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第三章
02-2
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「それでね私、ワーキングホリデー行きたいのよ。オーストラリアに。……っていうか、来年の今頃はもう行ってる予定なの!資料だって請求しちゃったんだから!」
洋太が住むK市からJRで数駅先にあるY市の駅周辺は都心さながらの高層ビルが立ち並ぶ商業オフィス街だ。その中にある外資系ラグジュアリーホテルのロビーに併設された豪華なカフェテリアの一席で、若い男女二人が向かい合って座っていた。先ほどの発言は、その女性のほうから発せられたものだった。
ここは両家のお見合いの会場であり、普通なら顔合わせの会食後には「あとは若い人同士で……」となるところを、この日は朝から生憎の雨模様だったので、ホテルの回遊式庭園が使えず、一階のカフェで若い二人が歓談しているというわけだった。
オーダーメイドとはいえ着慣れないスリーピースのダークスーツと、母から誕生日プレゼントにもらったバーガンディのチェック柄のネクタイ。糊の効き過ぎたカラーのワイシャツ。爪先の尖った革靴などが窮屈で仕方なかった洋太は、目の前に座った鮮やかなピンクの最新流行柄の振袖姿の女性の、ばっちりマスカラが効いた釣り気味の大きな両目を見つめて素っ頓狂な声を上げた。
「そ、そうなんですか……真矢さん?!」
「そうなの‼ もー、だから本町の大おばさまにも困ったもんだわよ。第一、こんな若くて可愛い子に、何も私みたいな年上を無理やり押し付けなくってもねえ……」
見合いの場で大森真矢と紹介されていたその女性は、そう言って振袖から覗く健康的な小麦色の右手を振ると、豪快にからからと笑った。マニキュアに飾り付けられた小さなパールがシャンデリアを反射して光っている。
隣の市の寺に嫁に行った大叔母さんこと、洋太の祖父の妹は年の割にまだまだしっかり者で、自分の家の跡継ぎの息子たちのみならず、甥や姪、孫たちの将来についても何かとお節介を焼くのが常だった。
寺という特殊な世界で血筋を繋いでいくための努力が必要なことは確かだし、彼女が悪気でやっているわけではないのも皆わかっているので一応、指令が来れば尊重はするが、やはりその世間への気の回し方が、少々時代に合わなくなっている面もあるのでは……と洋太などは思うのだった。
その昔、大叔母が嫁入った寺は姑が大変厳しい家で自分自身がそこで苦労したせいか、洋太の父と母が離婚するかもしれないとなった際には、この人が躊躇する祖父の尻を叩いて、最終的に父が一人で出て行く決断をさせたと聞いていた。そのため洋太にとっては少々複雑というか、どちらかというと苦手な相手だった。
真矢は地元の総合病院で看護師をしているそうで、年齢は洋太の姉の歩美より二つ上だ。趣味はスキューバダイビングで、洋太の住むK市にはちょくちょくダイビングで来ているらしい。
裏表のなさそうな性格と見えて、先ほどまでの高級懐石料理店のお座敷でのかしこまった見合いの席では言いたいことが一つも言えないので、着物の苦しさとも相まって息が詰まりそうだったらしい。
「ね? だから、私達がこっそり示し合わせて、このお話、破談にしちゃえばいいと思わない?!」
いたずらを思いついた女子中学生のようなわくわくした表情で、真矢が洋太に提案する。ようやく理解が追い付いてきた洋太が、急に不安になって周囲をきょろきょろ見回しながら小声で問いかけた。
「そんなこと本当に出来るんですか? オレ、見合いのシステムって、いまいちよくわかんなくて……」
「出来る出来る! 何でもうわさでは、両方の家から同時に”……残念ですが、今回のお話はなかったことに……”ってやるのが、一番角が立たないらしいのよね。LIMEで連絡取りあってやれば楽勝!」
途中で臨場感たっぷりに声真似まで入れて、真矢が作戦内容を伝える。なるほどーと乗り気になってきた洋太がその場でLIMEを交換すると、ようやく気が楽になったのか、真矢がふかふかのソファに埋まって盛大に伸びをした。振袖の後ろ側にある立派な立て矢結びの飾り帯が潰れてしまわないか、洋太のほうがハラハラする。
