殺したがり

Akira@ショートショーター

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殺したがり

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「なぜ君の小説は登場人物が皆死ぬのかね」
医師は首を傾げる
「分かりません
ですがなぜか気づくと皆死んでいるのです」
「そうか、ありがとう」
医師は男の診察を終える
「本当になんなんだあの男は
最後の数ページで必ずと言っていいほど登場人物を殺しにかかる
これは奴の残虐性がにじみ出ているに違いない」
医師は精神安定剤を投薬した
それから男の作風がガラリと変わる
誰も死なないどころか、全てハッピーエンドとなったのだ
医師は喜ぶ
「これは驚いた
前は狂気じみてブラックなものが多かったが、今では真逆
狂気のかけらも感じない」
医師は男を診察室に呼び褒める
「君の作風が変わったが、素晴らしい作品が増えた
感動させてくれるものもあった
知り合いに出版社のものがいるが、出版したければいつでも私に言いなさい」
医師がそう言うと、男はいきなり医師の首を絞めた
男は叫ぶ
「やはりお前だったか
俺の作品を返せ
今は書いていても何も楽しくない
死こそ素晴らしい
死ぬまでにどれだけ花を咲かせられるかで人の一生が決まるのだ」
医師は何とか男を振り払い、いった
「ならばよかった
実は君は私に反抗すれば死ぬ薬が入っている
最後の一瞬だけではあったが、君の人間らしい一面を見れて私はとても嬉しいよ」
まもなく男は泡を吹いて倒れた
「さて、この男の書いたものを私名義で出版するか
この男、殺す必要はない時まで殺すからな
それさえなければ本当に素晴らしい作家になれたはずなのに」
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