人身事故

Akira@ショートショーター

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人身事故

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「バカなことをするな
早く上がりなさい」
駅員の怒声がホームに響く
しかし男は動かない
当然だ、死ぬつもりなのだから
駅員はうなる
「意識を失っているのか
これはいかん
すぐに下りて引き上げなければ」
駅員も線路に降りて、男を担ぐ
しかしホームを登ろうとしても、誰も手伝ってくれない
それどころか、ホームのふちにかけた手を踏んでくるのだ
「何をするのですか
あげてくれないと私も、この男も死んでしまう
邪魔するだなんて殺人ですよ」
するとホームにいた人たちがどっと笑う
「いやいや、これは人身事故ですよ
ホームに落ちた人を助けた駅員が男もろとも電車にひかれて死亡
こんな華々しいニュースはない
これで私たちは、堂々と嫌な会社をさぼり、
さらに土産話をすることができる」
呆然とした駅員はそのまま電車にひかれた

「いい演技だったぞ」
みんなの喝采がホームにこだまする
さっきまで駅員に担がれていた男が照れながら言う
「いやいや、気絶するという特技の使い道を教えてくれたのは皆さんですよ
これからも、何かあれば力になりますよ」

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