「あーよかったぁ……! 危うく、数年越しの資金計画が無駄になるとこだったわ。絶対、ワーホリでオーストラリアに行ってスキューバ三昧しながら、クリフェム似のやさしーい彼氏ゲットするって決めてたんだから!」
(クリフェムって外国の俳優さん? 正直な人だなー……でも、こっちほうがさっきまでのツンとした感じより、ずっと魅力的に見えるかも)
洋太も少しほっとした思いで、テーブルの上で冷めてしまっていたコーヒーカップを手に取った。
急に真矢が、今さら思い出したという様子で洋太に確認する。
「洋太くんもこれでよかったのよね? だって君、好きな人いるんでしょ?」
「……っ……?!」
ブフッ、とコーヒーを噴き出しそうになって、あわてて洋太が紙ナプキンで口の周辺を拭う。ワイシャツに染みが付いていないか確認してから、驚きのあまり眉を下げて真矢の発言を否定する洋太。
「オレ、そんなこと言いましたっけ……?! い、いないですよ! 全然!」
「あれ? そうなの? ……ごめん、私てっきり、いるんだとばかり……ええー? 彼女いないの? 本当に?! おっかしーなぁ……」
そう言いながら真矢がいぶかしそうな顔で、洋太を上から下までじろじろ見回している。
「いないですって! 彼女とか、もう何年も! 好きな人ですら――」
そこまで言った時ふと洋太の脳裏に、西日が射し込むどこかのカフェの窓際で頬杖をつきながら、黙って洋太を見つめて話を聞いている順平の穏やかな顔が浮かんで、思わず言葉が途切れた。
(……あれ? なんで今、順平の顔が……?)
一瞬の間があった後で、突然、ボフンッと音がしそうなくらいの勢いで洋太の顔が真っ赤になる。それを見た真矢がニヤリと笑って勝ち誇ったように言った。
「あ、ほらー! やっぱりいるんじゃない! じゃ、これで共犯関係は安心ね」
ホテルのラウンジで待っている他の家族と合流するため、真矢の後ろに続いて店を出ながら、洋太の頭は混乱していた。
(え? 何だったんだ、さっきの……? 何でオレ、順平のこと思い出しただけで、今でもこんなに心臓がバクバクして……? ええ?)
水を飲んでも掌であおいでも、頬に昇った熱がなかなか下がらず、意図しない自分の体の反応に、洋太はひたすら戸惑っていた。
順平の、真冬の夜空を映した湖みたいに深い漆黒の瞳や、笑うとわずかに真っ白い歯が覗く男らしい口元、重い扉を洋太の代わりに開けてくれる大きくて温かい手などが、しきりに脳裏にチラついて消えてくれない。
(ど、どうしよう……男友達のこと考えてこんな風になるのって絶対、変だよな? 今度、順平に会う時、オレどんな顔したらいいんだろう……? ていうか、もしも、あいつの目の前でもこんな風になったら、なんて言い訳すれば……?)
一緒に来た着物姿の母親が、浮かない顔をしている洋太に気づいて、気遣う表情で近寄って来る。レースのハンカチで口元を隠すと、小さな声で
「洋太、大丈夫……? 昨夜も話したけど、もし本当に嫌だったら、家のために無理しないでいいのよ? 大叔母様には、お母さんがちゃんとお話しますからね」
洋太は内心混乱しつつも、母親にこれ以上の心配を掛けないように無理やり笑顔を作る。末っ子だからこそ、そういう習性が身についていた。
「オレは平気だよ、お母さん。真矢さんもすごく話しやすい人だったし……」
「そう? それならいいんだけど……」
ちょうど、今しがた挨拶して別れたばかりの向こうの家族の中から、すらりと背の高い真矢が振り返り、ウインクしつつ小さくスマホを振っている。まるで”作戦、忘れないでよ”と言っているようだ。
「ほら、ね?」
ホッとした気持ちで洋太が笑う。母はその表情にいつもの息子の天真爛漫な明るさとは何か違う、やや不穏なものを感じ取っていたが、それ以上は表に出さなかった。少し離れて歩く息子を心配そうに見つめている。
洋太はまだ頭の中に居座ったままの、実物以上に魅力的に見える順平のグラビア集みたいな回想シーンに悩まされつつ、今度会った時はどうやって相手の前で赤面せずに平常心を保とうか……? と考えていた。
(くっそー……そもそも何でオレが、こんなこと悩まなきゃいけないんだ? 順平の野郎、覚えてろよ!)
