老老介護

Akira@ショートショーター

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老老介護

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老老介護は仕方ない、そんな議論が白熱している
「お前たちが子供を産まなかったのが悪い」とか、
「お前たちが子供に優しくしてこなかったのが悪い」とか、散々な言われようだ
しかし、無理なものは無理
しかも今どきの老人は介護サービスを受ける金すら余っていないのだ
余っていても、人手不足
サービスを受けれる確率はとても低い
そんなわけで、人さらいが闊歩するのは当たり前
この男も人さらいだったが、年老いてしまった
しかし人さらいなんてあくどいことをしていたせいで結婚はできず、囲っていた愛人たちも、金の切れ目が縁の切れ目と次々逃げていき、男は一人になった
「もうこうなると弟子を頼るしかない」
男は人さらいの弟子を頼った
「頼む、ワシも年だ
君のところの奴隷を融通してくれないか」
「いいですよ
あなたには世話になった
今度は私があなたに返す番だ」
弟子は快諾した
そして軽く面談を行い、一番気の合いそうな若者を弟子は見繕った
若者は男と一緒に家に帰り、甲斐甲斐しく世話をした
男から感謝の電話が弟子にかかってくる
「本当にありがとう
今度ばかりは例を言っても言い切れないぐらいだ」
「いえいえ
今までの恩が一部でも返せたかと思うと、私はとても嬉しいです」

電話を切ったあと、弟子は毒づく
「まったく、あの人はなんでこうも弟子使いが荒いんだ
人さらいが出来なくなったから奴隷を少しよこせとか言い出したかと思うと、今度は自分の奴隷を用意しろだと?
まあいい、一緒に行かせたのは一番の殺し屋
直に首だけになって帰って来るだろう」
弟子は高らかに笑った
一週間後、弟子の家に若者の首が届く
弟子は慌てて男に電話をかける
「なにがあったのです
なぜうちの奴隷は首だけで帰ってきたのですか」
「実は…」
男は申し訳なさそうに話す
「実は私が寝ているときに彼が枕元に立ったのだ
私はつい昔の癖で彼を殺してしまった
君に何か送ってやろうと思ったが、昔の癖でつい、首を送ってしまった
許してくれ」
弟子は受話器を落とした
思い出した
うちの師匠は人さらいの前、名のしれた暗殺者だった
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