死神

死神

「ははは、またやってしまったよ」
女は死神
死んだ人間の魂を持ち帰るのを忘れたのだ
「またか」
毎度のことなので同僚も呆れる
「すまない、でも君だって死に損ねた人間がどうなるか気になるだろう」
「まあな」
同僚は頷く
「さて、今回の死人は何をするのかな」

男は目が覚めた
「ここはどこだやけに変な匂いがする
それになんだこのブルーシートは
布団のつもりか
いや、怒っている場合ではない
俺にはやるべきことがあるのだ」
男は部屋から脱出した
そして彼女の部屋に急ぐ
家に着くと男はいつもどおり、インターホンを押さずにドアを開けた
家の中で彼女は目を丸くする
「どうしたの、死んだはずじゃなかったの」
「俺も訳が分からない
昨日不良に絡まれた時に、君を逃した後リンチを受けた
俺は意識が遠のくのを感じた
死んだと思ったが、生きていたのだ
そして大切なことをするためにここまで来た」
男はポケットから小さな箱を出し、蓋を開ける
「俺と結婚してほしい」
「まあ」
女は喜びのあまり声を漏らす
「喜んで」
彼女は涙を流した
二人は手を取り合い、喜びを分かち合った
翌日に婚姻届を出しに行くと決めて、早めに寝た
しかし翌日、男は目を覚ますことはなかった

死神たちは口々に話す
「なあ、これから殺し損ねた人間は生かしておくことにしないか
1日だけ生き返らせるなんて見ていて辛いぜ」
「バカ者、元々こんなことがあってはならないのだ」
「しかし人間は本当に面白い　生き返るとみな、決まって花火のように輝くところが憎めない」
そこへ女がやってきた
「すまない、今日もどこかで魂を持ち帰るのを忘れてきたみたい」