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the 23rd day 汚れた手
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4名の侵入者を撃退し、カイが自室に戻る。部下の2名がホッとした顔をしながら明るい顔でカイを迎え入れた。
「ご無事で、安心しました」
シンが嬉しそうに声を上げた。緊張していたのだろうか、少し態度が硬い。
「4名、その後の処理は任せて来たが、確実に絶命させている。それ以外の敵の気配は、城内含めて今のところゼロだ」
カイがそう言って、2人を安心させた。
「何か被害はあったんですか?」
ロキが心配そうに尋ねたので、門番が深めの怪我を負っていたが無事だったことなどを報告した。
「流石と言うしかないですね。この短時間で、一体どんな戦いを繰り広げたのか……」
ロキは改めてカイの強さを見せつけられ感嘆する。サラを迎えに行った時に戦った兵士は、戦い慣れた熟練の兵士に違いなかったのに、カイには激しく争ったような様子がどこにもない。
「それは、褒められているのか?」
カイはロキに尋ねる。
「褒めてしかいません。敵わないなと」
ロキはそう言って、圧倒的な強さを持った騎士団長をじっと見ていた。
「そうか。てっきり、また人間離れを揶揄されたのかと」
カイが何気なく言う。
「騎士が騎士の強さに驚いていたら、それは誉め言葉なんですよ」
ロキがそう言うと、カイは「そうか」と口元で笑った。
シンとロキは、カイの圧倒的な強さに憧れていた。今回の任務では、その強さを見ることができていなかったが、やはりこれがカイ・ハウザーなのだと目の前の男に畏敬の念を抱き、同時に安心する。
「先程の4名が、殿下を訪ねて来る予定の正教会側の人間だったとしたら、最悪な催しだな」
カイはそう言って、大きな被害を防げたことに安堵しながら、収穫祭の好まざる客の来訪にレナへの報告を迷う。
(殿下には、あまり精神的に負担を掛けない方がいいだろうな……)
ただ、ここまで騒ぎが大きくなってしまった以上、他の者から報告が入るのも時間の問題かもしれない。
カイは、また自分の手が血にまみれたことに、悔恨の思いが抑えきれなかった。戦いを好まない王女に人を殺した報告をすることが、こんなに気の進まない事なのだと知る。
4名相手に手加減をしていたら、いくらカイが能力者だったとしてもやられていたかもしれない。あの場で兵士を殺めることになったのは必然だったと納得しているのだが。
(『騎士物語』を読んでいるなら、とっくに殺しに慣れた男だと認識されているだろうな)
カイがそんなことを考えながら物憂げな表情をしているのを、シンとロキは見逃さなかった。
「団長、殿下のことは、何があっても守ります」
シンはカイに向かって言った。シンの決意は、カイが戦ってきたことへの肯定でもあった。
「あーあ、シンに先に言われちゃったな……」
ロキはシンに対して少し不満そうにそう言った。
「頼りにしている」
カイは硬くなっていた表情を崩す。部下2人の気遣いがありがたかった。
(やるべきことを、やったまでか)
まだ全てが片付いたわけではない。たった4名の侵入者を撃退しただけだ、とカイは気を引き締めた。
「ご無事で、安心しました」
シンが嬉しそうに声を上げた。緊張していたのだろうか、少し態度が硬い。
「4名、その後の処理は任せて来たが、確実に絶命させている。それ以外の敵の気配は、城内含めて今のところゼロだ」
カイがそう言って、2人を安心させた。
「何か被害はあったんですか?」
ロキが心配そうに尋ねたので、門番が深めの怪我を負っていたが無事だったことなどを報告した。
「流石と言うしかないですね。この短時間で、一体どんな戦いを繰り広げたのか……」
ロキは改めてカイの強さを見せつけられ感嘆する。サラを迎えに行った時に戦った兵士は、戦い慣れた熟練の兵士に違いなかったのに、カイには激しく争ったような様子がどこにもない。
「それは、褒められているのか?」
カイはロキに尋ねる。
「褒めてしかいません。敵わないなと」
ロキはそう言って、圧倒的な強さを持った騎士団長をじっと見ていた。
「そうか。てっきり、また人間離れを揶揄されたのかと」
カイが何気なく言う。
「騎士が騎士の強さに驚いていたら、それは誉め言葉なんですよ」
ロキがそう言うと、カイは「そうか」と口元で笑った。
シンとロキは、カイの圧倒的な強さに憧れていた。今回の任務では、その強さを見ることができていなかったが、やはりこれがカイ・ハウザーなのだと目の前の男に畏敬の念を抱き、同時に安心する。
「先程の4名が、殿下を訪ねて来る予定の正教会側の人間だったとしたら、最悪な催しだな」
カイはそう言って、大きな被害を防げたことに安堵しながら、収穫祭の好まざる客の来訪にレナへの報告を迷う。
(殿下には、あまり精神的に負担を掛けない方がいいだろうな……)
ただ、ここまで騒ぎが大きくなってしまった以上、他の者から報告が入るのも時間の問題かもしれない。
カイは、また自分の手が血にまみれたことに、悔恨の思いが抑えきれなかった。戦いを好まない王女に人を殺した報告をすることが、こんなに気の進まない事なのだと知る。
4名相手に手加減をしていたら、いくらカイが能力者だったとしてもやられていたかもしれない。あの場で兵士を殺めることになったのは必然だったと納得しているのだが。
(『騎士物語』を読んでいるなら、とっくに殺しに慣れた男だと認識されているだろうな)
カイがそんなことを考えながら物憂げな表情をしているのを、シンとロキは見逃さなかった。
「団長、殿下のことは、何があっても守ります」
シンはカイに向かって言った。シンの決意は、カイが戦ってきたことへの肯定でもあった。
「あーあ、シンに先に言われちゃったな……」
ロキはシンに対して少し不満そうにそう言った。
「頼りにしている」
カイは硬くなっていた表情を崩す。部下2人の気遣いがありがたかった。
(やるべきことを、やったまでか)
まだ全てが片付いたわけではない。たった4名の侵入者を撃退しただけだ、とカイは気を引き締めた。
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