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the 5th day 情報交換の必要性
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「とりあえず、王女様に危険が迫っている感じはしませんね」
ロキは自室で朝食を取りながら夜間の護衛に付いて感想を言っている。
「ああ、それは俺も同意見だ」
カイもロキに賛成した。
「まぁ、12年前に殺されなかった時点で遺しただけの意図はありますよね」
シンもそう言って食事を始める。
「どうもこの国の王女信仰が気になっている。どういった宗教が、何故王女を信仰するのか。それが王女だけを遺して先王を殺したことに関係はないのか……」
カイはレナが自ら口にしていた『一部の宗教』のことを思い出していた。
「大抵宗教ってのは、何かを起こしたいときの隠れ蓑になりますね。宗教が騎士団を擁立することも珍しくなくなりましたし」
シンがそう言うと、
「貧しい家にも、宗教は優しく近づけるんです。子どもの頃から宗教に触れさせることで忠実な兵士教育ができますしね」
と、ロキが加えた。
「話が早い部下で助かる。その辺のことを、手分けして調べてくれないか?」
カイはそう言いながら着替えをしていた。
「俺、あのお姫様を利用しようとするやつのことは許せないんで、町に出て色々聞き込みしてきます」
と、シンは自分の得意分野に名乗りを上げた。
「じゃあ、俺は国が持っている文献漁りながら、国の中枢の情報を集めてみます」
ロキも自主的に動こうとする。
「ありがとう。助かるよ」
カイが言うと、
「団長、なんか穏やかになりましたね。この国の食べ物がそうさせました?」
と、シンが驚いていた。
「あら、お見合いの護衛はカイがしてくれるの?」
いつものように部屋を訪れた騎士を見て、レナは嬉しそうに言った。
「依頼内容では、俺が担当する主な仕事はこれだったはずだが?」
カイはそう言ってレナを応接室まで誘導する。何となく、この仕事は部下に任せてはいけないと勘が働いていた。
「あなたの部下を信用していないわけじゃないわよ? ただ、終わってからの相談はあなたとしたいわ」
レナは嬉しそうに言いながら、カイのすぐ後ろを歩いている。
「本日は、パースから伯爵がおいでだとか」
カイは過去に仕事をしていたことのあるパースから見合い相手が来ると聞いて、自分を知っている人物だろうかと気になっていた。何しろ、その時のカイの活躍を元にした小説がベストセラーになった国だ。
「ええ、同盟国だから、お見合いの話はよく来るのよ。ここ最近は少し気になる動きも報告されているし、話したいことがあるわね」
あんなに見合いに対して消極的なことを言っていた割に、レナは堂々としていた。
グレージュのスレンダーなドレスにポニーテールを揺らして歩く。髪にはパールを飾っていた。
髪型が王女のスタイルを強調して、風格が漂う。
(第一印象では控え目に見えたが、やはり王女なんだな)
ロキの好きそうな雰囲気だ、と何となく思った。
「お待たせしました。本日はパースから、どうもありがとうございます」
レナが部屋に入ると、50歳くらいの男性と、その息子らしい20歳過ぎ位の男性が座っていた。
「初めまして、ルリアーナ王女殿下。今日のこの日を楽しみにしておりました。クリストファー・シモンズです」
若い男性が席を立ってレナの足元に跪き、手に口付けをした。
「若いもの同士の席にお邪魔してしまい、ご迷惑かと思いましたが、最近はパースからルリアーナに入るのが難しくなっておりましてね。何かあってはと、私も念のために同行した次第です」
同行していた父親らしい男性はそう言ってお辞儀をした。
「やはり、パースとルリアーナの国境を越える時に、支障が出ているのですね」
レナが尋ねると、
「ええ、私は貿易業をしているのですが、輸入品もルリアーナ産のものはパースに入れる時に手続きが大変になりました。以前よりも輸入証明と課税が複雑になり、許可も1ヶ月ほどかかることもあります」
クリストファーもそう言って気まずそうにした。
