剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い1

スミカの時間遡行って?

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「お、親父っ!」

 ゴマチは慌てて父親のアマジの元に向かう。

「どうしたんだ? ゴマチ」

 アマジはそれを見てマジックポーチに武器を収納する。

「あ、あのさ、スミカ姉ちゃんから伝言だったんだけど……」
「伝言? なんだそれは」

「あ、もういいよゴマチ。私が説明するから。ユーアもおいで」
「はいスミカお姉ちゃんっ!」

 ユーアと二人。私に目線を送るアマジの元に行く。
 因みにアマジにやられた4人はそれぞれが重なって気を失っている。

「一体何の用事だ。スミカとその妹よ」
「あ、うん、それなんだけど……」
「う、うん」

 ユーアを交えてルーギルとあの男たちの処遇の話をする。


「なるほど、な。それで俺に協力しろと?」
「うん。そうなんだけど手遅れだったよ」

 私はアマジが起こした惨状を見る。

 そこには一瞬でズタボロにされた4人が転がっていた。

「………………」
「………………」

 持っていた武器も全てへし折られていた。

「………………」
「………………」 

 着ている装備もボロボロだった。

「………………」
「………………」

 鼻が潰れてたり、前歯もない者もいた。

「………………」
「………………」

 腕や足が変な方向に曲がっている者もいた。

「…………やり過ぎだよね?」
「あ、ああ」

「お、親父」
「…………」

 私たちは揃って男たちを眺める。
 これは取り返しが付かないと。

「これでアマジも冷たいご飯を食べる事になるね?」
「冷たい飯だと? 一体どういうことだ」
「だって先に手を出しちゃったんだもん。捕まるよ?」

 私は両手を出して手錠を掛けられる真似をする。

「? いちいちこんな事で捕まるわけなかろう。ただのケンカだからな。しかも俺は手加減してやったのだぞ? ゴマチも見てるし、コイツらも大したことないとわかってたからなっ」

 そんな私に声高に反論するアマジ。

「こ、これが手加減っ!! それってアマジから見た手加減でしょ? 一般人には当てはまらないでしょう? もっと加減しなよ」

 4人の男たちをもう一度見渡して、アマジにそう説教する。

「う、うぐぅ。た、確かにお前の言う通りだ。だが俺だって言いたいことはある」
「ああ、それは分かってるから大丈夫。私も同じ気持ちだから」
「そ、そうか」

 言った通り、実際に私もアマジと同じ気持ちだ。

 アマジが手を出してなかったらきっと私も似たような事をしていた。
 アマジも私も大事なものを貶されたのだから。

「で、これからアマジにもう一度チャンスをあげよう」

 若干肩を落としているアマジにそう提案する。

「チャンス。とは?」
「私が今起きた事を巻き戻すから、最初からやって?」
「ま、巻き戻すだとぉっ!?」

「スミカお姉ちゃんっ!そんな事も出来るのぉっ!?」
「ス、スミカ姉ちゃんって時間を戻すことも出来るのかよぉっ!!」

 それを聞いて、アマジも含めてユーアとゴマチも感嘆の声をあげる。
 二人の子供はキラキラした目で私を見ている。

「う、うん。それじゃ巻き戻すねっ!」

 キラキラ視線に何か罪悪感を感じながらリカバリーポーションを使用する。

「え? スミカお姉ちゃんそれって……」
「スミカ姉ちゃんそれさぁ?」
「………………」

「い、いやこれだって巻き戻してるもんでしょ? アマジにやられた傷なんか全部完治するんだからっ! だから似たようなものでしょうっ?」

 訝し気な視線を向ける三人にそう説明をする。
 二人のキラキラした目はどんよりしていた。

「にしても、ケガはいいが、記憶や装備はどうなる?」
「そ、そうだぞスミカ姉ちゃんっ! こいつらがいくら馬鹿だからって」

 親子二人が揃って、私の考えの穴を付いてくる。
 それも的確に。えぐり込むように……

「ううう、なら最悪武器だけはアマジに任せた。持ってるよね?模擬専用の」
「あ、ああ、持ってはいるが、さすがにこいつらでも……」
「ス、スミカ姉ちゃんっ! き、記憶はどうすんだよっ!」
「き、記憶っ? は…………頑張ろうっ!」
「が、頑張るって何をっ!?」


「うう、俺たち、なぜ地べたで寝てるんだぁ?」

「ああっ!」

 4人の男の一人が目を覚ます。
 そして混乱したように頭を振っている。

『そ、それじゃ頑張ってねっ! 私とユーアは端で見てるからっ!』
 
 私はそれを見て小声でアマジ親子に声を掛ける。
 早くしないと残りも目を覚ましてしまうから。

『えっ? だ、だから頑張るって何をさっ!』
『スミカっ、何をどう頑張ると言うのだっ』

 それに対してすぐさま反応する親子。

『だから頑張るんだよっ!「演技」をっ!』
『え、演技だとっ!?』
『そうだよっ! それじゃ起きちゃうから私たちは行くねっ!ユーアっ』
『は、はいスミカお姉ちゃんっ!』

 シュタタタタ――――

『お、おいっ!――――』
『スミカ姉ちゃんっ!』

 私はユーアの手を引いてそそくさと広場から離れる。
 アマジ親子が何か言ってたけど気にしない。


「うあ、ああ、俺たちは一体……?」
「痛つっ、あん? どこも痛くねぇなぁ?」
「何だ? 装備が所々破けてやがる……」

 私とユーアが離れた瞬間にゾンビの様に残りの男たちも目を覚ます。
 間一髪だった。





「ふぅ~危なかったね? ユーア」
「そ、そうですねっ」

 広場脇に避難してきた私とユーアは顔を見合わせてホッと胸をなでおろす。
 あれ以上あそこにいたら、巻き込まれるところだった。

「それじゃ少し休んで見てようか?」

 私はドリンクタイプのレーションをユーアに渡す。
 「洋梨味」を。

「ありがとうスミカお姉ちゃんっ! あ、冷たいねっ!」
「うん、家の冷蔵庫で冷やした物持ってきたからね」

 私は「抹茶味」を口に含んでそう返す。
 ユーアは美味しそうに「んぐんぐ」飲んでいた。

『さあ、後はアマジ親子次第だね? あの男たちをどう騙すかは』

 私はお手並み拝見とばかりにニヤニヤと二人を眺めるのであった。
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