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二人
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弱冠二十歳にして、恥の多い人生を送ってきた
誰かがそういったというが、恥ですならいいほうだ
どちらかというと罪に近い
今日も鬱屈した気持ちを抱えながら生きていかねばならない
気持ちはよどんでいるのに、便は淀むことがないのだから、案外ストレスと腸は関係ないだろうと思ったりする
トイレのドアを開けるとそこには女がいた
「ふむ、ということはお前はもうひとつの世界の私なんだな」
女が納得顔で言う
「おそらくそうだろう
同じ名前、同じ家、同じ学校に同じバイト先
違うのは性別だけ
しかしパラレルワールドなんで実際にあったんだな」
「呑気なこと言っている場合か
私はどうやって元の世界に戻ればいいのだ」
俺は口ごもる
そんなことわかるわけがない
そもそもなぜこちらの世界に来たのかも分からないんだから
「とにかく今は現状をどうするかだろう
この部屋で暮らしていくわけだから掃除しないとな」
早速掃除を始める
すると女は真っ先にベッドの所へ向かう
「あまりいじるなよ
そこは魔窟だぞ」
すると女はニタニタと笑う
「やはりそうか
となるとこのあたりに何かがあるはずなんだが
ほらあった」
女は高らかに拾得物を掲げる
「おいやめろ」
俺は真っ赤になる
「よいではないか
ここにコレがあるということは、私の部屋の同じ位置にも同じようなものがあるということだ」
ぶふっ
「大丈夫か、鼻血が出ているぞ」
女が笑ってからかう
「何を想像したかは知らんが、やましいものじゃないぞ
ただ人に見られたくない代物なだけだ」
こうして俺と別世界の俺との奇妙な同棲生活がスタートした
最初のうちは慣れないことも多かった
何せ俺は彼女がいたことがない
女の扱いなんて心得てないんだから、女に翻弄されっぱなしだ
女がチラ見せしたでも俺は鼻血を出すので、女は面白がってやってくる
ふと彼女ができたらこんな感じなのかと思って幸せな気分になった
ある日、俺は暗澹たる気持ちで家に帰った
「どうした、落ち込んでいるのか
お姉さんが慰めてやろうか」
女が笑いながら言う
「うるさい」
今変わっていられる余裕はないのだ
「何かあったのか」
女が心配そうに覗き込む
「わかったぞ
男の子の日だな」
「うるさいって言ってるだろ」
女はきょとんとする
「すまない、大声を出して」
「いや私も悪かった
からかってしまうのは私の悪い癖なのだ
ところで何があった
私にも話せないことなのか」
「それは」
俺は迷う
確かにこいつは俺だ
なら話してもいいんじゃないか
そんな葛藤が生まれる
それを汲んだように女は俺に微笑みかける
「安心して話せ
私はお前だ
きっと同じ悩みを抱えているんじゃないか」
「俺は」
その先が出ない
女は俺の手に優しく手を重ねる 「頑張って」
俺は天井を見上げ、ふうと息を吐いた
そしてゆっくりと話し始めた
「俺は実は妹を殺したんだ
たまにそのことを思い出して辛くなるんだよ」
「あら奇遇ね
私も兄を殺したのよ
辛くはならないけどね」
それから俺たちは一晩中語り合った
なぜ殺したのか、今はどう思っているのか
この他にもたくさんのことを話し合った
生きているのが辛いとか、自分が好きになれないとか
でも二人で話しているとそんな自分を許せる気がした
それは女も同じだったらしい
そして俺たちは惹かれ合っていった
またある日、俺は女をデートに誘った
今までずっと俺の服を着ていたので、女に会う服をプレゼントして、二人で日が暮れるまで遊んだ
「今日は楽しかったよ
ありがとう」
女がはにかんで言う
「俺も楽しかった」
俺はぎこちなく答える
「どうかした」
女が顔を覗き込んでくる
「別になんでもない」
俺は頭を振る
「今思ってることを当ててあげようか」
女がいたずらっぽく言う
「あなたは私のことが好きなんでしょう」
俺はギクリとする
「ああ」
少しぶっきらぼうになってしまった
「なんでわかった」
女は笑って答える
「私たちは同じなんだよ
気持ちも全部わかっちゃうよ」
「まさか、お前も俺のことが好きなのか」
女は顔を赤らめ、ぎこちなくうなずく
その瞬間、女が光の粒子になった
俺は焦る
「どういうことだ
待ってくれよ」
女はかすれた声で答える
「勘のいい君ならもうわかってるんじゃない」
「何のことだ
さすがにさっぱりわからない
待ってくれ、アキラ」
女が笑う
「初めて名前で呼んでくれたね
もう行かなきゃ
これを受け取って」
ひときわ大きな光の粒子が俺の手の中におさまる
「じゃあねあなたに会えてよかった
愛してるよ、アキラ」
そして光の粒子は跡形もなく消えた
俺は呆然として、膝から崩れ落ちた
手からアキラから受け取った光の粒子がこぼれ落ちる
光の粒子が地面に当たって割れた
小さな欠片となって俺の胸に入ってくる
とても温かい
目を開けるとアキラとの思い出が走馬灯のように流れて行った
すぐに見えなくなったが、アキラとの思い出は鮮明に思い出せる
そして何より、今でもアキラがそばにいる気がする
いつも見守ってくれているような明るい感じがするのだ
「もう一度頑張ってみるか」
ふいに言葉が出た
俺は立ち上がり、家を目指す
また明日から俺の大切な人生が始まるんだ
「今回のペアも成功でしたね」
天界で天使が神に言う
「そうだな
自分のことを好きになれないものに、パラレルワールドの自分を会せて間接的に自分を好きになってもらう
この方法でたくさんの命が救われた
ただ、私の力不足ゆえパラレルワールドの二人を同じ世界に住まわせることはできない
私もまだまだ精進しなくては」
神が自己嫌悪に陥っていると、何者かに肩を叩かれた
振り返ると、そこには自分そっくりの女神が立っていた
「ちょっと迷ったみたいなの
私の名前はガビ
あなたの名前は」
神は満面の笑みで答える
「私もガビだ」
誰かがそういったというが、恥ですならいいほうだ
どちらかというと罪に近い
今日も鬱屈した気持ちを抱えながら生きていかねばならない
気持ちはよどんでいるのに、便は淀むことがないのだから、案外ストレスと腸は関係ないだろうと思ったりする
トイレのドアを開けるとそこには女がいた
「ふむ、ということはお前はもうひとつの世界の私なんだな」
女が納得顔で言う
「おそらくそうだろう
同じ名前、同じ家、同じ学校に同じバイト先
違うのは性別だけ
しかしパラレルワールドなんで実際にあったんだな」
「呑気なこと言っている場合か
私はどうやって元の世界に戻ればいいのだ」
俺は口ごもる
そんなことわかるわけがない
そもそもなぜこちらの世界に来たのかも分からないんだから
「とにかく今は現状をどうするかだろう
この部屋で暮らしていくわけだから掃除しないとな」
早速掃除を始める
すると女は真っ先にベッドの所へ向かう
「あまりいじるなよ
そこは魔窟だぞ」
すると女はニタニタと笑う
「やはりそうか
となるとこのあたりに何かがあるはずなんだが
ほらあった」
女は高らかに拾得物を掲げる
「おいやめろ」
俺は真っ赤になる
「よいではないか
ここにコレがあるということは、私の部屋の同じ位置にも同じようなものがあるということだ」
ぶふっ
「大丈夫か、鼻血が出ているぞ」
女が笑ってからかう
「何を想像したかは知らんが、やましいものじゃないぞ
ただ人に見られたくない代物なだけだ」
こうして俺と別世界の俺との奇妙な同棲生活がスタートした
最初のうちは慣れないことも多かった
何せ俺は彼女がいたことがない
女の扱いなんて心得てないんだから、女に翻弄されっぱなしだ
女がチラ見せしたでも俺は鼻血を出すので、女は面白がってやってくる
ふと彼女ができたらこんな感じなのかと思って幸せな気分になった
ある日、俺は暗澹たる気持ちで家に帰った