「実は、この場を設けましたのも、大変申し上げにくいのですが……その辺の話を王女殿下としたいと思ったためでして」
見合いが目的ではない、とハッキリ言わなかったが、つまりはそういうことらしい。
「そうだったんですね。私も現場の声が聞けないので、出来れば色々と教えていただきたいと思っていたところです。まさかお見合いの席にその話をしに来る方がいるとは思わなかったので驚いていますが、ありがたいです」
レナは特に気にもしていない様子で、心からのお礼を言っている。
「いえ、お見合いの話に全く興味がなかったわけではないんです、その、ルリアーナ王女殿下のことは、存じ上げておりましたから」
と、クリストファーは丁寧に否定をした。
「お会いして、実際にとても素敵な方だと思いました。出来れば、情報交換とお見合いの時間を設けていただきたいのです」
クリストファーは、ゆっくりと丁寧に説明する姿が誠実そうな男性だった。
「私からも、お願いします。パースとルリアーナのために、お時間をいただきたい」
父親らしい男性からも頼まれると、レナは、
「断る理由が見つかりません。こちらこそ、お願いします」
と、微笑んだ。
カイとレナがいつもの部屋に戻ると、お互い黙って頭の中を整理していた。
(何が起きているんだ。パースとルリアーナの間で、何が起きようとしている?)
「分からないわ」
レナが先に口を開いた。
「誰が何故、何のために輸入の手続きを難しくしているのか、調べる手段はないのかしら」
「現場の声が上がってこない理由があると考えた方が良いかもしれない」
カイはそう言って、本日の見合い話についてスコアを求める。
「人柄」
「7」
「信用」
「6」
「一緒にいたいと思えるか」
「6」
「よし、及第点だ」
カイがそう言って見合いを進めようとすると、
「違うわよ、7が2つで次に進めるんでしょ?」
とレナが反論する。
「良いことを教えてやる。一回の見合いで信用させて一緒にいたいと思わせるようなやつは、よっぽど顔が好みで無条件に信じたくなったか、詐欺師だろうな」
と、カイは自分がした提案だというのに、ハッキリと否定した。
「今日の見合いは絶対に進める。異論は?」
「ないわよ」
レナはムスッとしながら返事をした。
ロキは自室で朝食を取りながら夜間の護衛に付いて感想を言っている。
「ああ、それは俺も同意見だ」
カイもロキに賛成した。
「まぁ、12年前に殺されなかった時点で遺しただけの意図はありますよね」
シンもそう言って食事を始める。
「どうもこの国の王女信仰が気になっている。どういった宗教が、何故王女を信仰するのか。それが王女だけを遺して先王を殺したことに関係はないのか……」
カイはレナが自ら口にしていた『一部の宗教』のことを思い出していた。
「大抵宗教ってのは、何かを起こしたいときの隠れ蓑になりますね。宗教が騎士団を擁立することも珍しくなくなりましたし」
シンがそう言うと、
「貧しい家にも、宗教は優しく近づけるんです。子どもの頃から宗教に触れさせることで忠実な兵士教育ができますしね」
と、ロキが加えた。
「話が早い部下で助かる。その辺のことを、手分けして調べてくれないか?」
カイはそう言いながら着替えをしていた。
「俺、あのお姫様を利用しようとするやつのことは許せないんで、町に出て色々聞き込みしてきます」
と、シンは自分の得意分野に名乗りを上げた。
「じゃあ、俺は国が持っている文献漁りながら、国の中枢の情報を集めてみます」
ロキも自主的に動こうとする。
「ありがとう。助かるよ」
カイが言うと、
「団長、なんか穏やかになりましたね。この国の食べ物がそうさせました?」
と、シンが驚いていた。
「あら、お見合いの護衛はカイがしてくれるの?」
いつものように部屋を訪れた騎士を見て、レナは嬉しそうに言った。
「依頼内容では、俺が担当する主な仕事はこれだったはずだが?」
カイはそう言ってレナを応接室まで誘導する。何となく、この仕事は部下に任せてはいけないと勘が働いていた。
「あなたの部下を信用していないわけじゃないわよ? ただ、終わってからの相談はあなたとしたいわ」
