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麗らかな日常
私の暮らし
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学校に登校し私は席に座った。
なんだか今日はみんな来るのが遅いわね。
「若田ヒルデさん、職員室まで来てください。繰り返します・・・・・」
何だろう。放送はプツリと切れ、まだちらほらとしかいない教室はいつもより静かだった。それにしても名指しで呼び出しなんて、しかもあの声は担任の日出陽菜だ。
それにしても奇妙な話だ。私が学校に来てるなんでどうしてわかったのだろうか。他の先生に聞いたとかか。しかも私個人に用があるみたいだしとりあえず行ってみるしかないか。
「失礼します」
「若田さん。ごめんなさいね急に呼び出しちゃって。来年入学する子たちらしいのだけど、学校を見て回りたいっていうものだから今日は補講日だけど、若田さん成績いいから、この子たちの案内で出席したことにしておくわね」
なるほど、補講日か。どおりで生徒が少ないわけだ。とそれはさておき、新入生とやらにじっくりと話を聞かなければならない。
「なんで来たのよ」
「ええと、これには様々なわけがあるのです、よ」
「そう、ならそのわけとやらを聞かせてもらおうかしら。コイオス、クリオス」
ズイとコイオスが前に出ようとしたがクリオスはコイオスの制服の袖を摘んで、
「今日は私から言いたいです」
「わかりました。こんな珍しいことはありません。姉様を見事説得して見せてくださいクリオス」
「任せるのです」
クリオスが前に進み出て一言言い放つ。
「暇なのです」
私は面食らった。しかしその言葉には確かに覇気を感じる。
なるほど、鬱屈した毎日という表現が不意に頭をよぎり何故か納得してしまった。
「はあ、あんたねもうちょっと気の利いた理由思いつかなかったの。まあいいわ、別に私の許可がいるわけでもなし、若にはちゃんと許可貰ってるのよね」
「はいなのです」
パアッと目を輝かせるクリオス。
「やりましたコイオス、今日はパーティーをしましょう」
「ええ、よくやりました。本当に重ねて本当によくできましたねクリオス」
二人は廊下ではしゃいでいる。幸いにも職員室周辺には授業中であり誰もいない。
そういえば、二人は普段誰もいないウチで何をしているのか。私は少し気になって呟くように問いかける。
「普段ですか」
「んー、何してるっけ」
「こうして改めて振り返ると何もしていないですね」
「暇だなぁって思ってたことは覚えてるけどそれ以外はわかんない」
やはりこの二人は謎だった。出会った時も感じたが彼女たちの私生活の見えなさは一体どこから来るのだろうか。いくら冷静でも、溢れるほど明るくても、二人から漂う胡散臭ささは、隠しきれるものではないだろう。
二人は試着用の制服を着て廊下をトコトコ歩いていく。私はその背中を訝しげに見つめていた。
私の先を行く二人を見つめて、デジャブを感じる。既視感ともいう。私は二人が入学に浮かれていた日のことを思い出していた。もう一学期が終わってしまう。
「早いものだ」
なんだか今日はみんな来るのが遅いわね。
「若田ヒルデさん、職員室まで来てください。繰り返します・・・・・」
何だろう。放送はプツリと切れ、まだちらほらとしかいない教室はいつもより静かだった。それにしても名指しで呼び出しなんて、しかもあの声は担任の日出陽菜だ。
それにしても奇妙な話だ。私が学校に来てるなんでどうしてわかったのだろうか。他の先生に聞いたとかか。しかも私個人に用があるみたいだしとりあえず行ってみるしかないか。
「失礼します」
「若田さん。ごめんなさいね急に呼び出しちゃって。来年入学する子たちらしいのだけど、学校を見て回りたいっていうものだから今日は補講日だけど、若田さん成績いいから、この子たちの案内で出席したことにしておくわね」
なるほど、補講日か。どおりで生徒が少ないわけだ。とそれはさておき、新入生とやらにじっくりと話を聞かなければならない。
「なんで来たのよ」
「ええと、これには様々なわけがあるのです、よ」
「そう、ならそのわけとやらを聞かせてもらおうかしら。コイオス、クリオス」
ズイとコイオスが前に出ようとしたがクリオスはコイオスの制服の袖を摘んで、
「今日は私から言いたいです」
「わかりました。こんな珍しいことはありません。姉様を見事説得して見せてくださいクリオス」
「任せるのです」
クリオスが前に進み出て一言言い放つ。
「暇なのです」
私は面食らった。しかしその言葉には確かに覇気を感じる。
なるほど、鬱屈した毎日という表現が不意に頭をよぎり何故か納得してしまった。
「はあ、あんたねもうちょっと気の利いた理由思いつかなかったの。まあいいわ、別に私の許可がいるわけでもなし、若にはちゃんと許可貰ってるのよね」
「はいなのです」
パアッと目を輝かせるクリオス。
「やりましたコイオス、今日はパーティーをしましょう」
「ええ、よくやりました。本当に重ねて本当によくできましたねクリオス」
二人は廊下ではしゃいでいる。幸いにも職員室周辺には授業中であり誰もいない。
そういえば、二人は普段誰もいないウチで何をしているのか。私は少し気になって呟くように問いかける。
「普段ですか」
「んー、何してるっけ」
「こうして改めて振り返ると何もしていないですね」
「暇だなぁって思ってたことは覚えてるけどそれ以外はわかんない」
やはりこの二人は謎だった。出会った時も感じたが彼女たちの私生活の見えなさは一体どこから来るのだろうか。いくら冷静でも、溢れるほど明るくても、二人から漂う胡散臭ささは、隠しきれるものではないだろう。
二人は試着用の制服を着て廊下をトコトコ歩いていく。私はその背中を訝しげに見つめていた。
私の先を行く二人を見つめて、デジャブを感じる。既視感ともいう。私は二人が入学に浮かれていた日のことを思い出していた。もう一学期が終わってしまう。
「早いものだ」
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