曇り空を見上げてそんな風に毒づいてみても、胸の奥の鼓動はいつもより早いままで。八つ当たり的な言葉とは裏腹ながら、無性に、今すぐ順平に会って話したいような、次に会うのが何だか怖いような……そんな苦しくも甘い、どこか矛盾した感情に振り回され続けている洋太だった。
洋太が住むK市からJRで数駅先にあるY市の駅周辺は都心さながらの高層ビルが立ち並ぶ商業オフィス街だ。その中にある外資系ラグジュアリーホテルのロビーに併設された豪華なカフェテリアの一席で、若い男女二人が向かい合って座っていた。先ほどの発言は、その女性のほうから発せられたものだった。
ここは両家のお見合いの会場であり、普通なら顔合わせの会食後には「あとは若い人同士で……」となるところを、この日は朝から生憎の雨模様だったので、ホテルの回遊式庭園が使えず、一階のカフェで若い二人が歓談しているというわけだった。
オーダーメイドとはいえ着慣れないスリーピースのダークスーツと、母から誕生日プレゼントにもらったバーガンディのチェック柄のネクタイ。糊の効き過ぎたカラーのワイシャツ。爪先の尖った革靴などが窮屈で仕方なかった洋太は、目の前に座った鮮やかなピンクの最新流行柄の振袖姿の女性の、ばっちりマスカラが効いた釣り気味の大きな両目を見つめて素っ頓狂な声を上げた。
「そ、そうなんですか……真矢さん?!」
「そうなの‼ もー、だから本町の大おばさまにも困ったもんだわよ。第一、こんな若くて可愛い子に、何も私みたいな年上を無理やり押し付けなくってもねえ……」
見合いの場で大森真矢と紹介されていたその女性は、そう言って振袖から覗く健康的な小麦色の右手を振ると、豪快にからからと笑った。マニキュアに飾り付けられた小さなパールがシャンデリアを反射して光っている。
隣の市の寺に嫁に行った大叔母さんこと、洋太の祖父の妹は年の割にまだまだしっかり者で、自分の家の跡継ぎの息子たちのみならず、甥や姪、孫たちの将来についても何かとお節介を焼くのが常だった。
寺という特殊な世界で血筋を繋いでいくための努力が必要なことは確かだし、彼女が悪気でやっているわけではないのも皆わかっているので一応、指令が来れば尊重はするが、やはりその世間への気の回し方が、少々時代に合わなくなっている面もあるのでは……と洋太などは思うのだった。
その昔、大叔母が嫁入った寺は姑が大変厳しい家で自分自身がそこで苦労したせいか、洋太の父と母が離婚するかもしれないとなった際には、この人が躊躇する祖父の尻を叩いて、最終的に父が一人で出て行く決断をさせたと聞いていた。そのため洋太にとっては少々複雑というか、どちらかというと苦手な相手だった。
真矢は地元の総合病院で看護師をしているそうで、年齢は洋太の姉の歩美より二つ上だ。趣味はスキューバダイビングで、洋太の住むK市にはちょくちょくダイビングで来ているらしい。
裏表のなさそうな性格と見えて、先ほどまでの高級懐石料理店のお座敷でのかしこまった見合いの席では言いたいことが一つも言えないので、着物の苦しさとも相まって息が詰まりそうだったらしい。
「ね? だから、私達がこっそり示し合わせて、このお話、破談にしちゃえばいいと思わない?!」
いたずらを思いついた女子中学生のようなわくわくした表情で、真矢が洋太に提案する。ようやく理解が追い付いてきた洋太が、急に不安になって周囲をきょろきょろ見回しながら小声で問いかけた。
「そんなこと本当に出来るんですか? オレ、見合いのシステムって、いまいちよくわかんなくて……」
「出来る出来る! 何でもうわさでは、両方の家から同時に”……残念ですが、今回のお話はなかったことに……”ってやるのが、一番角が立たないらしいのよね。LIMEで連絡取りあってやれば楽勝!」
途中で臨場感たっぷりに声真似まで入れて、真矢が作戦内容を伝える。なるほどーと乗り気になってきた洋太がその場でLIMEを交換すると、ようやく気が楽になったのか、真矢がふかふかのソファに埋まって盛大に伸びをした。振袖の後ろ側にある立派な立て矢結びの飾り帯が潰れてしまわないか、洋太のほうがハラハラする。
「あーよかったぁ……! 危うく、数年越しの資金計画が無駄になるとこだったわ。絶対、ワーホリでオーストラリアに行ってスキューバ三昧しながら、クリフェム似のやさしーい彼氏ゲットするって決めてたんだから!」
(クリフェムって外国の俳優さん? 正直な人だなー……でも、こっちほうがさっきまでのツンとした感じより、ずっと魅力的に見えるかも)
洋太も少しほっとした思いで、テーブルの上で冷めてしまっていたコーヒーカップを手に取った。
急に真矢が、今さら思い出したという様子で洋太に確認する。
「洋太くんもこれでよかったのよね? だって君、好きな人いるんでしょ?」
「……っ……?!」
ブフッ、とコーヒーを噴き出しそうになって、あわてて洋太が紙ナプキンで口の周辺を拭う。ワイシャツに染みが付いていないか確認してから、驚きのあまり眉を下げて真矢の発言を否定する洋太。
「オレ、そんなこと言いましたっけ……?! い、いないですよ! 全然!」
「あれ? そうなの? ……ごめん、私てっきり、いるんだとばかり……ええー? 彼女いないの? 本当に?! おっかしーなぁ……」
そう言いながら真矢がいぶかしそうな顔で、洋太を上から下までじろじろ見回している。
「いないですって! 彼女とか、もう何年も! 好きな人ですら――」
そこまで言った時ふと洋太の脳裏に、西日が射し込むどこかのカフェの窓際で頬杖をつきながら、黙って洋太を見つめて話を聞いている順平の穏やかな顔が浮かんで、思わず言葉が途切れた。
(……あれ? なんで今、順平の顔が……?)