レナは嬉しそうに言いながら、カイのすぐ後ろを歩いている。
「本日は、パースから伯爵がおいでだとか」
カイは過去に仕事をしていたことのあるパースから見合い相手が来ると聞いて、自分を知っている人物だろうかと気になっていた。何しろ、その時のカイの活躍を元にした小説がベストセラーになった国だ。
「ええ、同盟国だから、お見合いの話はよく来るのよ。ここ最近は少し気になる動きも報告されているし、話したいことがあるわね」
あんなに見合いに対して消極的なことを言っていた割に、レナは堂々としていた。
グレージュのスレンダーなドレスにポニーテールを揺らして歩く。髪にはパールを飾っていた。
髪型が王女のスタイルを強調して、風格が漂う。
(第一印象では控え目に見えたが、やはり王女なんだな)
ロキの好きそうな雰囲気だ、と何となく思った。
「お待たせしました。本日はパースから、どうもありがとうございます」
レナが部屋に入ると、50歳くらいの男性と、その息子らしい20歳過ぎ位の男性が座っていた。
「初めまして、ルリアーナ王女殿下。今日のこの日を楽しみにしておりました。クリストファー・シモンズです」
若い男性が席を立ってレナの足元に跪き、手に口付けをした。
「若いもの同士の席にお邪魔してしまい、ご迷惑かと思いましたが、最近はパースからルリアーナに入るのが難しくなっておりましてね。何かあってはと、私も念のために同行した次第です」
同行していた父親らしい男性はそう言ってお辞儀をした。
「やはり、パースとルリアーナの国境を越える時に、支障が出ているのですね」
レナが尋ねると、
「ええ、私は貿易業をしているのですが、輸入品もルリアーナ産のものはパースに入れる時に手続きが大変になりました。以前よりも輸入証明と課税が複雑になり、許可も1ヶ月ほどかかることもあります」
クリストファーもそう言って気まずそうにした。
「実は、この場を設けましたのも、大変申し上げにくいのですが……その辺の話を王女殿下としたいと思ったためでして」
見合いが目的ではない、とハッキリ言わなかったが、つまりはそういうことらしい。
「そうだったんですね。私も現場の声が聞けないので、出来れば色々と教えていただきたいと思っていたところです。まさかお見合いの席にその話をしに来る方がいるとは思わなかったので驚いていますが、ありがたいです」
レナは特に気にもしていない様子で、心からのお礼を言っている。
「いえ、お見合いの話に全く興味がなかったわけではないんです、その、ルリアーナ王女殿下のことは、存じ上げておりましたから」
と、クリストファーは丁寧に否定をした。
「お会いして、実際にとても素敵な方だと思いました。出来れば、情報交換とお見合いの時間を設けていただきたいのです」
クリストファーは、ゆっくりと丁寧に説明する姿が誠実そうな男性だった。
「私からも、お願いします。パースとルリアーナのために、お時間をいただきたい」
父親らしい男性からも頼まれると、レナは、
「断る理由が見つかりません。こちらこそ、お願いします」
と、微笑んだ。
カイとレナがいつもの部屋に戻ると、お互い黙って頭の中を整理していた。
(何が起きているんだ。パースとルリアーナの間で、何が起きようとしている?)
「分からないわ」
レナが先に口を開いた。
「誰が何故、何のために輸入の手続きを難しくしているのか、調べる手段はないのかしら」
「現場の声が上がってこない理由があると考えた方が良いかもしれない」
カイはそう言って、本日の見合い話についてスコアを求める。
「人柄」
「7」
「信用」
「6」
「一緒にいたいと思えるか」
「6」
「よし、及第点だ」
カイがそう言って見合いを進めようとすると、
「違うわよ、7が2つで次に進めるんでしょ?」
とレナが反論する。
「良いことを教えてやる。一回の見合いで信用させて一緒にいたいと思わせるようなやつは、よっぽど顔が好みで無条件に信じたくなったか、詐欺師だろうな」
と、カイは自分がした提案だというのに、ハッキリと否定した。
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