異母姉妹たちに虐げられ、追放された私はもふもふと幸せに生きます ~今さら私の才能に気づいた家族が戻ってきてほしいと懇願するけど、遅いです~

木嶋隆太

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第9話



「そんな! 村のことよりもルクス先生の人生のほうが大切ですよ! 宮廷は王様の後宮などもあるんですよ!? 上手くすれば王族に見初められることも……! ルクス先生ほどの容姿ならば、それも可能ですよ!」

 別にそういうのは興味ない。
 孤児院の先生たちともに孤児院へと戻る。
 それから少し休憩して、子どもたちに剣の指導でもしようかな、と思っていた時だった。

「……ルクス。嫌な魔力を感じる」

 ティルガが深刻そうな顔で唸る。
 ……珍しい反応だ。ティルガの毛は逆立ち、空気は張りつめていく。

「……嫌な魔力?」
「ああ、そうだ。この感覚は――魔人、かもしれない」

 魔人。
 この三年間ほど、鍛錬を積みながら探していた存在。
 それはどこにいるの? そう問いかけようとした時だった。
 
 村長が孤児院へと慌てた様子でやってきた。
 その隣には、片足を引きずるように騎士がついてきていた。
 騎士の胸元には、宮廷所属の証がある。
 恐らく、私に会いに来る予定だった者だろう。

「た、大変じゃルクス殿ー!」
「……どうされたんですか?」

 私が村長に問いかけると、その隣にいた騎士が声を上げた。

「こ、ここに向かう途中で謎の人間に襲われました!」
「謎の人間?」
「は、はい! 額に魔石を持ち、凄まじい魔力を持った存在なんです!」
「……なんだと!」

 声を上げたのはティルガだ。
 突然ティルガが吠えたものだから、騎士は驚いた様子でそちらを見ていた。
 ティルガはそれに気づき、口を閉ざしながらもこちらをじっと見てくる。

「……額の魔石。それは魔人の証だ」

 ……魔人。
 まさか本当に出現するなんて。
 私は驚きながらも、この日のためにこれまで鍛錬を積んできたことを思いだす。
 一度深呼吸してから、騎士を見る。

「騎士の人たちは、大丈夫?」
「は、はい……! ただ、隊長以外精霊術師はいなく……す、助太刀に向かってくれませんか!?」
「うん、わかった。場所は?」
「南に500メートルほど進んだ場所です!」
「分かった、すぐ向かう」

 私がちらとティルガを見ると、ティルガはすっと頷いた。
 私を乗せられるほどの大きさになったところで、私はその背中へと飛び乗った。
 同時、体を風が包み、ティルガが駆け出す。

 あっという間に孤児院が小さくなり、南門を抜け外へと出る。 
 
「……魔人、本当にいたんだ」
「信じていなかったのかルクス」

 じとっとした声が聞こえる。

「だって、三年間一度も見たことなかった」
「それはそうだが……。魔人もまだ完全に力を手に入れたわけではないようだ。かなり小さな力だ」

 ティルガは魔人の力が感じ取れるようだ。
 そちらの方角へと走っていく。
 そして、見えてきた。

 そこでは一人の騎士と魔人と思われる人間が戦っていた。

 見た目は人間のようであるが、その顔には知性の欠片もない狂気じみた笑みが張りついていた。

「ヒャハハ!」

 狂ったような笑い声が響き、鋭く尖った爪を女性へと振りぬいた。
 女性はその一撃を剣で受け止め、眉間を寄せていた。
 戦っているのはその人だけだ。騎士と思われる人々は、魔人と女性をただ見ているだけだ。

 それは、力の差ゆえだろう。
 女性と魔人は、遠目から見るだけでも凄まじい戦いぶりだ。
 あの戦いに参加するには、並大抵の力では無理だろう。

 女性を褒めるべきか。あるいは、魔人の並外れた身体能力に驚愕するべきか。

「ティルガ。あの魔人はまだ弱い、って言っていた」
「魔物でいえば、Fランク程度の魔人だ」
「もっと、強い魔人がたくさんいるってこと?」
「そうだな。……恐怖、する必要はない。我も共に――」
「恐怖? 違う。楽しみなだけ」

 私がそうティルガに返すと、驚いたような声が上がる。

「……そういえば、戦闘狂の側面があったなルクスよ」

 別に、ちょっと人より戦うのが好きなだけだ。
 ティルガの言葉に口元の笑みがこらえきれなくなった私は、微精霊に指示を出す。

「微精霊たち。身体強化全開でお願い」
『分かったよー!』
「魔法の準備もね」
『もっちろん!』
「ティルガ、無理に戦いに参加しなくて大丈夫。騎士の人たちに被害が出ないようにして」
「……ああ。ルクス、気を付けるんだぞ」
「もちろん」

 ティルガが一気に距離を詰めていくと、女性、騎士、魔人の注目がこちらへと集まる。
 ティルガを迎え撃とうとしてか、魔人がこちらを向いたところで私はティルガかから跳躍する。
 飛び上がった私は、その勢いのままに刀を振り下ろした。
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