もっと「えんじぇる おぶざ~ば~」

蒼上愛三(あおうえあいみ)

文字の大きさ
26 / 27
冬の祭日

メリークリオス

しおりを挟む
 日本では宗教にかかわらず祭日としてクリスマスを楽しむのだそうだ。私は真理亜様と一緒にクリスマスツリーなる物の飾り付けを進行している。けれどやはりいつでも邪魔をしてはしゃぎまわりるうつけ者が、今日も今日とてやってきた。
「メリークリオス。略してメリクリでありますよー」
「略は合っていますが、クリオスの場合讃えるに値しない物が混ざっています」
 真理亜様は微妙な表情で私たちのやりとりを見ていらっしゃいます。
「真理亜様、メリークリオスということはクリオスに沢山プレゼントが贈られてくるのです?」
「うーん、どうかなぁ、あははは」
「真理亜様を困らせてどうするのですか。それに趣旨がおかしな事になっています」
 私は口を尖らせたクリオスにツリーの飾りを半ば強制的に持たせて、飾り付けを手伝わさせた。
「やっぱり他の神を祝うなんて、クリオス納得できないです」
「だからと言って、あなたを祝っても仕方がないでしょ」
 おそらくこの一言が、妹の何かに火をつけてしまったのでしょう。何しろ彼女は、根っからの、そして生粋のトラブルメーカーなのですから。
 明日はクリスマス当日、そして今日はイブと呼ばれる前夜祭を行う事になっているそうなのですが、クリオスの姿がありませんでした。
「姉様、クリオスがいないのですが、どこへ行ったのかご存知でしょうか」
「いいえ、見てないわね。そういえば若は今日帰りが遅くなるんだって、なんか玩具メーカーの知り合いのクリスマス商戦の手伝いらしいわよ。案外そっちについて行ったのかも」
 一応、私たちも子供の夢や希望から再び生まれた存在ではありますが、一つ危険な側面も孕んでいるのです。それは子供たちの恐怖や絶望なども私たちは体現できてしまうこと。
 しかし、そんなことは万が一にでもクリオスは承知のはず。・・・・・なのですがやはり不安です。ことがことだけにもしもということもありますから、一刻も早くあの子を見つけ、なにも起こらないようにしなくては。
 私は単身で都市部までやってきました。若様のいらっしゃる仕事場まであと少しというところで、問題児の後ろ姿を見つけることができました。
「メリークリオス、メリークリオス」
「なにをしているのですかクリオス。帰りますよ」
「若様のお手伝いをしているのですよ。終わるまで帰れません」
「若様のお手伝いを隠蓑にするのは許せません。あなたの手に持っているのは、なんなんです」
「うーん、・・・・・プレゼントですよぉ~」
 妹が手に持っていた袋には沢山のぬいぐるみが詰め込まれています。しかしその全てがクリオスを形取ったもので、正直そこまで押し付けがましいと、むしろストレス発散用に一つ欲しいくらいです。使い道は邪の道となりましょうが、それはそれということで。
「これを配ることのどこが、お手伝いだというのでしょうか。自らを模した人形を配るだなんて」
「なにを言いますかコイオス、近頃、美麗殿が戻られてからというもの、姉様は美麗様とベッタリ、空気のような存在と雑なカット、そして賑やかしのために無理矢理ねじ込んだかのような配役。クリオスはこの待遇にもの申したいのであります」
 ズイと、強気な姿勢で私に突っかかるクリオスは禍々しい?様なオーラを纏っています。ちょっとヤバイかもですね。
「メリー、クリオス、Let’s Party 」
「メリークリオス」
「メリークリオス」
「メリークリオス」
 クリオスが雄叫びを上げると一斉に聞こえてくる歓声で街中が埋め尽くされていきます。なんということでしょう。
「若様、早くお逃げく・・だ・・・さい」
「ハッピー、クリオス。いやぁ、いい日だな今日は」
「・・・・・」
 恐れていた事態になりました。恐らくクリオスの配っていた人形がこの現象を引き起し、拡散させるためのマジックアイテムのような働きをしているのでしょう。
 ならば元を叩くまでのこと。
「心苦しいですが、これ以上の狼藉許せません。クリオス、決着をつけましょう!」
「のぞむところなのデス!」
 私は幻術式・ステルスを発動しクリオスに格闘戦を仕掛けます。対してクリオスは幻術式・シャドウを発動し、半透明な黒いダガーナイフを構えて対抗しています。
 彼女は、影を捉えるのが得意なのでステルスは時間稼ぎにしかなりません。なぜならばたとえステルスだとしても、存在がそこにあるというだけで、気配の影が実証されることと同義だからです。
 クリオスは野生的本能で、私の蹴り上げを見事に避けます。プルト様直伝の格闘術ですが、やはり出力は劣るので破壊力があの方とは違います。あの方が山を砕くなら、私は岩を削るので精一杯なのです。
 クリオスは、隙をついてダガーを水平に振るって、回転しながら連続に斬り込んできます。私はそれを手の甲でいなしながら、隙を窺いながら、脚を掛けて転ばせます。転んだ拍子にクリオスは左手に持っていたダガーをすかさず投げつけてきました。飛んできたダガーは、私の頬をかすめショウウィンドウのガラスを砕きます。
 その時、ビリビリと体が痺れて私は膝を折りその場に倒れました。目の前に得意げに不敵な笑みを浮かべていた妹も体を痙攣させてその場で沈黙しました。
 一体なにが、と思った次の瞬間私はいつもの若田家の天井を見ていました。
「あっ起きましたか。コイオス飾り付けの途中で寝ちゃうからクリオスが全部終わらせたですよ~」
「夢ですか。ハァー」
「何か言いましたか」
「いえなにも。ありがとうございますクリオス」
 私はどうやらコタツで眠ってしまっていたようです。私は立ち上がり真理亜様のご馳走を食卓に並べるお手伝いをして、聖夜を皆様と楽しみました。



 ツリーにクリオス人形が飾られているとも知らずに・・・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...