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ハプニング
アンドロイドは恋に落ちるか
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一瞬、急激なめまいと立ち眩みを覚えた後、奏太は吸い込まれるようにブラックアウトした。
意識が浮上すると共に、聞き慣れない電子音と、動かしたくても自由にならない身体の重みを感じる。
奏太は霊感があるわけでもないし、科学者として証明できないものの存在を簡単に信じたりはしないけれど、これが俗にいう金縛りだろうかとふと思った。
右手に意識を集中して動かそうとする。頭の中にかすかに瞬いたものが見えたとき、わずかに指が動いた。
動け!くそっ、右手動けったら!
思いっきり力を入れた途端、ブンと空気を切るような音とともに右手が急激に上がり、その勢いにつられて上半身が揺さぶられ、意識が完全に覚醒した。
だが瞼が開かない。一体どうしたんだ俺?不安になりつつ、今度は瞼に意識を集中して持ち上げようとする。何度かの試みで成功して目に入ったのは、上がったままの右腕だった。
「何だこれ?」
出た声に二度びっくり。奏太の声に似てはいるが、兄の研二の声だ。
状況が把握できず、辺りを見回す努力をする。だんだん身体を動かすこつを掴んできた。
「うわ~っ」
思わず叫んだのは、自分が床に崩れているのを目撃したからだ。
何だこれ?俺はここにいるのに、どうして床に俺がいる?
まだ慣れない動作で、寝かされていたテーブルから足を下ろし、バランスを取りながら意識を失っている自分の横にしゃがみ込む。そっと揺すってみるが、自分がここにいるのにこいつが目を覚ましたら、一体誰になるんだろうと恐怖に襲われた。
抱き起そうとして身体を捻ったときに、左肩に近い上腕が目に入り、剥きだしのコントロールボックスが見える。
「アンディ―か⁉まさか、俺はアンディーの中にいるのか?」
なんでこんなことに?どうして?
疑問が渦を巻いた途端、耳の中にキュイ―ンと電子音が響き、カシャカシャと回路が回る音がする。その途端、奏太が自分の顔をコピーしろとアンディ―にコマンドを出す映像が頭の中に浮かび上がった。
バタンとドアが勢いよく開く音で映像が中断される。息せき切って飛び込んできたのは兄の研二だ。床に倒れた奏太と、しゃがんで奏太を抱き起そうとしているアンディ―を見比べて、驚愕の表情を浮かべた。
「奏太!どうしたんだ?アンディー、奏太を無理に起こすな。そっと寝かせてくれ」
研二が駆け寄り、奏太の顔を覗き込む。首に手を当てて脈があるのを知ると、ホッと息を吐いた。だがすぐにアンディーの方に向き直り、怖いくらいの真剣な表情で訊ねた。
「アンディー。もしかして、お前の仕業とか言わないよな?人間に危害を加えないようにプログラムはしてあるが、もしそれが破られたら、お前を抹消しなければならない」
奏太は兄が気づいてくれないことに言葉が出ないほどショックを受けた。
そうだ、自分は今アンディーの中にいて、しかも外見が兄なのだから分からなくて当然だと自分に言い聞かせ、何とか落ちつこうとする。立ちあがった研二を目で追うと、アンディーに接続したままのコンピューターに近づいていくところだった。
「ま、待ってくれ!消さないでくれ!俺だよ、兄さん。奏太だよ。俺、アンディーの中に入っちゃったみたいだ」
紛れもない研二の声で、とんでもないことを言うアンディーを研二が睨みつけた。
「消去を恐れて言い逃れをするのか?いや……まだ何も学んでいないアンディーがそれをするのは不可能だな」
アンディーの頭の先からつま先まで何度も視線を走らせた研二が、まだ疑いの色を滲ませた声で奏太に問う。
「それで?一体何をしたんだ?」
「俺の顔も、写し取ってもらおうと思ったんだ。コマンドを出した途端、吸い寄せられるような感覚があって、気が付いたらアンディーの中にいた」
「そんなバカなこと……いや、お前なら好奇心から説明書も読まずにやりそうだ。あのな、ダイレクトに読み取らせた後で、コマンドを出す場合は、前のデーターを消去してから行わないと不具合が起きるんだ。でも、以前試したときには、こんなことは起きなかったぞ。本当に奏太か証明してくれ」
う~んと唸った奏太は腕を組んで考えた。
こっちをみていた研二が、自分とそっくりな顔を凝視するのに耐えられなくなったのか、スッと視線を逸らしてコンピューターから離れ、奏太の横に戻る。こんこんと眠り続ける奏太の額の髪を優しくかきあげながら、押し殺した声で言った。
「もし、本当にお前が奏太なら、僕とお前だけしか知らないことを話せるはずだ」
床で伸びている奏太の横に跪く研二は、まるで祈りを捧げているようだ。
ゆっくりと顔をあげた研二が苦悩の表情を浮かべ、頼む無事を確かめさせてくれと切望する。自分がしでかした失敗で兄を苦しめているのを知り、奏太は今更ながら軽率な行動を悔いた。
意識が浮上すると共に、聞き慣れない電子音と、動かしたくても自由にならない身体の重みを感じる。
奏太は霊感があるわけでもないし、科学者として証明できないものの存在を簡単に信じたりはしないけれど、これが俗にいう金縛りだろうかとふと思った。
右手に意識を集中して動かそうとする。頭の中にかすかに瞬いたものが見えたとき、わずかに指が動いた。
動け!くそっ、右手動けったら!
