奇行

奇行

「ちょうちょちょちょ、きれいねすごいねとんでるね」
男は歌いながら絵を描く
絵はぐちゃぐちゃで、まるで幼児が描いたようだ
しかし、絵の主はどう見ても30代半ばだ
この青年の奇行に医師、看護師、親が頭を悩ます
「先生、うちの子はどうしてしまったんでしょうか」
「わかりません
東大を卒業しているし、知的障害の線は薄いでしょう
目立った外傷はないので記憶喪失とも考えにくい
となるとストレスによる幼児退行しかありませんが、お子さんは働かず、ずっと家で、
俗な言い方ですがニートをしていらっしゃったんでしょう？」
「はい、東大を卒業して、10年間ニートをしていましたが、半年ほど前から様子がおかしくなり、手に負えないので病院に来たのです」
医師が唸る
「とりあえず様子を見てみましょう
投薬も試してみてよろしいでしょうか？」
「お願いします」
男の両親は暗澹たる面持ちで診察室を出ていった

一方病室では
「ううむ、まさか病院につれてこられるとは
半年前、幼児プレイにはまり、それからずっと幼児になりきって生活してきたが、ここらが潮時か
まあ、面白いからもう少し続けて見るか…」