った。
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オーガ襲撃の一件から2年と10カ月が過ぎ、私は6歳になっていた。
そして、季節は春。森には色鮮やかな花が咲き、それは新たな一歩を踏み出す若者達にとってのはなむけのようでもあった。
「よーし! 準備はいいか! 【勇者一行】!」
「お弁当でしょ~、水筒でしょ~、ハンカチでしょ~、お洋服でしょ……えっと~、オッケーだよ~」
「ちょっとレイナ!? あんた受験票持ってないでしょ!」
「あ、本当だ~。少し待っててね~」
そう言ってレイナは一旦荷馬車から降りていった。
「……ふふ。レイナらしいや。他の人も受験票を持ってるか再度確認しておこうか」
「おい、ヨミ! 【勇者一行】のリーダーは俺だぞ! 勝手に指揮んな!」
「はいはい、分かった分かった」
私たち子供組はこれから騎士養成学校の入学試験を受けるべく、イシュカ村から一番近い街、ラジュアルへと向かおうとしていた。
それにしても……
「いいや、ヨミ! お前は何も分かっていない! 【勇者一行】は俺がリーダーだからこそ最強なんだ! 俺の華麗な剣捌きはタゴア師匠直伝だからな!」
「何言ってんのよ、それはみんな同じでしょ! 【勇者一行】は強さじゃない! 絆よ! いいえ、もっというならユナちゃんを支えたいっていう愛情でしょ!」
【勇者一行】、やめてもらえませんか!!?
すっごい恥ずかしいんだけど!?
『いいじゃない。あながち間違っていないんだから』
「そういう事じゃないんだよ……」
『なら主が云えば良かったのに、考えてたでしょ。たしか、【昏き闇に差すヒカr……』
ストップ! ストップ!!!
それ以上言わなくていいから!!!
「ごめんね~、今度こそ準備オッケーだよ~」
レイナが受験票を手に戻ってきた。
そして荷馬車は動き出す。
「行ってらしゃい。ヨミ、ユナ」
「気合入れろよ、お前たち! まさか試験で落ちるとか、この俺が許さねぇからな!」
「カイト、馬鹿な事して人様に迷惑かけんじゃないわよ!」
「気を付けてね、愛しのリン」
「頑張るのよ、レイナ!」
「ジル、いい子にするんだぞ!」
「ニノア、風邪ひかないようにね」
「「「ーーーー行ってきます!!!」」」
◇
村を出て6日が過ぎた昼頃。
「ユナ、あそこに見えるのがラジュアルだよ」
兄が指差す方角には高い石壁で覆われた大きな街があった。
「うわぁ、大きい……!!」
魔物みたい強大な敵がいるからあんな防壁が必要なんだろうけど……あまり頑強とは言えないな。
ただ石を綺麗に積み上げただけのようにしか見えないし。あんな物、オーガの一撃で粉砕するんじゃないかな。
「何難しい顔してんの? そんな顔も可愛いけど」
リンが顔を覗き込んできてそう聞いた。
「んん、何でもないよ! あの壁凄く大きいなって思ってただけだよ」
……まぁオーガを基準に考えれば、鉄製でもない限り安心とは言えないし、それもこの世界じゃきっと無茶な話だ。
オーガを基準にするのはやめておこう。
それからしばらくして荷馬車は街の大門へと辿り着き、私たちはそこで下車した。
そして歩いて門まで向かうと、二人の衛兵が身分証を提示するようこっちに促してきた。
それに対して兄が素早く受験票を衛兵に手渡す。私たちもそれにならって受験票を提示した。
「子供ばかりだから何事かと思ったが、試験者たちか……しかし試験資格があるとは言えまだ早すぎないか? 特にそこのお嬢ちゃんは」
入学試験を受けるにあたっての受験資格。それは満22歳以下である事、そして下限は6歳だ。
私はその最低ライン。兄やカイトに至っても13歳と、事実適齢期には達していない。
「どうせ16未満は受験料が半額だからって、それ狙いなんだろ? 受かればラッキーってな。土塊ばかり弄ってる田舎もんの考えそうなこった。だがまぁこんなガキども受かるわけもねぇし、どちらにせよ金の無駄だがよ」
「なんだと……!」
もう一人の衛兵の嫌味にカイトが反応する。
「あ? なんだガキ? 大人に向かって不遜な態度……気に食わねぇ、舐めんじゃねーぞ! ガキが!!!」
男は腰の剣に手を掛けた。
対してカイトは無手による抜刀の構えをとる。
しかし、それを諌めるように兄が前へと出た。
「抑えるんだカイト! 誰が何を言おうと関係ない、だろ? それに師匠が言っていたじゃないか、男なら誰かを護るために戦えって」
「けど、ムカつくじゃねーか! なんで子供だからって、外のもんだからって好き勝手言われなきゃならねーんだ!」
カイトの言いたい事はよく分かる。
大人は大人だから偉いとでも言うのか、そんな口ぶりで世の常を説く。そういう人は少数なりどんな世界にでもいる。もちろん村にもいなかったわけじゃないし、なによりそんな人に限って頑なに私たちを認めようとはしなかった。ただ私に関していえば勇者紋が無い事も問題だったけど、それでもタゴアおじさんの元、必死に頑張る子供達を見て剣術の稽古をしても無駄だと嘲ていた彼らは私には不快な存在だった。
まぁ村では実力行使をもって無理矢理認めさせてやったが、ここではそういう訳にもいかず、こちらが大人な対応を見せることとなった。
あちらのもう一人の衛兵も激情する男をなんとか沈めていた。
「ふんっ……!」
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「……まぁ、なんだ……頑張れよ!」
「はい!」
そうして私たちは無事、ラジュアルへと辿り着いた。
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