思いっきり力を入れた途端、ブンと空気を切るような音とともに右手が急激に上がり、その勢いにつられて上半身が揺さぶられ、意識が完全に覚醒した。
だが瞼が開かない。一体どうしたんだ俺?不安になりつつ、今度は瞼に意識を集中して持ち上げようとする。何度かの試みで成功して目に入ったのは、上がったままの右腕だった。
「何だこれ?」
出た声に二度びっくり。奏太の声に似てはいるが、兄の研二の声だ。
状況が把握できず、辺りを見回す努力をする。だんだん身体を動かすこつを掴んできた。
「うわ~っ」
思わず叫んだのは、自分が床に崩れているのを目撃したからだ。
何だこれ?俺はここにいるのに、どうして床に俺がいる?
まだ慣れない動作で、寝かされていたテーブルから足を下ろし、バランスを取りながら意識を失っている自分の横にしゃがみ込む。そっと揺すってみるが、自分がここにいるのにこいつが目を覚ましたら、一体誰になるんだろうと恐怖に襲われた。
抱き起そうとして身体を捻ったときに、左肩に近い上腕が目に入り、剥きだしのコントロールボックスが見える。
「アンディ―か⁉まさか、俺はアンディーの中にいるのか?」
なんでこんなことに?どうして?
疑問が渦を巻いた途端、耳の中にキュイ―ンと電子音が響き、カシャカシャと回路が回る音がする。その途端、奏太が自分の顔をコピーしろとアンディ―にコマンドを出す映像が頭の中に浮かび上がった。
バタンとドアが勢いよく開く音で映像が中断される。息せき切って飛び込んできたのは兄の研二だ。床に倒れた奏太と、しゃがんで奏太を抱き起そうとしているアンディ―を見比べて、驚愕の表情を浮かべた。
「奏太!どうしたんだ?アンディー、奏太を無理に起こすな。そっと寝かせてくれ」
研二が駆け寄り、奏太の顔を覗き込む。首に手を当てて脈があるのを知ると、ホッと息を吐いた。だがすぐにアンディーの方に向き直り、怖いくらいの真剣な表情で訊ねた。
「アンディー。もしかして、お前の仕業とか言わないよな?人間に危害を加えないようにプログラムはしてあるが、もしそれが破られたら、お前を抹消しなければならない」
奏太は兄が気づいてくれないことに言葉が出ないほどショックを受けた。
そうだ、自分は今アンディーの中にいて、しかも外見が兄なのだから分からなくて当然だと自分に言い聞かせ、何とか落ちつこうとする。立ちあがった研二を目で追うと、アンディーに接続したままのコンピューターに近づいていくところだった。
「ま、待ってくれ!消さないでくれ!俺だよ、兄さん。奏太だよ。俺、アンディーの中に入っちゃったみたいだ」
紛れもない研二の声で、とんでもないことを言うアンディーを研二が睨みつけた。
「消去を恐れて言い逃れをするのか?いや……まだ何も学んでいないアンディーがそれをするのは不可能だな」
アンディーの頭の先からつま先まで何度も視線を走らせた研二が、まだ疑いの色を滲ませた声で奏太に問う。
「それで?一体何をしたんだ?」
「俺の顔も、写し取ってもらおうと思ったんだ。コマンドを出した途端、吸い寄せられるような感覚があって、気が付いたらアンディーの中にいた」
「そんなバカなこと……いや、お前なら好奇心から説明書も読まずにやりそうだ。あのな、ダイレクトに読み取らせた後で、コマンドを出す場合は、前のデーターを消去してから行わないと不具合が起きるんだ。でも、以前試したときには、こんなことは起きなかったぞ。本当に奏太か証明してくれ」
う~んと唸った奏太は腕を組んで考えた。
こっちをみていた研二が、自分とそっくりな顔を凝視するのに耐えられなくなったのか、スッと視線を逸らしてコンピューターから離れ、奏太の横に戻る。こんこんと眠り続ける奏太の額の髪を優しくかきあげながら、押し殺した声で言った。
「もし、本当にお前が奏太なら、僕とお前だけしか知らないことを話せるはずだ」
床で伸びている奏太の横に跪く研二は、まるで祈りを捧げているようだ。
ゆっくりと顔をあげた研二が苦悩の表情を浮かべ、頼む無事を確かめさせてくれと切望する。自分がしでかした失敗で兄を苦しめているのを知り、奏太は今更ながら軽率な行動を悔いた。
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