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第11話
魔人との初めての戦闘。
知識はあったけど、やはり実戦は学ぶことが多い。
この魔人で、まだヨワヨワなんだもんね。
これから先が楽しみで仕方ない。
刀の血を払った私は、近くで剣をしまっていたファイランへと近づく。
彼女はどこか疲れた様子で額の汗を拭っていた。
ファイランと目が合うと、彼女は苦笑を浮かべた。
「あなたが強いというのは聞いていたけど、まさかこれほどまでとは思っていなかったわ」
「別に、たまたまうまく行っただけで。まだまだ」
「謙遜しなくていいわ。……あの魔人に私たち宮廷精霊術師も苦戦を強いられていたの。あれを一撃で仕留めるなんて、凄いわ」
「……魔人?」
ファイランがその名前を口にしたことに、にわかに驚く。
魔人というのは伝説上の生物だと言われていた。
過去はともかく、少なくともこの現代にいるとは思われていないはずだ。
それに、ファイランの言い方的にこれまでにも何度か戦っているかのよう。
「ええ、魔人よ。……何度か目撃情報があって、私の仲間たちも戦っているのよ」
「……そうなんだ」
私はちらとティルガを見る。
何度も目撃されているわりに、一度も見たことないんだけど?
私がそんな訴えをするように見てみると、ティルガは顔をそらした。
「我、そこまで探知能力ないんだ……」
残念そうな口ぶりでそういったティルガ。
……まあ、仕方ない。
私は小さく息を吐いてから、ファイランを見た。
「とりあえず、村に行こう。呼びに来てくれた騎士の人も心配していた」
「……ええ、そうね。向かいましょうか」
ファイランはそう言って近くにいた馬に跨った。
私もティルガの背中へと乗る。
お互い、並ぶようにして村へと向かうと、ファイランがこちらを見てきた。
「ねえ、ルクス。あなたのことをスカウトに来たのは知っているわよね?」
「うん」
「どう? 宮廷精霊術師は? あなたにはぜひとも一緒に戦ってほしいわ!」
ファイランの好意的な笑みに、私は少しだけ迷いがあった。
その迷いは、自分が双子の片割れだったことだ。
さすがに、そこまでの情報をファイランは持っていないと思う。
宮廷精霊術師になれば、ティルガとの約束や微精霊たちの命を守りやすくなるとは思うけど……双子の私でも、大丈夫なんだろうか?
「少し、聞きたいことがあるけど……いい?」
「え? 何かしら? 給料? それはもうかなりいいわよ?」
「ううん、お金はどうでもいいんだけど……私、双子の片割れなの」
「双子?」
「うん。それでも大丈夫なのかなって……思って」
私の質問に、ファイランは本気で不思議そうに首を傾げていた。
「双子? それがどうしたのよ?」
「え? そ、その……双子を忌み嫌う人もいるって聞いていたから」
私がそういうと、ファイランが納得した様子で手を打った。
「そういえば、そんなこと聞いたことあるわね。確か、古い体質の家に多かっわね」
「そうなの?」
「ええ、そうよ。そうね。国内だと半数くらいかしら? 古い貴族と新しい貴族でよく喧嘩しているし、宮廷精霊術師の中にもそういう人はいるけど……けど、問題はないわね。あくまで実力主義だから」
「ほんとう?」
「ええ、もちろんよ。それに、あなたが双子というのなら、なおさら宮廷で仕事をするといいかもしれないわよ?」
なおさら?
ファイランが悪戯っぽく微笑み、言葉を続ける。
「宮廷で成果をあげれば、それだけ立場が得られるわ。立場が得られれば、救える命も増えるじゃない?」
「……うん」
「双子の片割れがめっちゃ強い! ってなれば双子に対しての考えを改める人も出てくるんじゃないかしら?」
ファイランの言いたいことはよく分かる。
前向きな考え方だ。これまで私はそんな風に考えたことはなかった。
私が活躍すれば、双子だからと捨てられる子が減るかもしれない、か。
頑張りたい理由がもう一つできてしまった。
ティルガのため、微精霊のため、世の不幸にさらされてしまっている双子のため。
何より、強い相手と戦えるということ。
これはもう宮廷精霊術師になるしかない。
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