15 / 50
第15話
しおりを挟む解体を覚えて一生懸命やっていったとしても、その道のプロになるにはどれだけの時間がかかるか分からない。
魔物によって解体の仕方も違ってくるだろうし、色々考えたら死体を持って行った方がいいだろう。
……まあ、アイテムボックスの制限など色々と問題もあるのでおいそれと大量に持っていくわけにはいかないんだけど。
「今は律儀にゴブリンの死体も回収してるけど、もしかしてゴブリンくらいなら解体しても大して金にならないか?」
「これだけ綺麗な形で死体も残ってるし、それなりのお金にはなると思うわよ。角、牙、爪は武器などの素材になるし、目や睾丸は薬の材料にもなると聞いたことがあるわね」
「……え、こ、睾丸って何に使うんだ?」
気になってつい問いかけてしまった。
リアも、特に意識していなかったのか、俺に改めて問われると少し恥ずかしそうに頬を赤くする。
ていうか、睨まれた。理由を知っているのか、アンナもあわあわと顔を赤くしていく。
あれ、これってセクハラになるのだろうか?
「精力剤よ……。オークの方が効果は高いらしいけど、ゴブリンのものでもそれなりに効く……みたいよ。知らないけど」
「……な、なるほど」
……だから、ちょっと恥ずかしそうだったのか。
ナーフィは特に気にしていないが、他二人はかなり気にしている。
……こ、これからは質問するときに気をつけよう。
ゴブリンの睾丸が加工された商品をあまり想像したくはなかったが、別に地球でも珍しいことじゃないよな。
睾丸が食べられる動物もいるわけで、実際にクジラとかのは食べられていたこともあるらしいし。
睾丸、と言われるから意識するだけだ、別に普通に出されて、あとで種明かしされても分からないだろう。
まあ、あとで種明かししてくるような奴がいたら先に言えとどつくが。
「戦闘をしていて、どうだ? 問題なさそうか?」
リアとナーフィはなんだかんだ交流があるのだが、アンナだけは俺から動く必要がある。
なので、問いかけてみると彼女は少しびくっと背筋を伸ばしてから微笑んだ。
頬のあたりがちょっと引き攣っているのは気のせいではないだろう。
「アンナは別にシドー様のことが嫌いだからとかじゃなくて、単純に男性が苦手なのよ。だから、あんまり気にする必要はないわよ」
リアがそう俺をフォローするように言ってきてくれたが、それはそれでどうしようかと迷う。
あまり無理に関わらないほうがいいのだろうか? と思っていると、アンナはすみませんと頭を下げた。
「そ、その……私兄弟がいて……その兄たちに凄いいじめられてたもので、……すみません」
「いや、無理に話さなくてもいいから。気にしないでくれ。……戦いで問題なければ、それでいいんだ」
……三人とも、スラムで暮らしていたのだから何かしら理由はあるだろう。
リアは、スラムで暮らしていたとは思えないほどに知識や落ち着きがある。……生まれは、それなりにいいんじゃないかと感じていた。
アンナも先ほど話していたように今のような性格になった理由があるんだろう。
ナーフィも物静かだが、人懐こいので決して悪い子ではない。
……ただまあ、そこは本人たちにも思うところはあるだろうし、深くは突っ込まないでおこう。
「私は……大丈夫です。戦うのが大変だとは思っていましたけど、このハンドガンなら、バンバン倒せます。これなら、低ランクの迷宮とかも問題なく攻略できると思いますね」
「迷宮……? 冒険者たちが話しているのを聞いたことはあるが、この街の近くにもあるのか?」
道中の旅でそういった話は聞いていたが、それがどんな存在かまでは聞いていなかった。
やはり、俺も男なので迷宮などといったものを聞くと、昂る心があるわけで一度は行ってみたい。
「あったと……思います。……ありましたよね、リアちゃん?」
「ええあるわね。低ランクの迷宮だし、確かに今みたいにあてもなくゴブリンを探すよりは効率いいと思うわよ」
「……そうなのか。俺は迷宮に入ったことないんだが、稼げるのか?」
「稼ぎはまあ、運にも左右されるわね。でも、野生の魔物と違って迷宮が一定時間で魔物を生み出してくれるから、レベル上げの効率だけは確実にいいと思うわよ」
「それはいいな」
「ただ、迷宮から生み出された魔物たちは魔石と稀に素材をドロップするだけよ。だから、基本的に稼ぎは少なくなっちゃうかもしれないけど……まあ、ゴブリン狩りよりは効率いいんじゃないかな、って感じ?」
「……なるほど」
「迷宮によっては素材のドロップがいい場所もあるから、そこらへんは詳しく調べてみないとなんとも言えないわね。あとは、運の良さも関係するわよ」
……運には、あまり自信がないんだよな。
いやでも、この三人と巡り会えたことを考えれば、俺の運はいいのかもしれない。
逆に、ここで使い果たしてしまったという可能性もなくはないか。
「それなら、明日からは迷宮に行ってみるかね」
今日はどっちみちリアたちにハンドガンでの戦闘に慣れてもらうつもりだったからな。
……まあ、そんな心配は不要と思えるほどに、三人のセンスは良かったが。
もしも、これが異世界人の一般的な戦闘センスなのだとしたら、俺たち地球人が多少チートをもらったとしても魔王討伐なんて何十年先になるんだという話だ。
483
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる