記憶喪失

記憶喪失

「先生、意識が戻りました」
若い女の声がする
ここはどこだ？
ベッドの上？病院か？
「あなたの名前を言ってください」
私の名前？だめだ思い出せない
「わかりません」
すると医者は一瞬とても悲しい顔をした
「本当にわからないの？」
今度は少し年を取った女が話しかけてきた
「すみません、思い出せません」
すると年を取った女は泣きだし、医者に連れられて部屋を出た
今のはいったい誰だったんだろう
もしかして私の家族だろうか...
診察室に移動して医師は深刻な顔をしていった
「誠に残念ながら、あなたの息子さんは現代では治せない奇病にかかってしまいました
感染を防ぐために殺さなくてはなりません」
「そんな！どうにかならないんですか？」
「どうしようもありません
記憶を失って、自分の名前も言えないのに、日本語はわかる
こんな矛盾した病気が国中に蔓延したら大変だ
治療法がなく、感染を防ぐために安楽死させるのが精いっぱいなのです...」