「どうした、落ち込んでいるのか
お姉さんが慰めてやろうか」
女が笑いながら言う
「うるさい」
今変わっていられる余裕はないのだ
「何かあったのか」
女が心配そうに覗き込む
「わかったぞ
男の子の日だな」
「うるさいって言ってるだろ」
女はきょとんとする
「すまない、大声を出して」
「いや私も悪かった
からかってしまうのは私の悪い癖なのだ
ところで何があった
私にも話せないことなのか」
「それは」
俺は迷う
確かにこいつは俺だ
なら話してもいいんじゃないか
そんな葛藤が生まれる
それを汲んだように女は俺に微笑みかける
「安心して話せ
私はお前だ
きっと同じ悩みを抱えているんじゃないか」
「俺は」
その先が出ない
女は俺の手に優しく手を重ねる 「頑張って」
俺は天井を見上げ、ふうと息を吐いた
そしてゆっくりと話し始めた
「俺は実は妹を殺したんだ
たまにそのことを思い出して辛くなるんだよ」
「あら奇遇ね
私も兄を殺したのよ
辛くはならないけどね」
それから俺たちは一晩中語り合った
なぜ殺したのか、今はどう思っているのか
この他にもたくさんのことを話し合った
生きているのが辛いとか、自分が好きになれないとか
でも二人で話しているとそんな自分を許せる気がした
それは女も同じだったらしい
そして俺たちは惹かれ合っていった
またある日、俺は女をデートに誘った
今までずっと俺の服を着ていたので、女に会う服をプレゼントして、二人で日が暮れるまで遊んだ
「今日は楽しかったよ
ありがとう」
女がはにかんで言う
「俺も楽しかった」
俺はぎこちなく答える
「どうかした」
女が顔を覗き込んでくる
「別になんでもない」
俺は頭を振る
「今思ってることを当ててあげようか」
女がいたずらっぽく言う
「あなたは私のことが好きなんでしょう」
俺はギクリとする
「ああ」
少しぶっきらぼうになってしまった
「なんでわかった」
女は笑って答える
「私たちは同じなんだよ
気持ちも全部わかっちゃうよ」
「まさか、お前も俺のことが好きなのか」
女は顔を赤らめ、ぎこちなくうなずく
その瞬間、女が光の粒子になった
俺は焦る
「どういうことだ
待ってくれよ」
女はかすれた声で答える
「勘のいい君ならもうわかってるんじゃない」
「何のことだ
さすがにさっぱりわからない
待ってくれ、アキラ」
女が笑う
「初めて名前で呼んでくれたね
もう行かなきゃ
これを受け取って」
ひときわ大きな光の粒子が俺の手の中におさまる
「じゃあねあなたに会えてよかった
愛してるよ、アキラ」
そして光の粒子は跡形もなく消えた
俺は呆然として、膝から崩れ落ちた
手からアキラから受け取った光の粒子がこぼれ落ちる
光の粒子が地面に当たって割れた
小さな欠片となって俺の胸に入ってくる
とても温かい
目を開けるとアキラとの思い出が走馬灯のように流れて行った
すぐに見えなくなったが、アキラとの思い出は鮮明に思い出せる
そして何より、今でもアキラがそばにいる気がする
いつも見守ってくれているような明るい感じがするのだ
「もう一度頑張ってみるか」
ふいに言葉が出た
俺は立ち上がり、家を目指す
また明日から俺の大切な人生が始まるんだ
「今回のペアも成功でしたね」
天界で天使が神に言う
「そうだな
自分のことを好きになれないものに、パラレルワールドの自分を会せて間接的に自分を好きになってもらう
この方法でたくさんの命が救われた
ただ、私の力不足ゆえパラレルワールドの二人を同じ世界に住まわせることはできない
私もまだまだ精進しなくては」
神が自己嫌悪に陥っていると、何者かに肩を叩かれた
振り返ると、そこには自分そっくりの女神が立っていた
「ちょっと迷ったみたいなの
私の名前はガビ
あなたの名前は」
神は満面の笑みで答える
「私もガビだ」
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