命の色

マスカレード 

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命の色

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 夜がどんどん更けていき、緊急患者の付き添いが一人一人いなくなった薄暗い待合室で、不安で押しつぶされそうになりながら、俺はどのくらい待ったのだろう。
 呼ばれて部屋に入った時に、研修医ではなく、ベテランの脳外科医に変わったのを見て、何も言われなくても、俺は事態の深刻さを飲み込んだ。

 脳外科医は斎賀と名乗り、奥様はクモ膜下出血を起こしていますと静かに告げた。
 そんなところで出血が起きたら、助からないのではないかと、それまで俺が思っていた嘘のような病名だった。
 茫然自失の俺に、斎賀医師は尚も説明を続けた。
 噴出した血が固まり、一時的に出血は止まったものの、24時間以内に大出血が起こり、その時は助からないこと。それを未然に防ぐため、血管の穴を塞ぐためのコイルを入れる緊急手術が必要なことを説明されて、俺はすぐに同意書にサインした。
 
 祈って、祈って、祈り続ける間に、手術は終わり、成功したことを聞いたとき、俺は心から祈ったものに感謝した。


 噴出した血で脳内にかなりの圧力がかかり、しばらく美咲の頭痛が続くらしいことは聞かされていた。
 今の美咲の症状に当てはまるが、痛みを取り除いてやることはできないので、苦しむ姿をみているより他はない。せめて今は誰も会いたくないという妻の希望を叶えてやることしかできかった。
 
 待合室を通ると、どの患者の親族か分からないが、何人も集まって看護師から話を聞いている。
 同じように説明を受けた自分の姿に重なって、症状は軽いのだろうか? 
 それとも親族が集まるといいうことは、危ないのだろうかと、他人ながら心配や同情を抱いてしまう。

 自分がかける電話の声で、他の人の邪魔をしないように、少し離れたところで大悟は母親に電話をかけた。

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