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期待
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美容整形外科の成瀬美容クリニックの診察室に、ブランド品に身を固めたスレンダーな美女が入ってきた。
成瀬拓真がカルテから顔を上げ、もう常連となった金井あやめに会釈をすると、金井がとっておきの笑顔で身をくねらせる。
真っ直ぐな男らしい眉の下にある切れ長の二重の目が、患者のどんな具合をも見逃すまいとして、鋭い光を湛えたまま金井の全身に走るが、疾病以外は全く興味がないというように素っ気なくカルテに戻る。落胆する金井を気遣うこともせず、拓真は医師として淡々と問診を始めた。
「こんにちは、金井さん。二重の手術から三か月経ちましたが、どうですか?見る限りでは腫れもなく、きれいに二重が定着しているようですが……」
手術の成功は既に確認済みなので、今日は一体何をしに来たと言いたげな拓真に、金井が盛ったまつ毛を瞬かせながら、上目遣いで悩みがあるんですと甘えるように言った。
「ねぇ、成瀬せんせ~。私もう少し胸を大きくしたいなって思うの。先生はやっぱり大きい方が好き?」
襟元の開いたブラウス越しに胸を持ち上げ、谷を見せつける金井の仕草に、拓真は内心うんざりとしたが、顔には出さず、棒読み口調で丁寧に答えた。
「ご自身の好みが一番大切だと思います。もし金井さんがそれ以上を望むのであれば、手術の予約を入れますし、悩んでいるのであれば、一度お帰りになって心行くまで考えられるのがよろしいかと思います」
拓真が色仕掛けに乗ってこないので、金井がブラウスのボタンを外し始めた。
「せんせ~。ここにしこりがある気がするの。あやめ心配で夜も眠れなくなっちゃったから、触って診てほしいの」
「それは、乳腺外科か、乳房外来のある病院で検査を受けられた方がいいでしょう。紹介状ならお出ししますよ」
「そんな~。少し診てくれたって……せんせ~冷たい」
拓真はカルテから顔を上げて大きなため息をつくと、椅子ごとくるりと金井に向き直り、ちらりと胸の谷間に目をやってから、金井の方に少し上半身を傾け、低い声をなおも低めてここだけの話ですが……と切り出した。
「金井さんが私の好みを聞かれたので、正直に言いますと、私はどちらかというと貧乳が好きなんです。それも真っ平なくらいが好みです」
言い終えると、すっと身を起して、金井からできるだけ身体を遠ざける。
「先生、それって……」
青ざめた金井の唇が、ゲイ?と動くのを見て、拓真は初めてにっこりと笑った。
「受け止め方は自由です。乳腺外来の紹介状は必要ですか?」
「い、いりません。失礼します」
慌ててブラウスのボタンをはめると、金井はくるりと身を翻して、挨拶もそこそこに診察室のドアを出て行った。ドアが閉まった途端に、拓真の後ろに控えていた看護師が、いいんですか?誤解されましたよとクスクスと笑ったが、拓真は首を竦めただけで、心の中では誤解しているのは君の方だと呟いた。
一日の仕事を終えた拓真は、三階にある自分の部屋でジャズを聴きながらパソコンを開いた。男性名で男性の人形を買いたいと言えば警戒されるかもしれないと考え、母に内緒で名前を借りていた。お目当ての返事は来ただろうかと胸を高鳴らせながらメールを確認する。
「おっ、来てるな。何々?この人形にはレースドールのような価値はない?とんでもない。俺にとっては大ありだ!」
他のものなどいらないので商談を進めたいと返信し、明後日の土曜日に拓真の知っているカフェで会うことになった。
待ち遠しい!ただその一言につきる。
拓真は保存した写真を呼び出し、グラスのウィスキーに口をつけながら、危うい色気を放つポーセレン人形に魅入っていた。
成瀬拓真がカルテから顔を上げ、もう常連となった金井あやめに会釈をすると、金井がとっておきの笑顔で身をくねらせる。
真っ直ぐな男らしい眉の下にある切れ長の二重の目が、患者のどんな具合をも見逃すまいとして、鋭い光を湛えたまま金井の全身に走るが、疾病以外は全く興味がないというように素っ気なくカルテに戻る。落胆する金井を気遣うこともせず、拓真は医師として淡々と問診を始めた。
「こんにちは、金井さん。二重の手術から三か月経ちましたが、どうですか?見る限りでは腫れもなく、きれいに二重が定着しているようですが……」
手術の成功は既に確認済みなので、今日は一体何をしに来たと言いたげな拓真に、金井が盛ったまつ毛を瞬かせながら、上目遣いで悩みがあるんですと甘えるように言った。
「ねぇ、成瀬せんせ~。私もう少し胸を大きくしたいなって思うの。先生はやっぱり大きい方が好き?」
襟元の開いたブラウス越しに胸を持ち上げ、谷を見せつける金井の仕草に、拓真は内心うんざりとしたが、顔には出さず、棒読み口調で丁寧に答えた。
「ご自身の好みが一番大切だと思います。もし金井さんがそれ以上を望むのであれば、手術の予約を入れますし、悩んでいるのであれば、一度お帰りになって心行くまで考えられるのがよろしいかと思います」
拓真が色仕掛けに乗ってこないので、金井がブラウスのボタンを外し始めた。
「せんせ~。ここにしこりがある気がするの。あやめ心配で夜も眠れなくなっちゃったから、触って診てほしいの」
「それは、乳腺外科か、乳房外来のある病院で検査を受けられた方がいいでしょう。紹介状ならお出ししますよ」
「そんな~。少し診てくれたって……せんせ~冷たい」
拓真はカルテから顔を上げて大きなため息をつくと、椅子ごとくるりと金井に向き直り、ちらりと胸の谷間に目をやってから、金井の方に少し上半身を傾け、低い声をなおも低めてここだけの話ですが……と切り出した。
「金井さんが私の好みを聞かれたので、正直に言いますと、私はどちらかというと貧乳が好きなんです。それも真っ平なくらいが好みです」
言い終えると、すっと身を起して、金井からできるだけ身体を遠ざける。
「先生、それって……」
青ざめた金井の唇が、ゲイ?と動くのを見て、拓真は初めてにっこりと笑った。
「受け止め方は自由です。乳腺外来の紹介状は必要ですか?」
「い、いりません。失礼します」
慌ててブラウスのボタンをはめると、金井はくるりと身を翻して、挨拶もそこそこに診察室のドアを出て行った。ドアが閉まった途端に、拓真の後ろに控えていた看護師が、いいんですか?誤解されましたよとクスクスと笑ったが、拓真は首を竦めただけで、心の中では誤解しているのは君の方だと呟いた。
一日の仕事を終えた拓真は、三階にある自分の部屋でジャズを聴きながらパソコンを開いた。男性名で男性の人形を買いたいと言えば警戒されるかもしれないと考え、母に内緒で名前を借りていた。お目当ての返事は来ただろうかと胸を高鳴らせながらメールを確認する。
「おっ、来てるな。何々?この人形にはレースドールのような価値はない?とんでもない。俺にとっては大ありだ!」
他のものなどいらないので商談を進めたいと返信し、明後日の土曜日に拓真の知っているカフェで会うことになった。
待ち遠しい!ただその一言につきる。
拓真は保存した写真を呼び出し、グラスのウィスキーに口をつけながら、危うい色気を放つポーセレン人形に魅入っていた。
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