一瞬の間があった後で、突然、ボフンッと音がしそうなくらいの勢いで洋太の顔が真っ赤になる。それを見た真矢がニヤリと笑って勝ち誇ったように言った。
「あ、ほらー! やっぱりいるんじゃない! じゃ、これで共犯関係は安心ね」
ホテルのラウンジで待っている他の家族と合流するため、真矢の後ろに続いて店を出ながら、洋太の頭は混乱していた。
(え? 何だったんだ、さっきの……? 何でオレ、順平のこと思い出しただけで、今でもこんなに心臓がバクバクして……? ええ?)
水を飲んでも掌であおいでも、頬に昇った熱がなかなか下がらず、意図しない自分の体の反応に、洋太はひたすら戸惑っていた。
順平の、真冬の夜空を映した湖みたいに深い漆黒の瞳や、笑うとわずかに真っ白い歯が覗く男らしい口元、重い扉を洋太の代わりに開けてくれる大きくて温かい手などが、しきりに脳裏にチラついて消えてくれない。
(ど、どうしよう……男友達のこと考えてこんな風になるのって絶対、変だよな? 今度、順平に会う時、オレどんな顔したらいいんだろう……? ていうか、もしも、あいつの目の前でもこんな風になったら、なんて言い訳すれば……?)
一緒に来た着物姿の母親が、浮かない顔をしている洋太に気づいて、気遣う表情で近寄って来る。レースのハンカチで口元を隠すと、小さな声で
「洋太、大丈夫……? 昨夜も話したけど、もし本当に嫌だったら、家のために無理しないでいいのよ? 大叔母様には、お母さんがちゃんとお話しますからね」
洋太は内心混乱しつつも、母親にこれ以上の心配を掛けないように無理やり笑顔を作る。末っ子だからこそ、そういう習性が身についていた。
「オレは平気だよ、お母さん。真矢さんもすごく話しやすい人だったし……」
「そう? それならいいんだけど……」
ちょうど、今しがた挨拶して別れたばかりの向こうの家族の中から、すらりと背の高い真矢が振り返り、ウインクしつつ小さくスマホを振っている。まるで”作戦、忘れないでよ”と言っているようだ。
「ほら、ね?」
ホッとした気持ちで洋太が笑う。母はその表情にいつもの息子の天真爛漫な明るさとは何か違う、やや不穏なものを感じ取っていたが、それ以上は表に出さなかった。少し離れて歩く息子を心配そうに見つめている。
洋太はまだ頭の中に居座ったままの、実物以上に魅力的に見える順平のグラビア集みたいな回想シーンに悩まされつつ、今度会った時はどうやって相手の前で赤面せずに平常心を保とうか……? と考えていた。
(くっそー……そもそも何でオレが、こんなこと悩まなきゃいけないんだ? 順平の野郎、覚えてろよ!)
曇り空を見上げてそんな風に毒づいてみても、胸の奥の鼓動はいつもより早いままで。八つ当たり的な言葉とは裏腹ながら、無性に、今すぐ順平に会って話したいような、次に会うのが何だか怖いような……そんな苦しくも甘い、どこか矛盾した感情に振り回され続けている洋太だった。
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