拡散希望

拡散希望

「拡散希望です！とか書いている奴らがいるが実際どうなのだろう
そもそも拡散する必要もない情報だったり、拡散する価値のないものを拡散してほしいなど頭がどうかしている」
男は辛辣な口調で言った
その後もことごとく男は拡散希望に対する愚痴を吐く
「拡散する前に拡散される人間になったらどうだ」とか、
「拡散に頼るなんて自信のなさで成功するなんて無理だ　まずは自分に自身を持つことを先んじてすべきだろう」とかだ
しかしある日男は思った
自分のブログが全く伸びないのだ
内容は悪くないはずだ
確かに玉石混交の自己啓発みたくなってはいるが、全て自分なりに考え、学者の意見も織り込んであるからだ
それでも伸びないものは伸びない
男は弱る
そしてついに自らも拡散希望という魔法の呪文を使ってしまったのだ
すると以前とは比べ物にならないぐらい、反応がある
男は気を良くして、どんどん拡散希望の世界にのめり込んでいった
そしていつしか、男は拡散希望の素晴らしさを伝えるブログを書いていた
男のブログはたちまち人気になる
「なるほどな、最初からこうすればよかったのだ」
そして男はある行動に出た
なんと自分が昔に書いた拡散希望を否定する記事を拡散希望しだしたのだ
しかしフォロワーは次々拡散する
矛盾していようが、いまいが、知ったことかという風に作業的に拡散する
流石の男も訝しむ
あまりにも気になったので、ついに運営にそのことを聞いた
すると運営は訝しむ男性を一蹴した
「拡散希望と書けば拡散されるのは当たり前です
なぜなら我々が用意した拡散アカウントによって拡散されているのですから
そうでもしないと初心者は根付いてくれませんからね
根付きさえすればこちらのもの
我社のサービスを使って稼ぎ続けてくれる金のなる木に育ってくれますから」
私は絶句した
電話を切り、パソコンに向かう
そしていま電話で聞いたことをブログに書く
書き終えてから男は思い出した
「そう言えばフォロワーは、すべて運営の拡散アカウントだった…」